魔法をかける力

何年も前に、これは完全に、素敵な魔法をかけられたと感じた時がある。

息子がまだ4-5才。朝ごはんのシリアルのとりあいで、まだ2-3才の娘とけんかをし、私が叱っても全く言う事をきかない。最後は私が怒鳴り声をあげ、無理やり、ほんのちょっとしかないシリアルの分け合いをさせた。息子の性格やら、しつけを憂い、私は朝からすっかり、イライラと最悪の気分だった。
小学校としてオープンしてまだ2年の、プレハブだった教室に、始業時間をかなり遅れて、息子を連れて入る。朝ごはんのテーブルから、教室に入るまで、おそらく私はすごい形相で怒り続け、息子に言い聞かせようと、大きな声を出し続けていたのではないかと思う。
私たち3人の表情の硬さから気づいたのだろう。教頭を兼ねている、ベテランの担任の先生は、息子を席に座らせると、そっと私の話を聞いてくれた。

「みなさん!」
突然、先生はクラス全体にアテンションをとって、話し始めた。
「今朝、ミーム君は、妹さんのために、自分の大好きなシリアルをゆずってあげたんですよ。親切な彼に、拍手!」
パチパチパチ。

その一瞬で、教室には、幸せいっぱいな息子と、あふれるほどのあたたかい拍手と、なんだかわからないけれど雰囲気に喜んでいる娘と、完全に感銘をうける私が生まれた。

本当に、魔法のようだった。

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