【短編小説】どうせ今だけ
自殺した幽霊だけが、私は視える。
いつからかは覚えていないけど、もしかして、私自身にその願望があるからかもしれない。
なんで幽霊をみたときに、自殺した人だって分かるの?と聞かれた事があるけど、答えは簡単だった。
本人が教えてくれるから知っているだけ。
幽霊は、自分が視られていると分かった瞬間喜び、私にいつも声をかけてくるのだった。
態度はそれぞれ違った。
みえている、と喜んでいる人、嫌がる人、死んだことを後悔しているひと、後悔していないひと、なんともおもっていないひと、幽霊を楽しんでいるひと…
私は死んだときの痛みをおそれて、そんな人たちをずっと、羨望の眼差しを込めて、訥々と眺めるのだだった。
いつか私も、そちら側に立ちたい。
そんな風に思うのは今だけで、もしかしたら、すぐに年老いてしまうのかもしれない。
そうしたらいまみえている幽霊達は、自分の目に、どう映るんだろう。
そう考えながら、ふつうの人よりも少しだけ人口が多く視える街を、ぼんやりと歩く。
おわり
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