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AshのATRお勉強ノート

ラインチェックが近づいて来ているので、今回は、自分のフライトの振り返りをそのまま載せることにしました。自分の勉強をコンテンツにしてしまおうという姑息な話です、はい。文字ばっかりの無編集、起承転結はありませんので、あしからず。

プランニング

10分前に着くもすでにキャプテン到着し、プラン完了していた。PCR検査受けるために早く来ていたという。

今回は国際線でクライストチャーチまで来て、そこからネイピアに乗り継ぐトンガのラグビー選手を運ぶチャーター便。いつもより遅い時間なのはそのため。18時半に出て、20時に着く。帰りの便はフェリーフライトで、フライトアテンダントがネイピアで降りるかもしれない。SOPで「Flight without Cabin Crew」を確認。

天気を見ると、高気圧と夜の組み合わせで低層雲とフォグあるいはミストの予報が出ている。

ネイピアの予報(TAF)はBKN006、これに対しネイピアのRNAVアプローチのミニマは325ft(RWY34)/414ft(RWY16)視程も問題ないのでGO、Weather AlternateはNZPMで。

復路便のクライストチャーチの方が厳しい。予報はBKN004。ILS(CAT 1)のミニマは基本的に200ftAALまで大丈夫。視程はOK。CAT1の要件をSOPで確認。

ミティゲーション

上記の状況に対するミティゲーション(対策)は、

夜になって気温が下がるにつれて雲は低くなるだろうから、早く出て早く帰ってくること。

そのために、復路便の燃料も一緒に積む。(タンカリング)

給油の時間を節約し、お客さんもいないから15分程度でリターンすることを考える。このように、天気に対して燃料をどれくらい積むか、がパイロットが地上でできる最も大きな対策。そして、今日はとにかく早く出るが吉。

燃料計算とタンカリング

セクターフューエル(クライストチャーチからネイピアまで行くのに燃やすガス)は、だいたい1000kg。1時間ちょいのフライト。燃費は860kg/hくらい。高く飛ぶとその分燃料は節約できるけど、少し遅くなる。風にもよるけど、追い風なら高く上がって、向かい風なら低く飛ぶのが一般的。

1トンの燃料、6%の予備、これに代替空港のパーミー(NZPM)への燃料を加える。パーミーはウェリントンのちょい上にある。20分前後でだいたい400kgくらい。こちらには3%の上乗せ。上と燃費が違うのは、近くて短いセクターを低く飛ぶから。

これにデパーチャやらアプローチやらミストアプローチやらの燃料がちょっと足されて、最後にリーガルリザーブ(法定予備燃料)を300kg積んで、このフライトをするために必要な燃料であるミニマムディスパッチを出す。

ミニマムディスパッチは1936kgだった。通常は、これにさらに20分から30分くらいの予備を積む。そうすることでダイバートする前にもう一回アプローチをする時間、少なくともその判断をする時間を確保する。だから、このフライトは通常2トンちょいの燃料を積んで行くルートだ。

しかし、今回の燃料は3トン。復路の燃料を積むタンカリングをするため。通常、これは燃料代の高い地方空港に行く時に行う方法だが「早く帰るが吉」なのでそれ理由でのタンカリング。

復路のミニマムディスパッチも同じように計算して、同じく2トンちょいの燃料が必要だとする。何事もなければセクターフューエルは1トンだから、3トン積んでいけばネイピアについたときに2トンの燃料がタンクの中にあることになる。というか、そうなるように逆算して3トンを出しただけだ。

ボーディング

なかなか重量計算の結果が来ないと思ったら、3人が検疫で引っかかっているらしい。トンガの選手たちは、今回が初めての飛行機、それも国際線のトランジットだというから無理もない。何を持って来ちゃったのか。

遅れるとやばい日なので、19時とカットオフを決めてダメなら出発とした。幸い、3人は間に合って15分遅れで出発。こっちは早めに乗り込んでいたので、かれこれ45分くらいコクピットに閉じ込められていた。

オンルート

デパーチャーはつつがなく進み、オンルート。前進速度を稼ぐためにクルーズクライムでシャローに昇っていたら、前を行くダッシュとのセパレーションで、予定のFL(フライトレベル)190ではなくFL170で止まってくれない?とATCから言われる。低く行くと、早くなるけど燃料を使うのは前述の通り。FMSのPERF(パフォーマンス)ページを更新して、ネイピアに着いた時の燃料が2トンを切らないことを確認して了承。

その後、カイコウラ付近でアイシングの雲に突入。ATRはアイシングを嫌うので、色々プロテクションがついている。

TAT 7度(外気温が5度くらいのこと)以下で雨や雲に突っ込んだら、すぐにアンチアイスシステムをつける。アンチアイスとは、窓やピトー管などについたヒーターのこと。

実際にアイスが着き出したら、ディアイスシステムをつける。ディアイスとは、翼やプロペラの先端についたヒーターや砕氷機器のこと。着氷は目視か、センサーによる。左の翼についたごく小さな棒状のセンサーが振動していて、着氷による自分の振動数の変化を検知してコクピットに警告を出す仕組み。今回はすぐ着いたので、アンチアイスとほぼ同時にディアイス。

さて、ここで大事なのはスピードのモニター。着氷による重量増と、翼の空理機特性の悪化によって、揚力がどんどん必要になってくる。パワーは一定なので、飛行機のオートパイロットは「がんばって」機種を上げることで揚力を稼ごうとするが、そうするとスピードが落ちる。スピードをしっかりモニターし、一定方向に下がる傾向を見せ始めたら要注意。

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