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パイロットは天気をこうやって見ている

久々のPilot's noteシリーズ、今回はパイロットと天気についてです。

天気の見方については、どんなパイロットにも一家言あるものですが、今回はニュージーランドのエアラインで飛んでいる私のスタイルを紹介します。今訓練をしている学生の方から、エアラインで飛んでいる人まで、何かしら参考になることがあれば嬉しく思います。

大きく把握、数字を確認、逃げ道を確保、決断を下す

パイロットが天気を知る目的は何でしょうか。それはもちろん、飛行機を安全に飛ばすためです。どこに悪い天気があるかわかれば、それを避ける計画を立てることができます。

極端に言えば、地上にいるときに、天気が悪くなることがあらかじめ分かれば、その日は飛ばなければいいのです。このように、まず飛ぶか飛ばないか、このジャッジを外さなければ、悪い天気に突っ込んで事故を起こすことはありません。

しかし、とくにエアラインを含めたコマーシャルパイロットにとっては、天気が悪いから飛びません、では商売ができません。ですから、安全を損なわない範囲で悪天の中を飛んだり、悪天を避けるオプションを考える材料として、天気を捉える必要があります。

まずは図で大きく把握する

全体から部分へ。これがパイロットの天気の見方の鉄則です。なぜなら、全体的に天気がどうなっていくのかを知っていると、大きく間違えることを防げるからです。例えば、ある空港で天気が回復したとして、それが一時的なものかどうかは全体の傾向を見ていればわかります。

全体とは、例えば天気図や雨のレーダー画像、気象衛星画像などです。

上記の記事は、先日ニュージーランドにやたらと強い寒気が入り込んで来たときに書いたものです。飛ぶために分析したものではありませんが、やっていることは同じです。

まず天気図と気象画像を組み合わせて全国的な気圧配置や寒気の位置、それに付随する天気(雨や風)の現況をざっくり把握しています。

低気圧があって、南極から寒気が来ている。

次に、これからどうなるかを考えます。

低気圧がニュージーランドに近づいてくる。ますます寒くなり、山では雪が降る。

このように「現在」と「近い未来」について、全国的な状況を大まかに把握します。

今日は寒くて天気が悪い。明日以降もっと寒くなる。おーやだやだ。

これがまず第一歩です。

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ちなみに、最近では風の流れや気圧配置、その他情報を一覧できる便利なサイトがあります。

WIndy.comは、パイロットでなくても、台風の位置や暴風域などが視覚的にわかるのでかなり重宝するでしょう。スマホのアプリもあります。

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本稿執筆時の台風14号の現在位置。皆、用心してね!

悪天の存在をSIGMETで確認する

さて、話をパイロットに戻しましょう。天気図を見て、その日の天気が悪いことがわかったら、つぎはその悪天を具体的に把握します。

少し専門的なものになりますが、以下はSIGMETと呼ばれる、悪天の状況を説明する図です。

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