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日本ではなぜESG関連の株主提案に支持が集まらないのか?

日本では、ESG関連の株主提案を行うこと、また、それらが支持を集めることは難しいと言われています。本日は、その理由について法律の観点からお話したいと思います。


なぜ日本ではESG関連の株主提案が承認されにくいのか?

日本の法律では、株主提案が承認された場合、会社の定款(会社の憲法に相当するもの)の修正が必要となります。承認された株主提案に適切に従わない場合、会社は訴訟などの法的リスクに晒される可能性があります。つまり、日本では、株主提案は定款変更に繋がる可能性があり、そのことがESG関連の株主提案を行う一つの障壁となっています。

アメリカではどうなのか?

アメリカでは、米国企業が承認された株主提案に従わない場合、レピュテーションリスクに直面することはありますが、日本のように訴訟リスクに晒される可能性は低いと言われています。なぜなら、アメリカでは日本のように株主提案が法的拘束力を持たないからです。

日本におけるESG関連の株主提案の状況

今年の6月に開催された株主総会では、昨年比で2倍の数の気候関連の株主提案が提出されました。三菱UFJ信託銀行のdeputy general managerのKoichi Taira氏によると、気候関連の情報開示など、環境関連の株主提案は昨年よりも少なくなっているとのことです。また、気候関連の株主提案に対する支持率についても、過去3年間で株主提案が提出された企業では、平均6.6ポイント低下しているという分析結果が出ているとのことです。

ESG関連の株主提案が支持されないその他の理由

日本では、ネットゼロ移行計画など、情報開示に関する株主提案については機関投資家から支持されることが多いですが、具体的な行動を求める提案については支持が集まらない傾向があります。それは、企業や機関投資家が、そのような提案が承認された場合、事業が大幅に制限されてしまうのではないかと懸念しているからと言われています。

今年の株主提案の多くは、ネットゼロの実現に向けた移行計画の開示を企業に要求するものでした。しかし、日本企業、特に日本の銀行は、この点については既に対応しているため、株主提案として承認することは不要と考える企業が多くいます。例えば、MUFGは5月の株主通知で「MUFGの脱炭素化に向けた移行計画を2023年度末までに開示することを既に約束している」と述べ、株主にこの提案に反対票を投じるよう促しています。機関投資家はこのような会社側の評価に多少とも同意しているため、NGO等が提出した気候関連の株主提案はあまり支持を集めることができなかったのではないかと、Taira氏は指摘しています。

ESG関連の株主提案が支持されるようになるために必要なこととは?

現在、それぞれの株主提案がどのように企業価値の向上に繋がるのかについて、株主提案を提出した株主から明確な説明がなされていないケースがあります。今後は、そのような点について明確な説明を行っていくことが、ESG関連の株主提案への支持を高めていく上では重要な要素になると思われます。

参考文献

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sora
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