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推しへの思いとスケブ


私には推しの子がいる。最近流行りの「推し、燃ゆ」のような斬新でドラマチックな思い出ではないが、私には推しがいる。

そして私の今の悩みは、推しに認知されたいかされたくないか、である。その子は私よりはるかにフォロワーが多く絵もうまくて可愛い子だった。見た目はどちらかというと地味で不愛想な雰囲気だったけれど、絵に対しては誰よりもストイックなように見えた。


出会った頃、その子はまだ中学生だった。彼女はまだ若いのに既にたくさんのファンがいて、絵もうまくて嫉妬するに値する存在だったけれど、私はその頃はただの普通の会社員で、同じアニメを好きなだけの大人だった。


今はその肩書さえない、ただの人である。ただその子は、絵がうまくても進路に悩んでいるようだった。親からは絵を描いてもお金は稼げないという風に言われているのが、彼女の呟きからなんとなく想像がついた。


スケッチブックをお願いして書いてもらったことが二回あった。一回目は当時同じように好きだったアニメのキャラ、二回目は彼女のオリジナルキャラクター。彼女には一次創作を書いてほしいと思っていたから、とても嬉しかった。


一次創作とはオリジナル作品のことである。ちなみに、アニメや漫画に登場する、好きなキャラクターの漫画やイラストを描くのは二次創作に当たる。私は二次創作界隈でサークル活動やオタ活をしつつも、ずっと自分の思い描いた作品を描くことを夢見ていた。


ただ絵を描くには苦痛が伴う。私は結局は凡人で、Twitterの神絵師たちと比べたら下手くそだったから絵を描くのをほとんどやめてしまった。

アニメがきっかけで絵を描くようになり、沢山の神絵師に出会い、そのうち絵を描く気力を失った。ずっと一次創作者に憧れがあったこともあり、すっかり二次創作をやめてしまった。いつもみんな絵がうまいのに、一次創作を書かないのはなぜだろうと思ってしまう時点で、私はファンアートを描くに値しない人間だったのかもしれない。


そうしてそのアカウントから離れて1年近くが経過したころ、彼女が「Skeb」を始めていた。「Skeb」とはスケッチブックのことであり、スケブのようにクリエイターにお金を払い、イラストを描いてもらうことである。


ただし「Skeb」の一味違うところは、クリエイター側に配慮したサービスであるということだ。クリエイターはクライアントの要望に合わせてイラストを描き、それを納品するだけで報酬が貰える。

基本的に、リテイクという概念はない。投げ銭ができるお題箱と、公式も言っているが、要するにデジタル版スケッチブックのようなものなのである。


普段スケッチブックにイラストを描いてもらう文化を知っている人ならピンとくると思うが、スケブに有償でイラストを描いてもらうのと同じで、デジタルイラストを有償で描いてもらうようなものだ。


憧れのクリエイターに、自分の要望に合ったイラストを描いてもらえる、夢のようなサービス。しかもクリエイターはクライアントに絵を描いたのに報酬がもらえないという悲劇が起こらず、安心して描くことができる。


お金を稼ぎたいクリエイターと、クリエイターに貢ぎたいクライアントを結びつける、いわば推しに貢ぎたいオタクのためのサービス。しかも描いたイラストの権利はあくまでクリエイターに依存するため、クライアントも勝手に商業利用することはできない仕組みになっている。


規約には下記のように書かれている。

・権利譲渡なし。すべての著作権がクリエイターのもの。
クリエイターはクライアントの許可なくSNSや同人誌、パトロンサービスに自由に掲載・発表できます。作業配信や途中経過の公開を歓迎しています。
クライアントはプロフィール画像への使用や個人鑑賞に限って利用できます。


ちなみに、すべてのリクエストを受け入れる必要がなく、気に入ったものだけ承認できるというのもミソである。


彼女は将来有望かつ絵もうまいけれど、3000円という値段で「Skeb」をやっていた。さっそくリクエストをもらい、とても可愛くて綺麗なキャラクターの絵を仕上げていた。みないうちにどんどん上達していて眩しいような、なぜか若干誇らしい気分になった。


そこで私の悩みは、どんなリクエストをするかということがまず一つ。描いてもらいたい要素が多すぎて一つにまとめられないという点だ。

そしてもう一つ。大事なことがある。


彼女にとっての私が、「3千円払った人」になってしまうことだ。3千円払った私に対して、もし次に会ったらどんな感情を向けるだろうか。もしかすると、特に見返りを求めていないのに直筆イラストなんて持ってきてくれてしまうかもしれない。ただ、もう会うことはないかもしれないけれど、もしまた同じイベントに行くことがあれば会いたいと思ってしまうのがオタクの性である。


そして普通にイラストが欲しいのもオタクの性である。私が彼女と出会って半年が過ぎたころ、絵に関して落ち込んでいたようだったので匿名で励ましのメッセージを送ったところ、

「額に入れて飾りたい」

とつぶやいてくれたことを、今も覚えている。


励ませてうれしいと思うと同時に、自分が書いたと言えばよかっただろうかという、なんとも言えない気分になった。ただ匿名だからこそ響いたのではないかとは思う。


認知されたいという気持ちと、そうではない気持ちのせめぎ合いだった。


今はどちらかというと、あの時のことを思い出すと、やはり認知されたいような気分になる。『ちょっと高いけれど』という彼女に、そのクオリティーなら全然高くないよと、私の口から教えたい。

それでも迷っているのは、どんなキャラクターを描いてほしいかという、その一点が大きい。彼女なら色々なものを器用に描けるだろう。

たかが3千円、されど無職には大きい3千円。


才能のあるクリエイターに貢げる「Skeb」というサービス、お金がいくらあっても足りないのである。




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🌼この記事を読んだあなたへ…

〇「【企画】無名人インタビューで繋がるご縁と企画」
〇「仕事がなくなってから気づいたこと(エッセイ)


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