風姿花伝
「能の本を書く事、この道の命なり。」「この口伝に花を知る事。まづ、仮令、花の咲くを見て、よろづに花とたとへ始めし理をわきまふべし。」世阿弥 筆 15世紀初頭
「能」「幽玄」の世界。世阿弥は「平家物語」や「伊勢物語」などの古典を素材として、数々の作品を生み出しました。その最大の構成方式が『複式夢幻能』
『複式夢幻能』
①・・・・ある土地を訪れた旅の僧に、見知らぬ者が言葉をかける。
②・・・・その者は、その地にまつわる昔話を他人事のように語るが、あたかも見てきたかのように詳しいので不審に思った僧が尋ねると、自分こそが物語の主人公であると名乗って姿を消す。
③・・・・腑に落ちない僧は里人から物語を詳しく聞く。先ほど会った人物が間違いなくその霊だと判り弔う。
④・・・・僧の前に先ほどの人物が在りし日の姿で再び現れ、昔語りをし懐旧の舞を舞う。そして。何処ともなく姿を消す。気が付けばすべては僧の夢の中の出来事だった。
「井筒」世阿弥の代表作品。伊勢物語を題材としたこの作品は複式夢幻能の典型です。僕達のいる世界、この世は夢幻能の世界なのか。過去も未来も生者も亡者も、みんな本当は混沌と繋がっているのではないだろうか。僕が正面(見所)に座れば、本舞台で舞を舞うのは誰だろう。
「井筒」・・・・ある娘。僧に純愛物語を語った後、井筒の影に姿を消す。そして、愛おしい男の形見の衣装をつけ再び現れ、男への思慕の情を述べ舞を舞う。舞上げて井筒に姿を映せば。そこに見えるのは男の面影。やがて夜は明け、僧の夢も覚める。・・・・。
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