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知的生産性の上げ方ー時間の使い方を設計し、会議をプロデュースする

※本記事は、2017年11月に書かれた↓の記事のリライトになります


こんにちは。ランサーズの曽根(@hsonetty)です。「そねせん」シリーズの第10回目です。ビジネス・ノウハウ編の最後、そして20回連載予定の前半=基礎編の最終回になります。

今回は前半=基礎編の最終回で、生産性というテーマになっておりますが、あまりに膨大なテーマでもあるので、主に時間の使い方や会議のコツに焦点を絞りながら書いています。ぜひ皆さん、日々の仕事のシーンを思い浮かべながら読んでみてください。


1. 「お前のやってることの6割はムダだ!」


コンサル時代、毎日深夜帰り、くそほど忙しいプロジェクトチームにいたときのこと。

プロジェクトも終盤にさしかかったころに、深夜に突然あらわれた外国人のパートナー(えらい人)から「お前たちのやっている仕事の6割はムダだ!」と言われたことがあります。

最初の反応として、まずは衝撃=「!」。そのあと疑問=「?」が来て、そして最後に混乱=「?!」に至る。「この人は何を言っているんだ?!」と。

でも、プロジェクトが終わって自分の仕事を振り返ってみたら、実際に自分のアウトプットの7-8割は無駄であったことが分かったんです(自分が分析して作ったスライドの7-8割は単なるゴミスライドで最終的なアウトプットとしてまったく使われなかった)。

その原因の大部分は、第6回の「問題解決編」で書いた「犬の道」(=課題を見極めずに、ただひたすら作業をこなす)をたどっていたこと、前回(第9回)の「プロジェクト編」で書いたプロジェクトのゴール設定があいまいだったことでした。

あらためて、知的生産性をあげるためには、しっかりと明確なゴール設定をして、本質的な課題に時間を費やす、ということなんだな、と。

こう書くと、なんだか今回のテーマについては書ききってしまったな、という感じになりますね笑。

ひるがえって、「日本人の労働生産性が低い」と言われて久しいような気がしますし、働き方改革の文脈でよく生産性が話題になることが多いと思いますが、なぜなんでしょうか?

「労働生産性が低い」というのがすべての労働にあてはまるわけではなく、たとえば自動車生産工場におけるライン作業においては、トヨタウェイにも書かれているような”KAIZEN”や”KANBAN”などの日本発コンセプトが世界中に広まっていったことからもわかるように、むしろその生産性は称賛されてきました。

たとえば、3M(=ムリ・ムラ・ムダ)をなくすために、個別作業の「標準化」で誰でもできるようにし(notムリ)、個人を「多能工化」することでばらつきをなくす(notムラ)、プロセスの「平準化」で手待ち時間をなくす(notムダ)、というもの。

一方で、じゃあ日本人の労働生産性がどう低いの?と言われると、ホワイトカラーの生産性が低いといわれている(あるいは資本の生産性が低いといわれている)。冒頭に出てきた「お前たちのやっている仕事の6割は無駄だ!」の話も、デスクワークなどにおけるホワイトカラーの知的生産性が低い、ということです。

実際、昨今よく指摘されている長時間労働・残業の問題など、日本人の労働における生産性や柔軟性が他の先進国各国と比べて低いというデータ(あるいはROEなどの指標において日本企業の資本生産性が低いというデータ)をよく見ます。

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生産性とは、INPUTに対するOUTPUTの効率性のことを言うのだとすれば、仕事や労働においては、このINPUT=特に時間の使い方とOUTPUT=特に意思決定のあり方がとても重要。今回は前者の時間の使い方を中心に書いていきたいと思います。(※意思決定のあり方については、最後の経営・組織編にて。)


2. 時間の使い方を設計する


タイムマネジメントに関する著作はたくさんありますが、個人的には、仕事において時間の使い方を効率的にするための方法はとてもシンプルで、「時間の使い方を設計すること」。これにつきると思います。仕事に追われず、仕事を自分でコントロールできるようにすること。

自分が何の作業にどのくらい時間を使っているかを分析したことがある人、それを「時間の使い方の設計」にいかしたことがある人は実際、かなり少ないのではないでしょうか。

自分自身のことって、意外なほど分析しないものです。ダイエットをしよう!と思っていても、自分が何を食べてどのくらいカロリーをとっているのか、ほとんど分析したりしないのと同じです。

健康な食事をしているつもりでも実は摂取している栄養が偏っていたり、まじめに仕事をしているつもりでも実は自分がやらなくてもよい仕事や会議にばかり時間をとられていたり。

かくいう自分も、「なんだかずっと仕事に追われてる・・・」と感じて、半年くらい前に「あらためて自分の使い方を見直してみよう」と思い立ち、2週間くらい分の自分の時間の使い方を分析してみました。

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ぼくの場合は、仕事を「会議 or 業務」、会議を「社内 or 社外」、業務を「集中 or 作業」、にわけて整理しています。

この中で、ぼくにとってもっとも生産性が高いのは「集中」の時間です。緊急ではないがとても重要なこと(例:中長期の戦略)について考え、アウトプットする時間として使っています。

ラーニングカーブならぬ集中カーブではないですが、30分とかの集中時間はあまり意味を持ちません。最低でも1時間、できれば1時間30分あると、集中した時間のアウトプットの生産性はすごく高まります。

ぼくはだいたい平均的に週に50時間くらい仕事をしているのですが、そのうちの約15時間(=約3割)はこの「集中」時間に使えるように設計を考えています。1日でいうとだいたい3時間。

そのために、出なくてよい会議は出ない、会議の時間はできるだけまとめる(cf. ドラッカーも「まとめて時間をとる」ことの重要性を強調していますね)、空いたすきま時間は細切れの作業にあてる、などの工夫をして集中の時間を切り出すようにしています。

上記の考え方をベースとして、1日の朝の始まりのタイミングで、その日のスケジュール表に、自分の時間の使い方を設計・デザインして書き込んでしまう。

「いや、いきなり設計といわれても・・・」という人に向けて、ちょっとしたコツ。それは、自分が「仕事や時間の使い方を設計しなければ」と思わせるような「仕掛け=制約条件」をつくること。いくつかあげると、以下のようなものです。

▼ToDoリストをつくらない。ToDoリストには所要時間といつやるかがセットでないと意味がありません。皆さんも経験あるかもしれませんが、海外の研究でも指摘されているように、その日のうちにやると決めたToDoリストのうち、4割は実際には実行されることはありません。
▼積極的に時間の制限をつくる。同じ「xxまで」についても、”Until”ではなく”By”の意識を持つ。これによって圧倒的に生産性は変わる。たとえば残業一つとっても、単になんとなく「残業を減らす」というのではなく、「定時に業務を追えたらご褒美」というようなルールを設定することで意識を変え、効率性をあげる
▼仕事の要件を切り出してみる。何の仕事にどれだけの時間がかかるのか。仕事を要件定義・ブレークダウンして自分の作業スピードを測り、所要時間を計算する。たとえばこの「そねせん」ブログは4つの作業工程にわかれていて、毎週約5時間かけて書いています。


たとえば最後の「仕事の要件定義・切り出し」でいうと、ランサーズのクライアントでもあるガイアックスさんの事例はとても興味深いです。

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ガイアックスでは、クラウドソーシングを使って仕事を外部に発注するための(上限ではなく)下限の予算を設定しています。つまり、月に何時間分以上、いくら以上、自分の仕事を外注しなさい、というルール。

たとえば自分の仕事の2割を「外注しなければならない」となると、自分がどんな作業をしているのか?どの作業が外にも頼むことができるのか?それはどういう要件・プロセスで行われているか?その作業はどのくらいの時間がかかりいくらで発注できるのか?などを意識するようになります。

これにより、劇的に自分自身の仕事の整理がされて、使える時間が空いていく。今度は空いた時間を学びなどの自己投資の時間や顧客に向き合う時間として使う。ガイアックスさんはそういうルールを決めています。これによって2年で売上が5倍に伸びたそうです。

ぜひみなさんも、上記のようなコツを参考にしていただきつつ、スケジュール表などを使って、「時間の使い方の設計」を意識してみてください。


3. 会議をプロデュースする


仕事の生産性をあげるうえで、もう一つ。会議の生産性について。

一人での業務の生産性が、「時間の使い方の設計」でほぼほぼ決まる一方で、会議の生産性をあげるためには、会議前・中・後でそれぞれ気を付けるべきコツ(tips)を意識しながら、会議を「プロデュース」する必要があると思っています。

▼会議前:アジェンダの明確化と時間・参加者の絞り込み
▼会議中:目的にあわせたルールの共有と進行の時間管理
▼会議後:即時での決定事項とネクストアクションの展開

▼まずは会議前のtipsから。おそらくこれが最も重要。

会議の基本のキは、その目的とアジェンダを明確にすることです。会議の目的はたいてい、情報共有、問題解決、意思決定、アイデア出し、あたりに集約されると思いますが、大事なのはその目的にあわせたアジェンダを明確にしておくこと。

良いアジェンダは「議題」ではなくその会議の「ゴール状況」をあらわすもの。「この会議の後、どういう状況になっていたらこの会議は成功?」と常に問いかける。

よくあるのは、「来年2月のカンファレンスについて」といったアジェンダ。これは議題。「来年2月のカンファレンスの集客目標を決める」であれば、「ああ、これは意思決定のミーティングなのね。そのための最低限の情報やアイデアを準備しておかないとダメね」という風になります。

同時に、時間や参加者をしっかりと選ぶ・絞り込むことも重要です。よくあるのは、「とりあえず1時間で」という形で会議を設定したり、「できれば参加しておいた方がよい」という人があれよあれよと参加者が増えたりするケース。

本当は5分や10分の会議で終わる会議を、「1時間の設定がされているから」という理由だけで引き延ばしてしまうことはよくありますし、「なんとなく参加している」人が多いことで当事者意識や空気感の薄まった会議になることはよくあります。

マッキンゼーに在籍していたとき、会議に参加して一言もしゃべらないと、「何のために会議に出席していたの?」と必ず言われました。

でも、時間あたりでクライアントにチャージしている以上、この会議に参加している10人×1時間で、xx万円の価値を出さなければいけない、という意識が当然働く。ランサーズでも、ブレストなどをやるときに「この会議、xx万円以上の価値を出そう」と最初に宣言してから会議を始めることはよくあります。

▼次に会議中のtipsについて。

まずは会議におけるルールの共有。たとえばランサーズの経営会議では、「批判ではなく提案を」というルールを徹底しています。誰かの意見に地位して単に批判をするのはNG。カウンターとしての提案を必ずセットでいうようにしています。批判をしている人がいたら、「提案に変えると?」という形で促すようにしています。

短い時間のアイデア出しであれば座らずに立ってやったり(=ハドル形式)、資料をつかわずにブレストする場合は椅子を並べかえて円型にしたりホワイトボードに向かって弓形に席を配置したりすることもあります。ルールとあわせて、議論がうまくすすむような場づくりは重要です。

時間の管理についても、目に見えるところに最低限時計がある、ホワイトボードにスケジュールを書いておくなど、細かいことですがそれだけでも格段に進行はスムーズにいくようになります。

▼最後に会議後のtipsです。

これはもう本当にシンプルですが、決定事項とネクストステップを必ず明確にする。しかもスピーディに。これをひたすら徹底する。

ぼくはがオーナーとして参加する会議では、会議の終了時、もしくは遅くとも会議終了後1時間以内に合意事項とネクストステップのメモを展開するようにしています。(※楽天においても、三木谷さんが参加する会議では終了後、数時間以内にこれを出すことが義務づけられていました)

最も参加者の意識が集中している会議の終了時に確認してしまうのが理想です。これがあまりに遅かったり、そもそも展開されなかったりすると、その次の会議のときに、「あれ?何を議論したんだっけ?」「あれ?そんなことオレ言ってたっけ?」と必ずなります。

以上、会議の生産性をあげるtipsを挙げてきましたが、どれも基本的なことばかり。でもこれらを徹底してやりきると、びっくりするくらいに会議の生産性はあがります。ぜひ皆さんも実践してみていただくとよいかと思います。


今回のポイント


というわけで今回のまとめです。

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最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。問題解決、プレゼン、ブレスト、プロマネと続いて最後は生産性。仕事をするうえでの基本になるようなテーマが続きましたが、自分自身でもあらためて、自分が大事にしてきたこと、大事にしていることを振り返る機会になりました。

次回は、基礎編という形で続いた働き方・キャリア編(全5回)とビジネス・ノウハウ編(全5回)を振り返り、総集編という形でお送りしたいと思います。その後は、応用編ということで事業・戦略編シリーズ第1回で戦略についておおいに語りたいと思います。

また、ここまで読んでくださった方で、まだフォローいただいていない方は、良ければぜひフォローしてください!


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