久しぶりの更新である。何をしていたのか、夏の記憶がない。これという大きなトラブルもない日々を過ごしていたと思うのだが、だからこそ更新できなかったのかな。だって書くことないもん。せっせとつけていた体重管理のアプリも、8月の上旬でストップしている。一番痩せていた頃で、グラフは停止。だからいまも史上最高に痩せているといえる。いえる?

 さて、まずはお仕事の宣伝から。
 先月(もう先月⁉)発売の小説すばる10月号に、『しまちゃんとわたし』という短編を掲載させていただきました。夜中のサービスエリアで再会したのは、かつてわたしが神様にした女の子だった――。という感じです。
 今月15日からは、祥伝社様のWEB雑誌『コフレ』にて、『ガゼボの晩』というお話の連載が始まりました。全三話の予定です。『コフレ』は無料で読めますので、ぜひ! 無料で読めていいの? と驚くような作家様がたくさんいらっしゃる素敵な雑誌です。わたしはいま彩瀬まるさんの『かなしい食べ物』を読んでいます。おすすめ!
 

 さて、本題。夫が家からよく消える。気付けばいなくなっていて、家の中にいない。そして、しばらく姿を見せない。そんなときは、必ずと言っていいほど庭にいる。我が家は野菜とハーブを育てていて、夫はその手入れに余念がないのだ。夫とわたしはパクチーが好きで、食卓にパクチーがのぼるのもしょっちゅうだ。なのでパクチーをメインに植えているのだけれど、これがなかなか根ついてくれない。夫はいつも試行錯誤しているが、頑固に枯れる。頑固に枯れるってなんだ。でも、頑固に枯れるのだ。
 苗を買うくらいならスーパーで買った方が効率がいいのではないかとも思われるかもしれないが、店頭でパクチーに遭遇する機会がとにかく少ない。なにしろ、苗を見かける率の方が高いのだ。ど田舎に住んでいるがゆえだろうか。都会には、パクチー難民はいないのだろうか。
 パクチー以外にも、パセリやバジル、ミニトマトに葱、セロリなどいろいろある。パセリなどは驚くほどすくすく育ち、さながら小さな森のように茂っていた。しかし先月、キアゲハの幼虫が大挙して押し寄せて一晩で禿げた。軽く三十匹はいた。蠢く幼虫群にどんびきするわたし。やだなに怖いと調べてみると、キアゲハの幼虫の大好物であるらしいと分かった。
 パセリをあっという間に食いつくした彼らは、次の餌場へ移動しようと右往左往し始めた。アスファルトの上で干からびる者、道路に迷い出て轢死した者がどんどん増えていく。自宅前の道路は大変な惨状になった。キアゲハ界の悪夢だ。
 近くにパセリが育っている場所があればまだいい。新天地への犠牲は付き物だと思える。しかし、あいにくそんな家庭はなかった。せめて全滅は避けようと、夫がパセリを購入して生き残りたちに差し出したけれど、何が嫌なのか全然食べてくれない。轢死か飢え死にという道しかないくせに、食わず嫌いすんじゃねえ。農薬とかついていたのかしらねえ、と言いながら、残ったパセリはわたしが食べた。美味しかった。
 全滅かと思われたキアゲハたちだけれど、それから数日後に庭先でキアゲハが数羽舞っていた。あの悪夢の生き残りがいたらしい。やあ、よかったねえとふわふわ舞う姿を眺めた。
 さて、どうして庭という話を今回したかというと、先日インタビューを受けた際にマイブームを訊かれ、『家庭菜園でパクチーを育てることですね』と答えたのだ。いい御趣味ですねと言われ、その時は、そうでしょうそうでしょうと気持ちよく会話をしたのだが、家に帰ってみるとどうも居心地が悪い。よくよく考えてみると、夫の手柄を横取りしているような気がしなくもない。まさかそんなと文章に起こしてみたのだが、客観的に書けば書くほど、わたしは何もしていない。え、まじで? していない? でも、夫が作業している横でミニトマトをつまみ食いしていることとか、庭いじりはいいからちょっとわたしの話を聞いてよと暴れたこととか、そんな記憶ばかりが蘇ってくるのだ。まさかそんな。でも、覆しようのない事実なのだった。
 家庭菜園の邪魔をする、というのが多分本当のわたしのマイブームだと思う。嘘をついて、すみませんでした。

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