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ドラキュラ観たい!? ~ホラーというエンターテインメント~

木村優一

私が子供の頃、夏休みになると『怪奇特集』『ミステリー特集』といったテレビ番組、ホラー映画が放送されるのを楽しみに観ていました。夜トイレに行くときに、毎回後悔するのですが……。

実はみんなキョンシーに夢中だった?!


ホラー映画と言ってもジャンルはさまざま。
ホラー好きかも! と振り返ってみても、むしろ苦手なジャンルの方が多い気さえします。「怖すぎない」「ホラーの中にも人間味がある」ことが個人的な好みなのかもしれません。

その2つをクリアしたのが、我々世代に絶大な人気があった『キョンシー』シリーズです。

香港や台湾で製作されたキョンシー映画やテレビ番組が私の幼少期には大変な人気で、私もご多分に漏れず観ていましたが、いつしかブームは過ぎ去り、思春期には、古い、幼稚という印象さえ持つようになっていました。

月日は経ち大学時代に、同級生数名と映画の上映会をしようということになり、レンタルビデオショップで映画を選んでいたときに、ホラー映画コーナーの前で友人のひとりが照れ臭そうに

「俺、キョンシー好きなんだよね(笑)」

とポツリ。その途端、その場にいた全員が、懐かしくキョンシーに対する思い出を語り出しました。

「道士が術を使うまねをしてよく遊んだ」
「お札作った」
「夜になると外にキョンシーいる気がして怖かった」
「スイカ頭がかわいそうだった」
「特殊霊魂のまねして遊んだ」

などなど。

その日の上映会作品は満場一致で『キョンシー』になりました。その日以来、『幽幻道士』『霊幻道士』シリーズを数日に分けて、観たように思います。

観ながらも、観終わってからも、

「道士はやっぱりラム・チェンインが一番かっこいい」
「幽幻道士では結局浩雲さんが一番強いんだよね」
ユン・ピョウさりげないけど、やっぱり動きすごいなぁ」

各々一家言あり、こんなに盛り上がる映画上映会はなかなかなかったと思います。

・ホラーであってもコミカルで、誰でも楽しめる
・子供たちが活躍するシリーズもあり、親しみやすい
・超人的なアクションがかっこいい
・道士の法術がかっこいい
・キョンシーにも悲しい歴史があり、共感できる
・建物や衣装、宗教観など異国の文化に触れられる
・映画の舞台が隣国なので、子供のころは日本にもキョンシーが来ると思っていた

こんな話題で盛り上がるかわいい大学生でした(笑)。


東洋のキョンシー、西洋のドラキュラ


今年も過ぎ行く夏を惜しんで、久しぶりにホラー系の映画を観てみようかな、と思い選んだのが

1992年フランシス・フォード・コッポラ監督の作品『BRAM STOKER'S DRACULA』(邦題:『ドラキュラ』)。東の吸血鬼がキョンシーなら西はドラキュラ? やはりこの手の話が好きなようです。

インパクトのあるポスターは見覚えがありましたが、映画を観るのは初めて。ワクワクしながら部屋を薄暗くして観ました。

これから続きはネタバレしないように気をつけて書きますが、事前情報なしに映画を観たい方はご注意ください。

簡単に設定を説明すると、1897年に刊行されたブラム・ストーカー作の小説『吸血鬼ドラキュラ』が原作になっているようで、1897年のルーマニアとロンドンが舞台。主役はもちろんドラキュラです。

映画を観終わりまず思ったのは、まるで劇場で観る舞台のように美しいな、ということでした。
1993年の第65回アカデミー賞で、衣裳デザイン賞(石岡瑛子)、メイクアップ賞を受賞、同賞の美術賞にノミネートされていることからも、この映画の美しさが評価されていることが分かります。

特に衣装は、華やかでありながら、映画全体に常に漂っている異様さ、不気味さを一層際立たせているようで、それを観るだけでも一見の価値あり! ここはネタバレギリギリかもしれませんが、ドラキュラに血を吸われてしまうルーシーの花嫁衣装、そして埋葬されるときに身に着ける衣装の異世界感漂う美しさは、この映画のハイライトを際立たせる大切な要素だったと思います。

そして、アンソニー・ホプキンスがやっぱりよかった! 今年『羊たちの沈黙』以来、『ファーザー』で2度目のアカデミー主演男優賞を受賞したホプキンス。個人的には『日の名残り』の英国紳士のイメージが強いのですが、本作では司祭とエイブラハム・ヴァン・ヘルシング教授の2役を演じています。ヘルシング教授はドラキュラ退治の中心人物なので、大変重要な役であるのは言うまでもないのですが、ホプキンスが登場するまでと後では映画の空気がガラッと変わりました(と私は感じました)。『ファーザー』も早く観たいです。


エンターテインメントだね、ホラーも

以下の感想は、ネタバレでアウトかもしれませんが、キョンシーとドラキュラに次の共通点を見出しました。

・程よく怖い
・国の文化を感じられる
・ドラキュラにも悲しい歴史がある
・術や知恵でドラキュラに対抗しようとする人が活躍する
・ちょっとしたアクションがある
・実際語られる伝説がある


『ドラキュラ』に関していえば、勧善懲悪ではなく、なぜドラキュラになったのか、ドラキュラの愛する人への気持ちや苦悩も描かれ、最後はドラキュラを取り巻く人たちとの因縁も昇華されていくような、ホラー映画を観た後なのに後味が悪くなかった、ということも好感が持てました。

鑑賞後、人はなんでホラー映画を観たくなるのかな、と考え、「エンターテインメントだね、ホラーも」と当たり前の結論に達しました。しかもただ怖がらせるホラーではなく、「人間を描いたホラー」だからこそ、感動するのかもしれません。皆、この2時間は非日常を楽しみ、共感し、また日常へ帰っていく。私もたっぷり楽しませてもらいました。

非日常を味わうことを楽しみにいらっしゃるお客様のために、私も思いっきりエンターテインメントを準備して、コンサートをしたいな、と飛躍した感想も湧いてきました。

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木村優一
クラシックの声楽家。 ソプラニスタ(男性ソプラノ)。 東京藝術大学声楽科卒業。 音楽、映画、旅の思い出、料理など綴っていきます。 YouTube木村優一公式チャンネル→https://www.youtube.com/channel/UCFsXXbudcL9tC8aIt5KiNqA