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真夜中の授乳に思うこと

5月に子どもが生まれ、授乳のため夜間に起きる毎日です。ちょっとした散歩や買い物以外は1日中家にいて、手のかかる赤ん坊と2人きりの時間がほとんど。そんな日中の慌ただしさとは打って変わって真夜中の授乳タイムはまるで時の流れが違う国に迷い込んだかのように、わたしにとってなんだか不思議で特別な時間です。灯りを落としたリビング、寝不足でぼぅっとする頭、ちゅぱちゅぱと一心に吸啜する赤ん坊、夫も草木も何もかも寝静まっている。そんな中に身を置いていると、ふいに昔のことを思い出すのです。それは空白のなかから脈絡なく湧き上がってくる記憶の断片で、例えば幼稚園の園庭にクジャクがいたこと、園のお山にレースのスカートをまとったキノコが生えていたこと、雨上がりのジャングルジムについた水滴が綺麗だったこと、廃バスを改造した図書室が好きだったこと、えんぴつのキャップのことを書いた作文で褒められたこと、多摩川の崖でメタセコイヤの化石を掘ったこと。今まで思い出しもしなかった、なんて事のない日常の風景。浜辺を散歩しながら波間に輝くシーグラスを拾い集めるように、そんな記憶の数々を手のひらに乗せて楽しんでいます。

手に抱く娘にはこれからどんなことが待ち受けているのだろう。大きくなったときに昔を思い返してフフフッとなるような体験を沢山してほしい、その記憶は辛いこと悲しいことを乗り越える心の滋養となってくれると思うから。どうか、どうかと日々祈っています。

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