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Dragon Storm 2019

今日のテーマはズバリ、「#私の勝負曲」!!!

noteのトップページでこのお題を見て、書いてみたいと思い、散々悩んで悩みまくった結果「Dragon Storm 2019」になりました。

簡単にこの曲の説明をすると、プロレス団体ドラゴンゲートの現行テーマソングです。元々は「Dragon Storm 2007」という曲で、アニソンの帝王・影山ヒロノブさん率いるJAM PROJECTが歌っていました。

しかし、2019年にZIGGYのボーカリストの森重樹一さんが歌うバージョンに変更され、歌詞も一新されました。2007の方は、ヒーローものっぽいと言うか、熱い闘志がメラメラ燃えてて、ひたすらに前向きな歌詞でしたが、2019は違いました。

例えば2007のサビの部分ですが、

夢の扉を開く 選ばれし戦士達
限り無き可能性を その胸に抱いたまま
自らを信じて 集いし仲間を信じて
果て無き"夢追い人"は 明日への道を行くだけ

という、実に前向きで希望に溢れた歌詞なんですが、2019はこうなっています。

折れた翼を開き 羽ばたける戦士達
どこまでも闇の中を 力強く舞い続け
掟ならば蹴破れ 限りなく高く飛べ
誰もが夢追い人さ 最後の時が来るまでは

そう、「夢の中」から「闇の中」へ変わったんです。熱い歌詞はそのままなんですが、2007が「無邪気さ故に恐れを知らない子供」だとしたら、2019は「傷まみれで折れた翼を引きずりながら、それでも力強く羽ばたこうとする大人」と言ってもいいでしょう。

そしてサビのラストの「最後の時が来るまでは」の部分ですが、初めてこの曲を聴いた時に本当にビックリしました。プロレスラーにとって最後の時……それは多くは「引退」です。中には三沢光晴選手のように、本当にリングで最後を迎えた選手もいますが、基本的にプロレス団体はこういうワードを忌み嫌います。それは観客もレスラーも「見たくない現実」だからです。

プロレスは夢を売る商売です。客の前で凄まじい技を繰り広げ、受けて、それでもなお立ち上がるその逞しくも美しい姿に、観客は日頃の憂さを忘れて熱狂します。そんなところに「引退」や「死」を匂わせるワードを持って来ては、せっかくの熱狂も冷めてしまいます。だからこそかつて2007がそうだったように『立ち止まる事無く 前だけを向いて』行くしかないのです。

ですが、2019は違いました。引退や死、絶望といった御法度とされていたマイナスワードをあえて歌い上げる事で、プロレスが本来持っているリアリティを描き出す事に成功しました。そう、レスラーは誰もが引退という時限爆弾を抱えて生きているのです。そこから目を逸らさず、『最後の時が来るまで』闘い続ける、苦しく辛いレスラーの心境を綴った歌詞に、私は完全にハートを鷲掴みにされました。

2007との比較の為、いきなりサビから歌詞を紹介しましたが、実は2019は歌い出しからこの「最後の時」に言及しています。

回避できない運命(さだめ)は導くだろう
無情の地平線の彼方までも

お分かりですね。プロレスラーにとって回避出来ない運命……それは地平線の彼方まで行ったとしても、逃れられないものなのです。弥勒菩薩の手の上から、決して逃れられぬように。

その「回避出来ない運命」を、どのようにして受け入れて闘うのか?

私はこれが「Dragon Storm 2019」のテーマだと思っています。

そして「回避出来ない運命」は、レスラーだけでなく、私たちにも待ち受けています。明日事故で死ぬかも知れません。もしくは今日行った病院で不治の病を宣告されるかも知れません。「死」はすべからく、誰にも平等に訪れるのです。

メメント・モリ——死を忘れるな、という意味のラテン語ですが、この曲を聴いていると強烈にこの言葉が思い浮かびます。死はいつだって我々と背中合わせなのです。この曲を聴くたびにそれを思い出し、背筋がピンと伸びます。そして考えるのです。

「私は彼らのように、強く在れるのか?」と。

プロレスラーは強いです。「回避出来ない運命」を持ちながら、それでも闘いで自らを晒す事でしか生きられない戦士です。プロレスを見て泣いた事も何度もあります。その生き様、闘い方は、どんなに汗臭くても泥臭くても、「美しい」の一言に尽きるのです。私はそんなレスラーを、尊敬して止みません。

私にとってこの曲は、弱い自身を奮い立たせる為にある、大切な「勝負曲」です。あの美しいひとたちのようになりたいと願い、(彼らと比べれば実にささやかですが)日々を闘う為、生きる為に必要な曲です。死を意識すると、いかに生きるかに思考が向きます。それなら、人生の3カウントを聞くまでは、リングの上で大暴れしてやろうじゃないか。あの美しいひとたちのように——。



振りかざせ 刀のようなその手を
握りしめろ 血の滴った拳
追いかけろ 追われる者にはならずに
駆け抜けろ 風のようにしたたかに

涙は見せずに 光る汗を流せ
蝶のように踊り 狙いをさだめろ

重い扉を開き 挑んでゆく戦士達
どこまでも闇の中を 力強く突き進む
愚かさなど 投げ棄て 輝きを手にすれば
誰もが夢追い人さ 最後の時が来るまでは


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