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『ドゥ・ザ・ライト・シング』日常に潜みし差別

『ドゥ・ザ・ライト・シング』 1989年
監督・製作・脚本:スパイク・リー
撮影:アーネスト・ディッカーソン
編集:バリー・アレクサンダー・ブラウン
音楽:ビル・リー
キャスト:スパイク・リー、ダニー・アイエロ、オジー・デイヴィス、ルビー・ディー、リチャード・エドソン、ジャンカルロ・エスポジート etc
上映時間:120min

あらすじ
黒人はもちろん、多様な人種が混じり合って暮らすニューヨークのブルックリン。イタリア系アメリカ人が経営するピザ屋でバイトするムーキーを中心にいつも通りの暑い日常が過ぎていくはずだったのだが、日常のところどころに潜む人種間の対立が、一日の終わりに大きなトラブルに発展してしまう。

人種問題の入り口に
もうすっかり報道されなくなってしまったが、少し前までアメリカではBLM運動が巨大なエネルギーを放っていた。
日本でもTwitterやInstagramでちらほらとBLM運動のハッシュタグをつけて、自分なりの主張を展開する人々がいた記憶がある。
そういう人たちの中には今になって人種問題の実態を知った人が多いようで(小生も別に大して知っているわけじゃないのだが)、ぜひ興味を持った人には映画で学んでほしいなあと思うのだが、その際に打ってつけの監督がスパイク・リーだ。
その中でも個人的に特に見やすい作品がこの『ドゥ・ザ・ライト・シング』かなと思っている。

映画の途中まで(90minくらいまで)は、これと言って大きな事件が起きるわけでもないのだが、何か大きなハプニングに発展してしまいそうだなと思わせるようなピリピリした空気が時折流れる。
路上にたむろする黒人と白人警官がにらみ合ったり、イタリア系アメリカ人が経営するピザ屋に白人の写真が一つも飾られていないことに黒人が抗議したりと、日常に潜む人種間の問題が少しづつ露わになってくる。
中々日本ではそこまで露骨な人種問題が日常で垣間見えることは少ないから実感がわきにくいのが実情だが(ヘイトスピーチはたまにあるけれど)、おそらくアメリカではそういう風景が日常に溶け込んでいるのだろう。
なんせ黒人の家庭では、子供のころから警官には逆らうなとか、あまり街中で大きく振る舞うなとか、そういうことが教えられるらしい。
そうしなければ自分の命が危ないからだ。
映画では鬱積した日常的な対立がピークに達して大きな騒動にたまたま発展してしまった一日を物語にしているが、現実では何も起きずともストレスが溜まっていく日々が何日も過ぎた結果、何かが起こるのだろう。

現状ではどうしたって防げそうにもないが、スパイク・リーが最も伝えたかったであろう言葉、タイトルにもなっている「Do the right thing.」を胸に刻んで、生きていかなければならない。
もちろん人種問題は黒人と白人の間だけに横たわる問題ではない。
我々日本人だって、日本と韓国や中国との問題はあるし、難民に対しても厳しい姿勢を取りがちだ。
自分とは遠い位置にある問題を身近に引き寄せて考えられるのが映画だから、ぜひ一度観てみてほしい。

そんな金がありゃ映画館に映画を観に行って!