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映画「プラン75」はSF映画「ソイレントグリーン」よりも怖ろしい。

映画『PLAN 75』とは

舞台は近未来の日本、超高齢化社会の日本において年齢が75歳に成ると自分の意思で死を選ぶ事が出来る法律が国会を通り施工されます。

初めは無関心で、ただ機械的に仕事として携わっていた若者たちが。老人たちとの交流を通して、その事の理不尽さに気づいてゆくという物語です。

カンヌ国際映画祭 カメラドール 特別表彰!映画『PLAN 75』予告



編少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度<プラン75>が国会で可決・施行された。様々な物議を醸していたが、超高齢化問題の解決策として、世間は受け入れムードとなる。 夫と死別して一人暮らしの角谷ミチ(倍賞千恵子)は78歳。ある日、高齢を理由にホテルの客室清掃の仕事を突然解雇される。住む場所をも失いそうになった彼女は<プラン75>の申請を検討し始める。一方、市役所の<プラン75>の申請窓口で働くヒロム(磯村勇斗)、死を選んだお年寄りに“その日”が来る直前までサポートするコールセンタースタッフの瑶子(河合優実)は、このシステムの存在に疑問を抱いていく……。

FilmIsNow Movie Trailers Internationalより



SF映画「ソイレントグリーン」とは

「ソイレントグリーン」とは、1973年公開でチャールトン・ヘストン主演の近未来SF映画です。

内容は、究極の格差社会のなか、極一部の富裕層以外は海のプランクトンから作る合成食品ソイレントグリーンを食料にしていたが。

実際は、人間の死体から作られている事を突き止めた刑事が、瀕死の状態に成りながらも真実をつたえ止めさせようとする物語です。

映画ソイレントグリーンSoylent Green 1973

2022年、とどまるところを知らない人口増加により、世界は食住を失った人間が路上に溢れ、一部の特権階級と多くの貧民という格差の激しい社会となっていた。肉や野菜といった本物の食料品は宝石以上に希少で高価なものとなり、特権階級を除くほとんどの人間は、ソイレント社が海のプランクトンから作るという合成食品の配給を受けて、細々と生き延びていた。
ある夜、ソイレント社の幹部サイモンソンが殺害される。ニューヨークに住む殺人課のソーン刑事は、同居人の老人・ソルの協力を得て捜査に乗り出すが、様々な妨害を受けた後、新製品「ソイレント・グリーン」の配給中断による暴動のどさくさに紛れて暗殺されそうになる。
そんな中、自室に戻ったソーンは、ソルが「ホーム」に行ったことを知る。慌ててホーム(=公営安楽死施設)に向かったソーンは、真実を知ってしまったが故に、死を選ぶしかなかったソルの最期を見届けることになる。草原や大海原などの映像とベートーヴェン交響曲第6番「田園」の響きに包まれてソルが死んだ後、ソーンはその遺言に従い、裏付けを取るために死体を追跡する。そしてソルをはじめ多数の死体がトラックでソイレント社の工場に運び込まれ、人間の死体からソイレント・グリーンが生産されている事実を突き止める。その後、暗殺者の襲撃を受け、彼らを倒したものの自身も深手を負ったソーンは、簡易担架で搬送されながら声高に真実を叫ぶのだった。

Wikipediaより



映画「楢山節考」とは

今村昌平監督が、深沢七郎の小説「楢山節考」を原作に映画化した作品でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した作品です。

舞台は貧しい寒村で、その村では、少ない食べ物で冬を越すために70歳の冬になると口減らしの為に山奥に年寄りを捨てに行くと言う習わしがあった。

息子の辰平は、辛い気持ちで年老いた母のおりんを背負い山に捨てに行くのだったが。

今回、映画『PLAN 75』がカンヌで新人監督賞を受賞した事で、海外のバイヤーからは「楢山節考」を思い出させるとの声が上がっているそうです。

楢山節考

今村昌平監督が深沢七郎の小説「楢山節考」「東北の神武たち」を映画化し、1983年・第36回カンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いた人間ドラマ。信州の山深い寒村。この村では70歳を迎えた老人は皆、冬に楢山へ行くという掟があった。それは死を意味するが、そうすることで貧しい村の未来を守っているのだった。妻を亡くした辰平の家には、現在69歳の母おりんがいる。おりんは楢山へ行くことを少しも恐れていないが、母思いの辰平はつらい心情を抱えていた。辰平を緒形拳、母おりんをラテン歌手の坂本スミ子が演じた。

eiga.com, Inc.より


早川千絵監督インタビュー

早川千絵監督が、いったい現在日本の何に危機感を抱てこの作品を作るに至ったのかが語られています。

75歳になったら生死を選ぶ社会」描いた映画「PLAN 75」早川千絵監督インタビュー【前編】(2022年5月24日)

世界3大映画祭のひとつ、フランスのカンヌ国際映画祭で斬新な作品をあつめた「ある視点部門」に、早川千絵監督の長編デビュー作「PLAN 75」がノミネートされました。 「75歳になったら自ら生死を選ぶ制度」が導入された近未来の日本が舞台。 倍賞千恵子演じる78歳の主人公が悩みながら「生きる意味」に向き合うストーリーです。 デビュー作がノミネートされる快挙を達成した早川監督のロングインタビュー、前編は、映画「PLAN 75」に込めた思いや高齢化問題への考えを聞きました。

テレ東BIZより


映画「プラン75」は、なぜSF映画「ソイレントグリーン」よりも怖ろしいのか。

映画「ソイレントグリーン」の恐ろしさは、組織的に人間を安楽死させて、秘密裏にその死体を食料にしている所がショッキングです。

しかし「プラン75」は、その手前の、安楽死の部分の映画ですので、ショッキングさでは劣るのに。

現実味としては現在日本では、有りうる事と思わせられるところが怖ろしいのです。

何故そのように感じるのかと言えば、実際に透析患者は国の金を食いつぶす邪魔者のように言う人が、ある政党から立候補しようとしたことがありましたね。

そしてそのような言説にたいして、反対する人ももちろん大勢いましたが。

中には、同調する人たちも多々見られたのまた事実なことです。


そしてつい最近でも、あるインフルエンサーと呼ばれる人が、ホームレスの命を助けるのなら、動物を助けたほうがましだと。

人として、考えられないような発言を平気でしています。

現在の日本は、潜在的に他者や弱者に対しての寛容さが著しく低下していると思えるのです。


金持ちだけが強者として長生き出来る社会、それ以外の弱者は邪魔者として生きる事も許されないような社会。

今の日本社会は、このような未来を予想させる要素があると思います。

いえ、もうすでに70歳を超えて働けなくなったので死を選んだと言う事件も実際に起きています。

諸外国に比べて、生活保護を受給できるのに受けている人の少なさは異常です。

外国だと、資格のある80~90%の方が受給しているのに比べ、日本では、資格があるに受給していない人が80%程度もいるとのことです。

そのような事が、日本の生きづらさにも繋がっていると思うのです。



寛容の精神

どうして、最近の日本人はここまで寛容の精神を忘れてしまったのでしょうか。

その一番の原因は、やはり政治だと思います。

昨今の政治を見ていると、政治家が自分事の方が一番大事で、国民の事は後回しですよね。

それこそ、国民は富裕層のオコボレを取り合って入ば良いのだと思っている節があります。

この国のトップにいる人たちが、そのように自分たちだけ良ければいいとの姿を見せていれば。

国民も、自分だけの事を考えて他者への寛容さが失われていくのも当然ですよね。

それこそ、自分だけ、金だけ、今だけ政治の弊害だと思います。


「PLAN 75」と「楢山節考」

「楢山節考」は、昔の伝承物語です。

そして「PLAN 75」は、近未来の物語としていますが。
映画の中では、ほぼ現在を舞台にしています。

昔と、現在の物語が、どうして似たような問題を題材として映画としているのでしょうか。

「楢山節考」の時代背景と、「PLAN 75」の時代背景ではその豊かさや環境は全く違いますよね。

「楢山節考」の時代では、限られた人間がやっと生きられる食べ物しかなく泣く泣く母を捨てなければならなかった訳です。


しかし「PLAN 75」の時代では、「楢山節考」の時代とは時代背景が全く違うはずなのに同じような問題で苦悩するのです。

本当に日本は、老人を生かしておけない程に貧しい国なのでしょうか。


それは違いますよね、日本は、資産やGDPでも上から数えたほうが現在でも早い国ですよね。

日本よりも、よほど余裕のない国であったとしても、マトモな国であれば老人や弱者を邪魔者扱いするような事はしていませんよね。


精神的貧困と平等性

今の日本は、「楢山節考」の時代に比べれば比べられないほどに豊かなのですが。

どうして「PLAN 75」のような映画が作られたのでしょうか。

それは、日本人の精神が、貧しくなっているのと関係があると思います。


政治は、持てる所から、持たない所へ富の分配をする事が先進民主国家では仕事のはずなのです。

ところが、現在の日本では、一部の者が富を独占してそれ手放そうとはしませんよね。


普通の国は、政治が、そのように富を独占させないようにするのですが。

現在の日本では、消費税のように、金持ちも、一般人も貧困者からも同じように取られたものが。

本当は、一般人や貧困者の所へ行くべきものが、金持ちの所へ行くような事をしているのですから。

とても平等とは、言えない事がおこなわれています。

これでは、人心も乱れて、国力を失い落ちていくのも無理はないと思いますよね。


芸術家やクリエイターは炭鉱のカナリア

監督などの芸術家やクリエイターは、社会から見れば不安定な存在である為に社会の動きに特に敏感なのです。

まるで、炭鉱で危険を知らせるカナリアのようなものなのです。


ですから映画「PLAN 75」は、「楢山節考」のような悲惨な時代へ現在の日本社会を逆戻りさせないための警鐘であると思います。

この映画を、老人だけの事と考えるのではなく、若者も未来の自分の事として捉えて考える必要があるでしょう。

何故かと言うと、だれでも嫌でも老人に成るのですから。


その時に、本当は生きたいのに生きられない社会ではなく。

生きたいと思う人は、誰に気がする事なく生きられるような社会にする為にいま一番必要な事は。

良質な政治家と政治を、選挙で選ぶと言う事だと思います。

それも、誰かに言われたからとかではなく自分自身でよく考えて投票すると言う事が大切だと思います。

まるで、一部の人間だけの理想郷を望み、他の大勢にとってはディストピアを望むような政治家たちではなく、真に誰にでも優しく真に美しい人たちが住む未来の日本の為に・・・。


アートメルヘンと創作の森

2022.7.7

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