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「才能」について。

これはわたしが朝ごはんの目玉焼きとベーコンを食べながら思った話。

「才能」について話そうと思う。
わたしの言う才能とは、生まれ持ったもの、あるいは、無意識にできてしまうもの、そしてスポーツ等のものではなく芸術面について話したいと思う。少なくとも、わたしが触れてきたことでしか話せないけれど。


"才能"の種類

才能には種類があると思う。
これを仮に、「基礎能力」と「表現力」のふたつと分けて話したい。

「基礎能力」とは、小説ならば正しい日本語や広い語彙、絵であるならばデッサン力や模写のうまさ、歌や楽器であれば正しい音程に正しいリズム。「表現力」とは、小説ならば文章のリズムや飛躍のさせ方、物語そのものの組み方魅せ方面白さ、絵であるならば人を惹きつける魅力、歌や楽器ならば強弱のつけ方など。

こうしてみたときに、わたしは、「基礎能力」よりも「表現力」のほうが、後付けでのレベルアップの難易度が高いと感じる。

沢山の本を読まなくとも、ひらがなばかりだとしても美しい日本語を使い文章を書けてしまう人もいれば、デッサンなど掃いて捨てたような絵でも魅力を感じさせ人を惹きつけるものもあるし、歌など音程が外れていようとも聞いてしまう曲など有名どころにごろごろ転がっている。
勿論それらに裏付けられるのは基礎能力だし、表現力ばかりが先走っていても作品は美しくならない。
生まれ持った才能があったとしても、それを磨く努力を怠れば宝の持ち腐れになってしまう。


”才能”の伸ばしやすさ

しかし、どちらのほうが磨きやすいだろうか。
基礎能力を磨くことが簡単だとは言わないが、表現力は基礎能力にくらべより複雑に、より人から人へ伝道しづらく、そして個人に依るものになっていってしまうのではないだろうか。

わたしは、多少だけれど専門のコースで絵を学んだことがある。そのとき、デッサンが苦手だった私の絵を見て、わたしよりもずっと長くデッサンを行い技術も高いクラスメイトの男子がひとこと「お前の絵は印象がいいな」と言ったことを、わたしはずっと覚えている。
その後、「パースはずれているけどな」と笑ってパースを理解できないわたしに様々教えてくれた彼が簡単に言ったその言葉こそ、表現力のことじゃなかろうか。
わたしにはピカソのような才覚はなく、クラスの中で輝く絵を描けるひとではなく、どちらかというと落第点の絵しか描けないひとだ。けれど、その中でも、私の絵には基礎能力よりも表現力のほうがあったというだけの話だ。

しかし、デッサンのパースのように言葉や図にしやすいものならば、今のわたしにもある程度説明ができるし、実際私も先生方やクラスメイトに助けられ、専門コースに居た当時よりパースの意味を理解し絵は上手くなった。リアリティを持たせられる基礎技能の値が明らかに上がったのだ。
しかし、自分の絵の持つ、彼の言葉を借りれば「印象の良さ」のコツを伝えろと言われても難しい。ノリで書きましたとしか言えない。なんかこうパースがずれてるので、時間内で見た目が良くなるように適当に影を入れましたくらいしか話せることはない。ちなみに物体をきちんと観察しないで入れるこの影の入れ方はデッサン練習中のデッサンとしてはやばいので真似はしないでほしい。

これでも文字を書いて生活することを夢見るような人間だけれど、とにかく「印象の良さ」とされる表現力を言葉で説明するのは難しい。よしんば説明できたとして、相手がそれを実行できるかはまた別問題になってきてしまう。基礎理論と応用理論みたいなものだ。基礎能力よりも入り組み、個人用にカスタマイズされた「表現力」は一筋縄では捕まえられず、体系的な理論化もしづらい。ゆえに、「表現力」の才能は後付け、理論的な行動や専門学校の授業等では伸ばしづらいと思う。


まとめのようなもの

ひとを才能だけで語りたくはないし、語るつもりはないけれど。
才能だけの話をするならば、「表現力」を多く持っているほうが有利なのかな、と思っている。
伸ばしづらい「表現力」を持った人が、それなりの努力をしいちから基礎能力を伸ばして、その上で自分を顧み自分なりの「表現力」を磨く努力をするのと、
「基礎能力」を持った人がいちから「表現力」を求めるのとではコストのかかりかたが違うよなあ、と単純に思うのだ。
現実はこれほど簡単に体系化されているわけではないから、基礎能力にこそ表現力が潜むだとか、そもそも才能とは何なのかとか、いろいろな意見があると思う。わたしもいろいろ思う。才能だけで語れる世界ではなく、努力で全てを押しのけて人々に愛される芸術を持つ人もたくさんいるはずだし。


こんなことを考えながら焼いた目玉焼きとベーコンはいつもと相変わらず美味しかったので、それでいいかなとも思っている。大家さんがおすそ分けしてくれるもののなかで、こうして目玉焼きにして食べているそこそこ高級な卵がわたしは一番うれしい。

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