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冬晴れの新宿御苑 2月23日

寒桜が空をピンク色に染めはじめてから、あの春が目覚めつつあると聞いた。忘れていた何かを急に思い出したときのように、私は何と言っていいか分からずに戸惑った。だが、それは戸惑いから柔らかい音色へと変わった。その音に扉の氷が解けて水滴になって流れ、それは見る間に大きな湖になった。気づくと私は湖の上をヨロヨロと歩きながら誰かを探していた。誰かに触れなければ、私は消えてしまう気がしたのだ。私は何かを恐れていたのかもしれないが、恐れながら喜んでもいた。空をゆく風は笑うようになり、その声があちこちで聞かれるようになった。それが私を慰めてくれた。もうこのあたりで終わりなのだ。春は目覚めて私を見つけるだろう。そして、どうしてそこにいるのかという目で訝しげに私を見る。それは優しい眼差しではある。一瞬、春は私の手に触れるが、私たちが共にいることはできない。だから、私は眠りにつくしかないのだ。寒桜が空を染めるころ、春は目覚めて語りはじめ、私は大地に忘れ去られる。

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