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『テーマ』を決めろと言うけれど、ホントに大事なの?(ノベルゲーム制作講座05)

・テーマは、作品の方向性、雰囲気、味わいを決めるもの
・自身の想いをテーマとして掲げ、軸がブレないようにする
・テーマは作中で語られないが、疎かにするとチグハグな作品になる

■企画を立てる上で最初に決めること

企画を立てる際のアプローチは人によって様々ですが、
私の場合は、最初に作品の『テーマ』を決めます。


ノベルゲームにおける『テーマ』とは、
『ゲームを通してユーザーに訴えたいこと』です。


ノベルゲームは小説と同じく、
テキストを通じてダイレクトに『想い』を伝えられるので、
テーマ決めはとても重要だと考えています。


■そもそも『テーマ』とは?

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辞書を開いてみると
「テーマとは主題。主要課題である」と書かれています。
正直よくわかりませんね。

ここからは空下の個人的な解釈になりますが、

○テーマとは……

・物語の方向性、素材発注の指針となるもの
・作品の雰囲気をなんとな~く伝えるもの
・筆者の訴えたいこと。魂の叫び

だと思っています。各項目を例を挙げながら見ていきましょう。


■『テーマ』によって作品の『方向性』が決まる

『テーマ』がハッキリしていないと、その作品は迷子になります。

迷子、と言われてもピンとこないので『文化祭』を例えに出します。

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高校の文化祭では、必ずと言っていいほど『テーマ』が掲げられます。
例えば、『飛翔』『エコ』『オリンピック』『地域交流』などですね。

テーマがハッキリしていないと
シンボルマークやコンセプトカラー、校門の飾り付けの方向性が見えず
デザインを任された人は苦労してしまいます。


『飛翔』なら空、青色。エコなら、空き缶で作った校門。
『オリンピック』なら、ゲームで景品が増えるなど競技要素を入れてみる。
『地域交流』なら近隣の住民を無料で招待する

など、方向性が見えてきます。

もしも文化祭のテーマが『ゾンビ』だったら、どうでしょうか?


「ダークな雰囲気でいけってこと? テーマカラーは黒と紫かな」
「校門の飾り付け、墓地っぽくすると面白いかも!
「文化祭とハロウィンの合わせ技!? ゾンゾンしてきたばい!」

という感じで、
『テーマ』を決めると「全体を覆うなんとな~くな雰囲気」が伝わります。

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『テーマ』=『全体の雰囲気』『方向性』が
ハッキリしないまま作業を進めると、


テーマカラーは黄土色。シンボルマークはコアラ。
校門に門松を置き、出店はすべてケバブの屋台!

なんていう、デタラメな文化祭が開催されてしまうわけです。


ゲーム作りも文化祭と同じで、
中核となるイメージや『目指すべき方向性』がハッキリしていないと
作品で表現したい想いや物語の展開が
右往左往、二転三転してよくわからない作品になり果てます。


■『テーマ』=あなたが世に訴えたいこと

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テーマ決めの重要性はわかったから、内容の具体的な決め方を教えて?
当然そういう流れになりますが、実はこれといった正解はありません。

『テーマ』は、作者の内側から自然と湧いてくるものです。

常日頃から抱える想い(喜びや痛み)をカタチにして人々に訴えたいから、
クリエイターは物作りを行い、世間に訴えるのです。
その胸の痛みを文章化すれば、それで『テーマ』決めは終わりです。

え? それじゃあよくわからない? ですよねー。

というわけで、ここからは私が企画決めから参加した美少女ゲーム
『幼なじみは大統領』(※)を
具体例としてあげて、テーマ決めの流れをみていきましょう。


『幼なじみは大統領』とは?

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©ALcot

朝目が覚めたら、
隣に住んでいた幼なじみの美少女が、アメ○カの大統領になっていた!?
という破天荒な設定の美少女ゲーム。

宇宙人の陰謀で、隣家がホワイトハ○スになっており、
主人公は副大統領として幼なじみをサポート。
宇宙船を擬人化したロリっ娘や、超能力を使うエージェントなど
様々なヒロインが登場。さらには、○シアの大統領と言い張る
『イリーナ・ウラジーミロヴナ・プチナ』が現れて求婚してきた!?
という、ライトなノリのドタバタSF作品です。

明るく熱く爽快感のあるシナリオ&可愛いらしいヒロインとの
やり取りで好評を博し、ユーザーから高い支持を受けました(自画自賛)。


■『テーマ』決めの流れ:幼なじみは大統領の場合


『幼なじみは大統領』のテーマは、
『できるかできないかわからないなら、やってみよう!』でした。


これは、某アメリカ大統領の○バマさんのスローガンが
元ネタになっています。(Yes We Can. Yes We Did.)

「大統領を美少女にする」というコンセプトが最初にあり、
社内の方針や私の想いとも合致していたので、テーマに掲げました。


できると思ったならやった方がいい。
その結果、本当にできるかもしれない。
うじうじ悩んでいても何も始まらない。まずは一歩踏み出そう。

何かを成し遂げる人間とは、一歩踏み出せる勇気を持つ者。
その人に力(権限や立場、腕力など)があってもなくても、変わらない。
たとえ力がなくても、やろうと思った人間に結果はついてくるのだ。

……というテーマを、

大統領としての権限を持つヒロインが有言実行していく。
権限を奪われたが頑張って奪い返して、夢を果たす……

という具合に、
作品の雰囲気、設定やシナリオの流れに絡めていきました。

ALcotで今までリリースしてきた作品とは毛色が異なり、
社内的にも大きな方向転換を試みた作品でした。
そういった意味でも『やってみよう』の精神が根底に流れています。


■自身の体験、想いを『テーマ』にするのは常套手段

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元ネタがある場合や、日頃から思い描いていることがあれば
『テーマ』を決めるのは比較的簡単でしょう。

「最近の政治はたるんでおる! 美少女を大統領にして活を入れてやる!」
という想いを抱いていた場合、作品は政治批判に向かったはずです。

『幼なじみは大統領』の場合、
「今回はギャグ。重く苦しいネタを入れない」という大前提もあったので、
「やってみよう」「次、いってみよう」「ドリフ?」みたいな軽いノリで、
ドタバタSFアクションものを描くことに決めました。
これが前記した『作品がもつ味わい』を決めるということです。


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『テーマ』は、作品毎に変えなくてもかまいません。

「戦争の悲惨さを映像を通して訴える」という一貫したテーマを掲げ、
ジャンルや媒体、運営会社を変えて映画を撮り続ける監督さんもいます。

また、所属するサークルや会社、クライアント(様)からの依頼で
テーマを決め(られ)ることもあります。

あなたが純愛モノで愛を訴えたいのに、会社は陵辱モノを求めているなど、
企画を立てるあなたの信条と合わないと、お互いに不幸な結果になります。
テーマのすり合わせ、方向性の確認は怠らないようにしましょう。


■まとめ

『テーマ』は、作品の方向性、雰囲気、味わいを決めるもの。
次回から解説する『企画の予算決め』『スケジュール決め』だけでなく、
『キャラ設定』『世界設定』『台詞回し』などにも深く関わってきます。

「テーマとは主題。主要課題である」

これを肝に銘じて、作品の『軸』がブレないようにしましょう。

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内勤ライターとして、美少女ゲーム業界で15年以上働いてきた経験と、そこで得たノウハウを文章にまとめています。ゲーム業界特有の謎規則や技術解説、仕事に取り組む際の心構えなどもご紹介。応援してくださると定期的に記事が更新されます(人間だもの)