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解剖研修日記⑦

こんにちは!滋賀・大阪ボイストレーナーの安田結衣です。
解剖研修3日目の日記です。私の興味や視点での気付きや学びをシェアした日記です。解剖研修についてのご理解があり、声と身体の繋がりついて真摯に学ばれたい方以外の閲覧はご遠慮ください。もし文章中に気になる点やご指摘があれば真摯に受け止める所存ですので、お手数をおかけしますがご指摘いただけると幸いです。

今日は実習前にボルダーから日本に向けたfacebookライブを行った。
家族や音楽家の皆さんに見てもらえている事で、また一つ御献体に向かい合う勇気が湧いた。

今日のトムの講義は筋膜。筋膜とは筋肉という一つ一つの玉ねぎ同士を繋ぎ止めているネットのようなものだ。そのネットはゆるいテンションには対応できるが、同じ姿勢を続けたり、皮膚の繊維とは違う方向に動かそうとしても筋膜の間がうまく滑る事ができずにロックがかかったようになる。そんな筋膜が爪先から頭まであり、その中にある筋肉同士の間の筋膜を切り離す作業が今回のメインテーマである。

今回はメスで筋膜を外していく事を課題としているが、元々は切り離されたものではなく一緒のものだという視点をまた強調していた。
その筋膜の繋がりが強い場所をまとめたのがアナトミートレインズである。
ステーキでいう白い筋のようなものを筋膜として考えてもらうと分かりやすいかもしれない。その繊維の方向に沿った7つのグループをボイストレーニングに生かす事で、生徒さんの姿勢のエラーが解決できる様になる。早速アナトミートレインズのポスターを買ったのでレッスンで使っていこうと思う。

3日目の自分のテーマは
・吸気のしやすい姿勢
・大胸筋と三角筋を切開
・上腕と肋骨の動きの関係性
・頚部前方の筋肉の間を切ると外喉頭筋動きやすさどうなるか
・甲状軟骨と舌骨の動きの個体差
・胸鎖乳突筋の役割
・甲状軟骨が倒れる方向
など知りたい場所がたくさん増えていた。
皮膚や脂肪を取る時の緊張感とは違う、期待感があった。

吸気の姿勢については2日目にやっておくべきだったと反省した。目の前の御献体を動かして色々やっていくうちに抜けてしまっていたのだ。3日目になるともう肋間筋や大胸筋の動きなどのしなやかさは失われており、生の動きがわからない様になっていた。
トムに話しかける。「自分の体感的には反り腰の方が息を吐きやすく、猫背にする方が息を吸いやすく感じるんです。」するとトムは「小胸筋と内腹斜筋とをマッサージしてあげようか?一般的には猫背は何かを吐き出し、反り腰は何かを取り入れようとする動きだがら、うまく動かせる様になると反り腰の姿勢の方が吸いやすくなると思うよ。」と言った。
ヨガインストラクターの方曰く、日本人は内向的な傾向から猫背の方が息を吸いやすい人も多い様だ。また反り腰の人はおしゃべり傾向があるとも言われた。トムは猫背より胸を張った姿勢派だったが、自分や他の音楽家の意見では同じく猫背の方が息を吸いやすいという。楽器の中にはフルートの様に猫背を作らざるを得ない楽器もある。一般的な姿勢とは?という疑問がこの日は1日中抜けなかった。
大胸筋と三角筋はひねる様な形でつながっている。上腕を様々な角度で動かして見る事で息の吐きやすさ吸いやすさに繋がる。私のトレーニングでもよく腕を使ってもらうのだが、その裏付けともなりそうだ。

頚部前方の筋膜を切ると甲状軟骨が隙間から見えてきた。より深層までメスを入れることで甲状軟骨や舌骨、甲状軟骨のお辞儀の動きも自由になった御献体が多かった。自由に動けることがいいと考えやすいが、ある程度の土台があってこそパフォーマンスは発揮される。
また筋膜や脂肪がなくなってしまうと、筋肉が外からの衝撃に耐える事ができなくなり切れてしまうなどよくない事もある。胸鎖乳突筋の下には頚動脈など命に関わる循環器系があるのでたくさんの脂肪に覆われていた。
そしてイメージ以上に筋肉が細かく複雑なレイヤーを目の前にしてメスを入れるのが怖くなり、足を引っ張ってばかりな自分にまた悔しさがこみ上げる。そして人差し指1本ほどの筋腹しかなくレイヤーも複雑なものを、ボイストレーニングで操作しようとしているのか私たちは。繋がりで教えるか独立させて教えるか、それらの議論にはまだまだ課題があると感じた。

KENの喉を見た後は他の御献体の甲状軟骨や舌骨、胸鎖乳突筋などを見て回った。女性はほとんどがやせ細っている方だったが、一人男性と同じくらいの甲状軟骨を持つ女性がいた。輪状軟骨を押さえてもらい甲状軟骨のお辞儀の方向を確かめる。前にお辞儀をして音程調整するのが一般的に考えられているが、あるメゾットでは後ろにお辞儀させる声があるという。早速やって見ると後ろにもお辞儀できたかな…?という感じ。指の重さで押しているだけなので、筋肉の動きでは前のお辞儀しかしないかも。
トムにも聞いてみたが「甲状軟骨を後ろに倒すのは解剖学的には考えられないが、そうゆうイメージを使った指導なのでは?」という事だった。喉頭を後ろから見る機会を作ってくださるので、その時に甲状軟骨の後ろにつながっている筋肉も動かしてみよう。


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