短編映画『雨のまにまに』 - 撮影後記【金澤勇貴監督作品】
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短編映画『雨のまにまに』 - 撮影後記【金澤勇貴監督作品】

西岡 空良

2020年夏の暮れ。雨季が長く高気圧が日本列島を覆っていた、じっとりとしたシーズンの長かった昨年、もう夏ではなく秋だったかもしれません。
少しだけ世の中が変わってしまい、生きづらい世の中を感じている人が僕の知り合いでも大勢いる中、西岡は仕事も落ち着いていたのでとある短編映画を自主制作にてプロデュースする機会に至っておりました。

自分がCMで組むディレクターやプロデューサーの数人が、このご時世柄を機会と見立て自主制作に勤しんでいました。個人としてもオンラインの自主映画の上映会を開いてみたり、はたまた関わっていた長編映画のカラコレに没頭してみたりしましたが、
およそ2ヶ月の緊急事態宣言で1本も撮影案件がなかったあの期間、自分がいかに「現場での作品創り」を求めているかを嫌というほど思い知らされました。

故に、気づいたら周りに声をかけ、僕個人としては初めてプロデューサーを兼任した作品が誕生しておりました。
声をかけた皆が「待ってました!」と声を上げてくれ賛同してくれたのは本当に嬉しく、普段現場で作品作りを共にしていたメンバーをまた集結させるに至りました。

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事の発端はその年の初頭に撮影させて頂いていた長編映画『あなたが育つまで』で知り合った俳優・山下礼(https://www.yamashita-rei.com/)との出会いでした。
彼が俳優という職業に身を置きながらも自ら様々なプロデュースに切り込んでゆく、バイタリティ溢れる人だということから意気投合し、自分たちの知り合いで一緒になって、なにか無茶できないか?というお遊びを考えついていました。よくある自主制作映画の源流行為ですね。
ただ西岡から言わせれば、そこの机の上で繰り広げられる雑談でも本気でも妄想でも、1ワード1ワードというものは"本気"以外の何物でもないのです。

やるならやる、やらないやらないならやらない、創りたいから創る

自主制作なんて、これに就きます。
その生理が合ったため、その時点で今自分が一番集めたいメンバーを集め、作りたい物をヒアリングし、皆に(勿論僕も)好き勝手やってもらいました。そんな感じの撮って出し蜻蛉返り企画。
監督・脚本は学生時代からの付き合いながら、自身の前作品(短編映画『光』|https://hikari.mystrikingly.com/)が最近国内外で賞の獲得や上映の機会に恵まれている戦友・金澤勇貴に逆オファーさせて頂きました。一緒に作品を撮影し始めてもう10年近くになりますが、彼も本業が若干落ち着いていたようで快諾していただきました。

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初稿のタイトルは『記念日のソラ』

普段同級生たち皆が騒いでいるあの校舎も、なんだか自分だけが特別な空間にいるような静寂さ。そんな中1人の高校生が味わった「自分だけの記念日」を舞台にしよう!と、金澤の筆は踊っていました。
現代が小さな幸せを忘れている、だからこそちっぽけな・パーソナルな幸せを短編映画として切り取ることに特別感を見出す というようなことから僕も「いいね!」と1言賛同。

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主演の女の子が好きな男の子に告白か何かして、
その日の青空に手を掲げ、「カシャッ」っとつぶやく...。
携帯で撮らずに自分の心へ刻んだ『記念日のソラ』......。
金澤も西岡も全くもってそんな青春過ごしてない!!
だからこそ撮れるんじゃん!! なんて馬鹿話をしながら企画は進行してゆきました。

そうです。この作品は晴れることが大前提で話が進んでいったのです。
ご覧のロケハン写真でも、さんさんと晴れ渡っていました。

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主演は映画『あなたが育つまで』(2021年公開)で知り合った北村 優衣さん(https://www.yui-kitamura.com/)にお願いし、山下礼くんとの会話劇に仕上げました。
ファン層や脚本の刺さる年代に向け、短編映画という形でありながら「SNSドラマ」としての公開もしました。このあたりのノウハウはかつてSNSドラマを一緒に制作させて頂きました株式会社N.D.Promotionさん(https://ndpromotion.co.jp/)との立ち回りを参考に、
またそこまで至らずとも、かつて撮影させて頂いたSNSドラマ『蒼い夏』や『とけないで、サマー』をノウハウとしての先生に置き、企画を進めました。

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この2作品に関してもかなり思い入れがあるお仕事でしたので、また別の撮影後記として書き綴りたいなと思っています。

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SNSドラマという文化は海外で「web series」というカテゴリとして呼ばれており、作品完成後はそれなりの展開がありました。日韓共同のオンライン映画祭にて上映、主演の北村さんが"BEST LEADING ACTRES awards"を頂き、「web series」としての存在意義も示すことができました。


雨季突入

雨の日を狙って撮ったと思われた方もいるでしょう。元々は夏の日差しと滴る汗が眩しい青春モノの予定でしたが、仮で雨案も考えたのが前日、決断は当日でした。
当日の悪天候で約3回のリスケを踏み、雨案としてようやく撮影にこぎつけた暁には、汗も脚本もベタベタの作品ではなく、雨でしっとりとした静かな恋物語になっていました。
"功を奏す"とはこういうことを言うのでしょうか。
この辺りの方向転換は自主映画だからこそできることでしたが、48時間映画祭(48 Film Hour Project|http://48hfp.fffproduction.com/index_tokyo.html)への出場などのノウハウが活きた瞬間でもありました。
それと同時に、雨の中ほぼ着衣泳状態で丸一日撮影させた西岡は、金澤監督へ1つ貸しをつくることとなりましたが...。
これもまた、"功を奏す"と言うのでしょうか...?笑

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雨天決行、上等

メインカメラはPanasonic EVA-1を採用。
当日は本当に丸一日雨が降り続く予報で且つ的中してきたので、アングルチェンジの時間短縮のためにレンズはCanonのズームレンズを使用。
◆Canon EF 16-35mm F2.8L III USM ⌀82mm
◆Canon EF 24-70mm F2.8L ll USM ⌀82mm
◆Canon EF 70-200mm F2.8L IS Ⅱ USM ⌀77mm
大三元と呼ばれるこのレンズの露出、ミリ数とレンズ自体の操作性と扱いやすさ、守備範囲の広さを改めて実感しました。
このような機材の決め方はアーティストのプロモーションビデオやミュージックビデオのノリに近いですが、そういうところで重宝される機材というのは、まさにこういうところ という実用例にできた気がします。

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しとしととふり続ける雨粒、その大きさも上に木があるか無いか、あればその葉の大きさによって、取り立てて寄った時に見えてくる形までも違います。映画的な、シャローフォーカスな画を作るにあたって、フォーカスのきている位置(ピーク)とそうでない部分の背景のボケて行きかた。この双方のコントラストにメリハリを持たせるために単玉の選択も考えにはありましたが、この3本のレンズはそうではなくて、ピークのきている位置をきちんと見せる ということに特化したレンズだと思っています。もともとがスチール用に開発されたレンズということもありますが、今回はディフュージョン系のフィルターを入れることも想定されていたので、逆にシャキッと見せるべきところはシャキッと見せるということが、結果的にはいい質感になって画に表れたかもしれません。
(濡れたコンクリート、団地の塀にこびりついた苔、ぼろぼろのパイプ手すり、奥を流れる国道、木の袂とそうでない場所の明暗の差など...)

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このレンズが映像制作で主流になった理由は、デジタルシネマの先駆け、Canon EOS 5Dや7Dのムービー機能で自主映画や自主PVを撮影し出したインディーズのカメラマンたちがいたためで、まさかその時には十数年先までこのレンズが映像制作の第一線で使われる代物になるとは、当時の技術者たち誰しも思っていなかったでしょう。
個人的には予算的にシネレンズが入れれない作品では、先ずこれを。結構好意的に使っています。

レンズのリングも軽く、フォーカスの送り幅も使っていて気持ちが良かったです。

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撮影は神奈川県北部の団地街で敢行。
先ほども言いましたが撮影は着衣泳状態で、カメラを雨粒から守り守り乗り切りました。昼休憩の時に入ったその土地の定食屋さんが、撮影隊にすごく良くしてくれたのを覚えています。

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オフラインの編集も遠隔で行いました。
年末になるにつれ、徐々にまた外出しづらいご時世柄へ。監督が田舎に住んでいることもあり、細かいニュアンスは実際にタイムラインを皆で見ながら作業していました。

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本作のメインビジュアルは米山未枝さん(https://www.facebook.com/mie.otawa.7)にお願いしました。
実写作品で6分と言う短い尺ならではの、静かで、おしとやかな紙芝居調のティザームービーも仕上がりました。

自主制作の製作総指揮をやってみて

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1日だけの無茶を、無茶好きなメンバーとともに過ごし、無茶苦茶良い作品を創る。もともと自主映画育ちの西岡はこういった行為が大好きです。
人を集め、自分の創りたい作品を創るためにどれだけ皆を尊び、各々が責任を持ってアレンジメントできるように現場をどれだけ盛り上げるか。
当然そこにはビジネスの面や人徳も介在しているけれど、全ては現場で報われ、決まってくるものだと思っています。

短編映画『雨のまにまに』は2021年初の国内上映を迎え、これから各地の映画祭を旅して回ります。製作総指揮という立ち位置を初めて担わせていただいたこの作品が多くの人に観ていただき、またその現場の皆の「楽しい!」という創作精神を感じていただければ、本望です。


短編映画『雨のにまに』

- Cast -
夏美 北村 優衣
光一 山下 礼

- Staff -
Director / Wriitter 金澤 勇貴
Production Designer  米山 未枝
Cinematographer / E.P 西岡 空良
Sound recording 内藤 和幸
Editor 岡本 尚樹
Sound dubbing 中根 渉(DIGITAL GARDEN.inc)
Production Manager 笠原 伊代

Theme song『たゆむ』
Lyrics / songs ごめん
Composition くぢら(やさしい倶楽部)

English subtitle translation(英語字幕翻訳) Kenta Maxima
Produce クリエイターズ・ラボラトリー - Creators Laboratory -
Planning I.D.P.Y

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●JapanWebFest2021 BEST LEADING ACTOR - Yui Kitamura
 入選 / オンライン上映 / 主演女優賞ノミネート:北村 優衣
●TOKYO青春映画祭 準グランプリ受賞
●第16回 札幌国際短編映画祭 - National Program
 最優秀国内作品賞(Best National Short)受賞
 2021年11月19日〜21日上映

【上映 / オンライン上映歴】
●夜空と交差する森の映画祭
●鶴川ショートムービーコンテスト2021
●Seisho Cinema Fes 4th 西湖シネマ倶楽部
●自主制作映画祭・合同上映会ビヨンド6/スタジオケイヴ
●第5回 おおいた自主映画祭
●第7回 立川名画座通り映画祭
●STARDUST DIRECTORS film fes. 2021
●2021第4回 いぶすき映画祭「あなたと愛を紡ぎたい」
●Good stock Film session vol.6
●BIMIFF - Brazil International Monthly Independent Film Festival
●Madras Independent Film Festival

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                           撮影 西岡 空良




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西岡 空良
フリーランスのカメラマン。CMや映画を撮影しています。自主活動や日々の創作に関してのレポートを、気ままに書き綴ろうと思います。 過去作品はこちら→https://site-1883809-4932-5707.mystrikingly.com/