社会戦士の冒険

いつもの日常。
軽く寝坊して急いで家を出る。
駅で定期券を見せて、いつもの電車に飛び乗って。
いつもの駅で降りて歩いて目的の場所へ向かう。
田舎の電車といえど、ラッシュ時は座れないものだが、今日は運良く座ることができた。
私は音楽プレーヤーからお気に入りのアルバムを出し、外を眺めながら目的の場所へ向かう。

だが、今日は違う。
なぜだろう。
頭がボーッとする。

いつも見たことのあるような風景が外に流れている。
綺麗な田畑に、風が流れて海のようだ。
だが、なにかが違う。
どうしてだろうか。

何事も眠気のためだろう。
音楽を止めてイヤホンをそのままに。
しかし、どことない不安感。
回りの人間も普段と変わらない。
スーツ姿に制服姿。
電車内の吊り広告には週刊紙の広告がぶら下がっている。
いつも見ている光景。
何も変わりはないはずだ。

まあ、いい。
数駅の間だ。
寝坊しただけあって私は眠い。
電車に乗れてさらに座れたことの安堵感もある。
眠気でボーッとしていつもの風景もそうは思えないのだろう。

ーーー本当に寝てしまった。
あぶない、あぶない。
もう、数駅分来てしまった。
急いで電車を飛び降りる。

いつもの光景だ。
私は改札に向かう。
急いで向かわねば。

そこでふと呼び止められた。

「お客さん。」

なんだ。呼び止められるなんて。
なにか落としたか?定期券の有効期限もまだ、残っている。
呼び止められる理由はないはずだが。

「お客さん!!」

なんだ。
俺は悪いことはしていないぞ。
多くの乗客が側を過ぎる。

「お客さん。お客さん!!終点ですよー!」

なんと。夢だったのか。寝過ごしてしまった。
終点というとなに駅だろうか。
車掌に起こしてくれた礼を言い、電車を降りる。

駅名をみて、私のこれまでの不安感、違和感の正体を知った。

「逆だ。」

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