長兄のお嫁さん『鼻で笑う』

長兄のお嫁さんは開業医の娘だ。
姉弟全員医者という世間的に立派な家で、お嫁さんは医師免許を持っていない。

私の母は意地悪だ。
母がお嫁さんに対し『一人だけ医者になれなかった出来損ない』と言ったとかなんとか。

長兄が母のその態度がお嫁さんとの確執を生んでいると話してくれた。

それを聞いた時、母を恥ずかしく思い、お嫁さんに申し訳なく思い、同時に私が知るお嫁さんから卵が先か鶏が先か考えてしまった。

人は劣等感が強いほど意地悪になる。

二人は性格は違うけれど似ている。
自分が抱える劣等感を昇華するのではなくそのままに、相手を見下すことで優越感を楽に得ようとする。

見下す相手はもちろん選んでいる。
通り魔と同じように。
彼等は言う。
「誰でもよかった(弱い人なら)」と。

母は自分が優位でなければ気が済まない。

嫁いでから祖母と張り合い。
母になり娘と張り合い。
姑になりお嫁さんと張り合っている。

祖母は自ら命を絶った。
私は疲弊しボロボロになった。
お嫁さんはどうか。

そんなお嫁さんには鼻で笑う癖がある。
一般的にあまり品の良くない所作だけれど身に付いてしまっているようだった。
気にしないよう努めていたものの、そこに非常識な言動が相俟っているのでどうにも苦痛だった。

私はずいぶん前から次兄のことが気掛かりだった。
社会的なこと、生活のこと、精神面のこと、恐らく次兄が抱えている不具合のこと。

普通に社会に参加し普通に生きることが出来難い。

次兄が問題を抱えているのは顔を見れば一目瞭然なのに、貶すことはあっても必要な手を差し伸べることはない。
お金では支えるけれど、心では一切支えない。

父と、長兄と、母と、それぞれ話をしたけれど実ることは無かった。

そんな次兄の心配を長兄と話していた時。
いつものように弟を小馬鹿にした態度の長兄を窘めるつもりで言った。

「いや、、、次兄も普通に結婚して家族だって欲しいと思うよ。」

長兄と私はその時長く話していた。
同じ部屋にお嫁さんがいたけれどこちらには無関心でずっと子供の世話をしていた。

私がそう言うと、それまで無関心だったお嫁さんが突然割り込んできた。

「え~次兄さんって結婚したいんですか~?私、次兄さんは結婚したくないんだと思ってました~」

いつもの鼻で笑った言い方。

次兄とお嫁さんはそんな深い話するほど仲がいいのだろうか。
・・・違う。

『結婚したくない』というのはできるけどしない人に当てはまる言葉。
第三者が言う場合はなおさら。

そうではない人に当てはめるのは、、、とても意地悪だと思う。

あぁ無理だ。自分の中でそう結論が出たのはこの時だったと思う。

しゃしゃり出てでも次兄のことを『言わずにおれなかった』お嫁さんの顔は、母のそれと同じだった。

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