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解剖研修日記⑧

こんにちは!滋賀、大阪ボイストレーナーの安田結衣です。

解剖研修4日目の日記です。
私の興味や視点での気付きや学びをシェアした日記です。解剖研修についてのご理解があり、声と身体の繋がりついて真摯に学ばれたい方以外の閲覧はご遠慮ください。もし文章中に気になる点やご指摘があれば真摯に受け止める所存ですので、お手数をおかけしますがご指摘いただけると幸いです。

今日のトムの講義は脂肪について。脂肪は人の身体を治癒する役割があるという。そして柔らかいジェル状の塊なので、どんな場所にでも形を変えていく事が出来る。KENの頸動脈がある場所には細かい場所にまでびっしりと脂肪がついていた。内臓を取り出す時に一番表に見えるのが大網というお腹のカーテンの様なものだが、驚くべきことにこの大網が内臓に問題が生じた時に移動して保護してくれるそうだ。「大網には筋肉がないのに不思議だね」とトム。脂肪も内臓も生きた細胞だという事がわかる。

あと赤ちゃんから成長過程でどの様に筋肉が発達してくるかというお話が面白かった。
赤ちゃんは最初消化器の感覚に集中していて、そこのみで生きている。そしていくうちに段々と目の方が発達していき、見たものに向かおうとしたり引き寄せようとする事で寝返りやハイハイができる様になるそうだ。
この辺りは消化器から人が作られるという話にも似ている気がする。
消化器の話でいうと、人によって内臓が緑色に変色してうまく機能していない人もいた。内臓がしっかり動いてくれることは呼吸にも関わりが深い。歌うときのブレスとしてのイメージが多い横隔膜だが、これが内臓と心臓をマッサージしてくれるという表現もしていた。横隔膜の下には肝臓と胃が、上には心臓がつながっている。人は呼吸を1日に約1万7000回している。その全てで内臓が上下に動いているのだという。「内臓が上下」という言葉だと誤解されてしまいそうだが、実際の横隔膜は硬くつながっている場所と柔らかく広がる場所があって、厳密には上下ではない。硬い場所は肝臓と胃の上部と背骨の付着部で、肝臓の上から横隔膜を触ると心臓の位置辺りで硬さを感じた。腱中心と言われる硬い組織が集まっており、ここは動かすことはできない。
肺は自分で空気を入れる事ができないので、硬い付着部を土台として肋骨が下に広がることにより空気が入ってくる。その肋骨を広げているのは胸の筋肉や首の筋肉や首の筋肉である。最初は内臓を動かすなんて恐ろしいと思っていたが、横隔膜は計算された作りになっているので内臓を痛めることなくマッサージとして動かすことが出来る。

次はうつ伏せ状態になってもらい肩甲骨・腰方形筋の動きを観察した。
背中の皮膚は頭を支えるのにとても分厚い組織になっていた。筋肉は多層になっており、頭と腕と肋骨を腰と背中など全身の動きを作っている場所でもある。背中側で私が気になっているのは
・良い姿勢とは?
・肩甲骨の可動域はどこまでか
・生徒さんの声が出し易くなった姿勢の原因
・マイクを持っている時の呼吸のし辛さはなぜか
などだ。
まず良い姿勢について評価するときに気をつけたいのは、良い姿勢は一つではないことだ。身体を一つに固定してしまうよりも、状況に合わせて動かしながら歌うことで、声のエネルギーを生むからである。ただその働かせる場所というのを勘違いしてしまうと無駄な力みとなってしまう。筋肉の働きを見るときには分厚さと繊維の硬さなどにも注目していこうと思う。

まずは肩甲骨について。肩甲骨は肋骨という丸みのある骨に滑るようにして動く。実際に肩甲骨の間に手を入れ込んで様々な方向に腕を動かしてみると単縦な水平垂直の動きではなく、円錐に沿った前後上下の動きになっているのがよく分かる。
その肩甲骨を動かしている筋肉の中で私が特に注目したのは大菱形筋・小菱形筋である。この筋肉が働くとオードリーの春日ポーズのようになる(伝わるかな?)胸を張った良い姿勢の見本のようなものだが、使いすぎると呼吸がしづらくなってしまう。ただ猫背の人はここを使ってあげた方が声のボリュームが増える場合もある。
マイクを持つ姿勢だと肩甲骨の位置を確認して持つようにすると歌いたい声にあった腕の振る舞いができるようになる。
次は腹筋群の働きについて。腹斜筋については解剖経験者から情報は入っていたが本当に薄かった。質感もペラペラで生ハムのような感じ。ここで声を支えられるとは考えにくい。腹直筋には厚みを感じたので、息を吐くのには少なからず使われているのだろう。それよりも驚いたのが腰方形筋の頑丈さである。腰方形筋は背中側の壁を作っている筋肉で、くしゃみをする時に一気に収縮する。筋肉自体はとても小さく薄いのだがかなり丈夫で、空気を勢いよく吐く力を十分持ちうる。また声の支えなどと言われるのもここじゃないかと推測する。息を吐くこと=胸式呼吸や腹式呼吸など肋骨やお腹の動かし方だと思っている人は多いかもしれないが、肋骨を動かすことができる筋肉は背中や骨盤にもつながりを持っている。座った時と立った時で息の吐き方が変わるのはそのためか。

今日は呼吸の謎についてかなりはっきり見えてきた。
明日はいよいよ最終日。後ろから咽頭・喉頭・口腔のつながりを見られる。

世界中で何人がこの光景を生で見たことがあるだろうか。胸が高鳴る。これを見るために来たと言っても過言ではない。
最後までしっかりと身体のつながりを目に焼き付けようと思う。


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