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惚れた弱みの八重桜

夫と出会い、恋をした。
一緒にいたくていたくて、実家暮らしだったわたしはほとんどころがりこむように、アパート暮らしだった夫宅に住み始めるようになった。
そんなふたりのはじまりの季節は、桜の季節を過ぎ、
八重桜の頃だったなぁ。
同棲だって、結婚だって、いつもわたしがぐいぐいとせっついた。
夫は、とにかく、いつも優しかった。
でも、最終的には決断をしてくれる。
もちろん、それがなければ二人の駒は進めない。
わたしも女として「最後は選んでくれた」というところを感じるのに
必死だったし、そういう彼の在り方を好きだと思った。

でも、13年、いや、16~7年?経ってみて思う。
もうちょっと、あのぐいぐいを、ゆるやかにできていたらなあって。
わたしはわたしでしかないから、とは思う。
わたしの可愛い部分だったな、とも思う。

とにかく夫には、思ったことは言わないといられない。
飲み込んだつもりでも、数日後には「実はね」と話してしまう。
そういうときに夫も逃げるような人でもない。
でも過剰にサービスをしてくれる人でもない。
だから、話しを聞いてほしいだけのはずが、どこかを超えると、
「ねぇ、それだけ?」みたいな面倒くさいことになることが多い。

「いいかげんにしてよ」とは言わない夫。
でも何度か聞かれたことがある。
「どうして”自分は愛している”、それだけじゃ足りないの?」
おぉぅ……
ぐさぐさっ

わたしは夫が好き、尊敬もしている。
だから、こういうときに、ものすごく恥ずかしい。
素直なのだ。
あぁほんとうだな。
そしてこんなふうにいえるって、逆に、すごい夫は、
自分の愛に自信があるってことだよなぁと、
じんわりと都合のいいストーリーが生まれ(でも真実?よね?)
だんだんとご機嫌がなおって来る。
むしろうきうきしてくる。

えー、超かっこいいね、素敵だね。好きだわぁ。

わたしがそんな気分になれたらもう、円満そのものでしかない。

わたしたちは、結婚というかたちをとっても
すぐに子どもをとは思わなかった。
やっぱり生活の不安定さが大きく、
それは夫が結婚も、すぐには決断できなかったことの理由のひとつ。
7年弱は避妊をすることを選択していました。

その間は、本当に、こういう面倒くさいやりとりを、何度も何度も重ねた。
本当に何度も何度も。
でもいつも、大好き、というきもちに戻れた。
それさえあれば何もいらない。何も求めない。
そのときは心底そう思えたし、それはわたしの真実だった。

第一子を出産後、いわゆる産後うつのようなもの、
産後クライシスを体験した。
あんなに求めていた夫の優しさに、いらだった。
フォローもぜんぶ不足だった。
たぶん2~3才、息子の卒乳ごろまで、わたしはひどい妻だった。

そしてだんだん、落ち着きを取り戻す生活のなかで、
今度やってきたのは、夫への懺悔。
産後の数年間をさらにさかのぼって、出逢いからのすべて、
わたしたちの結婚式はやらないって言っていたのに、
やっぱりやるって、やって!って、やらないなんてひどい
みたいなふうに詰め寄って、
手作りの結婚パーティ、結果ものすごーい夫にはいろいろと負担をおしつけた、そういうことまで、

優しい夫よ、めっちゃごめーん。
「わたしってひどい。これって精神的なDV?」とさえ思った。
ちがう、笑って泣き笑って、そんなはなしを夫と出来たときに、
夫自身も認めていたんだ、DV疑惑。
胃腸の弱い夫はしょっちゅうおなかをこわしていた。

ちょっと待って・・・。幸せだったの?
なんかごめん。このまま、いいの?

ひどく落ち込んだ。でも、もう今となってはわたしも一児の母。
日々成長する息子を追いかけまわすだけで必死。
ご飯を作る、そのやりくりにも必死。
落ち込んでばかぐはいられなかった。

闇にぐーんと沈み込む、その期間が短くなった。
夫にぐいっと詰め寄る、その刃がちょっとだけやわらかくなった
・・・? いや、なってないなぁ、これはきっと。
むしろ回数が減って、鋭利さは増したかも(笑)

と、まぁ、こうやって(笑)とかをつけられるような雰囲気を
もてるようになったりもした。

春は誰もがちょっと体調を崩す時期らしい。
八重桜を見て、懐かしく思い出す。
そして、わたしは夫のことがやっぱり好きなんだなぁと、何度も何十回も何百回も思ってきた。

そして、その、産後うつが明けてきた頃だったり、
今もだったり、
いや、ずーっと、私は少しずつ、
「惚れた弱み」という言葉を自分のものにしはじめていった。

昔だったらそんなこと、ぜったいに言えなかった。

「彼と彼女と、どっちのほうが好き度が多いの~?」的な会話は
大っ嫌いだった。
わたしのほうが好き度が多い。そう思っていたからだ。

惚れた弱み。

わたしはわたし。自分を満たすのは、夫でも子でも趣味でもなんでも
「あーこれ、スキなんだよね」という時間。
ずっとむかしっから、たぶん、幼少のころからそういう人だった。

八重桜のように、何度も重ねる。
自分自身のこと。
そして夫への想い。
暮らすということそのものも。

どういうふうにアプローチして、綴っていこうかな?と
まだまだ迷ってはいるのですが、
また次回。
今度はもっと?具体的な夫とのやりとりなども、と思います。

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