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安心感×成長実感でエンゲージメント・ドリブンな組織をつくる

※本記事は、2018年3月に書かれた↓の記事のリライトになります


こんにちは!ランサーズの曽根(@hsonetty)です。今週は「経営・組織」編の第3回になります。

今回のテーマは、最近つとに考えることの多くなった=ぼくの中でアツいテーマである「エンゲージメント」になります。毎度ながら、今回もお付き合いどうぞよろしく!


1. 共感による「エンゲージメント」の時代へ


最近、「エンゲージメント」という言葉を聞く機会が増えてきているように思います。

たとえばよく聞くのは、メディアの分野において。特にSNSの世界においては、運営側とユーザーとの間での共感度やつながりを測る指標としてエンゲージメント率が重要視されています。

具体的には、エンゲージメント率とは投稿に対するユーザーの何かしらの反応(いいね!やシェアやコメントやフォローやリツイートなど)を示した割合を示す数値であり、企業やブランドがどれだけユーザーに愛着を示しているかをあらわすと言われています。


あらためて、なぜ「エンゲージメント」なのか。

シンプルにいうと、スマホが普及し、大量の情報があふれる時代になり、量より質が求められるようになった。その中で、質を測る指標としてエンゲージメントが重要視されるようになってきた、ということだと思います。

個人的にHouzzというメディアがとても好きなのですが、万人受けする汎用的なメディアではなく、特定のコミュニティ(Houzzでいえば建築やインテリア好き)でとことんハマるコンテンツを流通させて、単に情報を得るためでなくモノやサービスの購入までして促すようなメディアって良いな、と。

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メディアにおいてコンテンツが重要と言われるようになってきて久しいですが、今後、単純なPVやUUやクリック数などの量的な指標以上に、コンテンツの読了率やシェア数や滞在時間やコンバージョンなどといった質的なエンゲージメントの指標の重要性がますます高まっていくと思います。

ここまで、メディアの質を測る指標という文脈で「エンゲージメント」の話をしてきましたが、メディアに限らず、「エンゲージメント」は今の時代において、あらゆる視点で自然な考え方になってきていると思います。

たとえば社会であれば、『お金2.0―新しい経済のルールと生き方』の中で提唱されているような「価値主義」(共感や好意といった内面的な価値の可視化と流通による評価・信用経済の構築)。

あるいは個人であれば、博報堂生活総合研究所によって提唱されているような「トキ消費」(所有すること=HAVEが大事な「モノ消費」から体験すること=DOが大事な「コト消費」、そして今度はそこにいること=BEが大事な「トキ消費」へ)。

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こうした時代の価値観と同調するような形で、すでに何度か本ブログにおいても紹介しているように、現代の「乾けない」世代にとっては、一人ひとりのエンゲージメント=没頭は重要な幸福要素の一つになります。

ということで、これらもふまえたうえで、組織におけるエンゲージメントの重要性とその活かし方について、次から見ていきたいと思います。


2. エンゲージメント指標で組織施策のPDCAをまわす


「モチベーションエンジニアリング」をキーコンセプトに事業展開されているリンク&モチベーション社によれば、「従業員エンゲージメント」とは、企業と従業員の相互理解や相思相愛、ひらたくいうと「会社への愛着や仕事への情熱の度合い」であるとのことです。

商品の魅力をユーザーに訴求するためのマーケティングの4P(Product=商品、Price=価格、Place=チャネル、Promotion=プロモーション)があるように、企業の魅力を従業員に訴求するためのエンゲージメントにも4P(Philosophy=理念・目的、Profession=仕事・事業、People=人材・風土、Privilege=特権・制度)というフレームワークがあります。

ぼく自身もキャリアの選択基準を「ビジョン>仲間>仕事>報酬」と決めて久しいのですが、この優先順位はまさにPhilosophy(ビジョン)>People(仲間)>Profession(仕事)>Privilege(報酬)というこの4Pにあてはまっているというのに最近気づきました。

こうした社内における従業員のエンゲージメントは、定性的に重要なのはわかるのですが、なかなか定量的にはわかりづらい。

そこで、弊社でも、リンク&モチベーション社の「エンゲージメントスコア」を測るための組織診断を実施したり、EmotionTech社の「eNPS」という従業員ロイヤルティを数値化する指標を導入したりしています。(※eNPS=employee Net Promoter Score)

「従業員エンゲージメント」というと、「従業員満足度」と同様のものにとらえられがちですが、これらは似て非なるものです。前者が会社に対する愛着心を示すのに対して、後者は働くうえでの居心地の良さを示しており、必ずしも組織成果に直結するとは限りません。

一方でeNPSのようなこの従業員エンゲージメントは、(居心地の良さではなく)従業員の情熱をもった仕事への「コミット」や会社の「自分ごと化」につながる指標であり、それが顧客に向き合った優れたサービスを生み出し、結果として業績や成果につながる好循環をつくりだします。

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もうひとつ、最近とても興味深く感じたエンゲージメント指標の例をひとつ紹介します。アドテクを中心としたさまざまなサービスを手掛けるFringe81さんの提供するUniposというサービスです。

先述の『お金2.0』でも言及されている「価値主義」においては、「共感」や「感謝」などがお金などの資本に変換される前の価値として重要視されているわけですが、Uniposは、社内における社員同士の感情のデータ・関係性のデータを可視化し、それをボーナスに変えてしまおうというコンセプトのサービスです。

世界的にも、P2P(ピア・ツー・ピア=個人間)で感謝を伝える「Achievers」や、360度評価を活用した「Bonusly」など、組織内において社員同士が称賛しあう「ソーシャル・レコグニション」といわれる取り組みを促すサービスがどんどん登場してきています。

表彰や昇格・昇給といった施策に加えて新しいモチベーションアップの手法として注目される「ソーシャル・レコグニション」。平たくいえば、社員同士で褒めあい、称えあう行為をうながし、これを組織内のボトムアップでのエンゲージメント指標として図る。

ちなみにUniposではサービスインから7か月で、導入企業によるメッセージが12万回、拍手が130万回も送られているそうです。(※追記:現在、ランサーズ 社内でも、社員間の感謝の気持ちをスタンプで送り合うアプリを自社開発して運用しています)

まずは、組織における従業員のエンゲージメントを高めるために、こうしたエンゲージメントを測るモノサシを用意し、PDCAを回す準備を整えることが必要かと思います。


3. カルチャーで関係の質を上げ、感情をハックする


では、モノサシも用意したうえで、実際にどうやってエンゲージメントを高めていけばよいのか?

これについては、100%の解はありませんが、ランサーズでは、前回の記事でも紹介したカルチャーの形成がカギになると考え、信頼・安心感⇒成長実感⇒才能開花⇒信頼・安心感というサイクルをつくり、関係の質を上げていくことを目指しています。

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上記のようなサイクルをつくるうえで、1on1のフィードバックなど日々の業務の中に仕組みをつくっていくことはもちろん重要ですが、一方で、象徴的かつ非日常的なイベントとして、「合宿」をうまく活用するのも一つの手です。

ランサーズは徹底的な合宿文化をもっていて、創業以来毎年、全社員が参加する合宿を実施しています。全社の合宿は、自分たちのカルチャーをつくる重要な儀式になっていて、それが経営陣の合宿や部門ごとの合宿にも色濃く反映されます。

ちなみに昨年のランサーズの全社合宿=Lancers Camp 2017のテーマは「熱狂」でした。詳細は↓のレポートに書かれているので割愛しますが、手前味噌ながらこれが本当によくできています笑。

四半期〜半年に一度行っている経営合宿も、毎回およそ27時間のパッケージなのですが、これがまたよく設計されているので紹介させていただきます。

設計の思想は、「今」ではなく「未来」の成長に向けて徹底議論する姿勢。

設計の本質は、「感情」をハックし、「本音」を引き出すためのプロセス。

金曜の10:30に渋谷を出発し、ランサーズゆかりの地(Soul Place)である鎌倉に12:00に到着。そこから土曜の15:00に解散するまでの27時間の時間の流れと感情の起伏。

大まかにいうと、以下のような流れです。

▼金曜昼~夕方:アイスブレイクで参加者がそれぞれ自己開示(自分史、ストレングスファインダー、チェックインなど)をしたあと、事前に用意したテーマに沿って、真剣に事業や組織などについて議論する【起:表のForming】
▼金曜夜~深夜:おいしい料理を食べたあと、場末のバーやスナック(※場末であることはとても重要)で飲み&歌いあかし、最後は深夜にゆかりの中華料理屋でしめる【承:裏のForming】
▼土曜朝~昼間:疲れた状態で前日の論点をつぶすと、前日の飲みで参加者間での遠慮がなくなっているせいもあり、どんどん本音が出始める。お互いがぶつかりあうので、少しだけ衝突が起きる【転:Storming】
▼土曜昼~午後:一回小休止をはさんで流れを変え(※ここは重要)、最後の1時間で一気にまとめに行く。すべてまとまったらノーサイドとして、開放感のあるカフェで24時間を振り返りつつ、最後のランチを飲みながらまったり過ごす【結:Norming⇒合宿後のPerformingへ】

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ぼく自身もすでにこの経営合宿を3年の間に6回経験して、毎回新しい参加者が加わっていく中で、このベストプラクティスがどんどん磨かれていくのを肌で感じます。

その本質は、冒頭に書いた通り、「感情」をハックし「本音」を引き出すプロセスにあるのですが、ひるがえって考えると、Forming⇒Storming(という名の衝突)⇒Normingという、通常であればかなりの期間をかけて行うチームの進化を、27時間に凝縮させている濃いパッケージなんだな、と。

エンゲージメントと少しずれるかもしれませんが、ぜひみなさんも、日々の業務における仕組みとあわせて、こうした合宿のような非日常的なイベントも活用して、組織における従業員のエンゲージメントを飛躍的に高めていっていただければと思います。


今回のポイント


というわけで今回のまとめです。

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エンゲージメントの向上においては安心感と成長実感がキーワードではないか、という仮説を立てて進めていくうえで、安心感はオカンで、成長実感はオトンみたいなものなのかな、と考え始めています。わかりにくいか。もう少しくだいていうと、安心感はソフトで、成長実感はハードみたいな形かと。

まだまだ実験途中でこの仮説があたるかどうかはわかりませんし、ランサーズの組織も発展途上ですが、今のところすごく手ごたえを感じています。とりわけ、本文中で紹介した経営合宿の27時間パッケージなんかは、これまでのキャリアの中でいくつかの企業の経営陣の合宿を見てきた中でも、それなりにベストプラクティスなんじゃないか、とひそかに思っていたりします。このあたりはいろいろな方と情報交換してみたいですね。

というわけで、次回のテーマは「マネジメント」について。そしてその次の最終回のテーマは「意思決定」になります。最後の2回にふさわしく、自分がここ1-2年で最も失敗し、学ばせてもらったテーマたちをとりあげたいと思っていますので、引き続き最後までよろしくお願いします!

また、ここまで読んでくださった方で、まだフォローいただいていない方は、良ければぜひフォローしてください!


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