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【オープン社内報#49】京都雑感

こんにちは。株式会社ひらくの染谷拓郎です。

 今号も本来の締め切りをとうに過ぎてしまったので(毎回すいません!)、30分で書くという縛りをつけてできるところまで。先週木曜日、弾丸日帰りで京都と名古屋に行ってきて、いろいろ感じるところがあったので書いてみます。

・エースホテル京都

 始発に乗り9時前に京都に到着(早すぎ)。いつものイノダコーヒと思ったけど、初めてのところに行きたくてエースホテル京都のカフェへ。素晴らしい空間設計で、新旧の素材感の使い方がとてもよかった。柚木沙弥郎の染色布が象徴的な使われ方をしているなど、民藝文化を大切にしながら外国人観光客に対しても良いプレゼンテーションになる魅せ方。 

 館内にいるのはほぼ全員外国人で、その場にいることで刺激を受けられるという点では、日本人がエースホテルに”観光”しに行く、というのもあるんだろうな。BGMは様々な国からのプレイリストで、坂本慎太郎「ツバメの季節に」→ボブ・マーリー「ワン・ラブ」の流れが良かった。

・鈍考 

 そのあとは、幅允孝さんが手がける私設図書室/喫茶「鈍考」へ。業態やコンセプトはHPをご覧ください。https://donkou.jp/

 こちらも素晴らしい体験。90分がこんなにも長く感じるなんて。この場所に至るまでのアクセスが助走になり、本番としての90分が良い時間になった。助走・本番・余韻のバランスが素晴らしかった。

 ここに所蔵されている本はすべて幅さんの私物で、ふせんや書き込みも多数。いろんな本を手に取ったが、志賀直哉全集第六巻に所蔵されている「リズム」という項が良かった。一部抜粋。

リズムが弱いものは、いくら「うまく」できていても本当のものでないから下らない。

 いま千葉雅也「センスの哲学」を読んでいるのだが、この本の論旨は、センス=リズム」ということで、ちょうどこの文章に引っかかった。頭の中に考えかけをぷかぷかと浮かばせておくとこうしてそれぞれが勝手につながっていく。このつながりが多い時は調子が良いときで、それぞれが単発で死んでいく時は調子が悪い。

 堀部安嗣さん設計による建築も素晴らしかった。すぼまりとひろがりのバランス。手で触れたくなるディティール。

・三宅香帆さんにお会いする

 京都来訪の目的である三宅香帆さんとの面会。いま売れに売れている「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」の著者である三宅さん。ライツ社の高野さんがお繋ぎしてくれて、お会いさせていただくことになった。

 この本では、「情報=知りたいこと」「知識=ノイズ+知りたいこと」と定義され、明治以降の社会情勢を紐解きながら、情報としての読書ではなく知識としての読書がなぜ定着し得ないのかが丁寧に記されている。

 僕自身も知識としての読書にはなかなか時間が費やせない。そこで三宅さんは、一つのことに全身で打ち込むのではなく、半身で対処することが良いのではないかと提唱しているが、生活や事情など、すぐに半身化することが難しい人も多いと思う。

 先にあげた鈍考は「90分間の半身化」を提供してくれるサービスなのかもしれない。それは、普段忙しすぎて必要な本しか手に取れない僕であっても、志賀直哉全集を読めたことからも象徴している。

 ノイズを避けなければいけない状況が続くと、土がだんだん痩せていき、そんな土で育てる野菜はあまり美味しく育たない。ノイズを受け入れるための半身ができないならば、暫定的に半身化できる状況をセットすることでノイズを入れていきたい。

 鈍考に限らず、文喫だって映画館だって場と機会を定めて提供するサービスや事業は、基本「ノイズと半身化」をセットで提供しているのだと定義し直すと良さそうだ。この「ノイズと半身化」がわかっていなければ、いくら良いものを押し付けてもそれを受け入れてはもらえないだろう。そのことに気づけただけで、大収穫だった。三宅さん、ありがとうございます。

 ここまでで40分かかってしまった。次回は記念すべき?50号です。しっかり書きます。

 最後まで読んでいただきありがとうございます。今日もがんばりましょう。 

染谷

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今週の「うれしい」
休日に魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)に行ってきました。館内がピンクすぎて目がチカチカ。おばけのアッチのぬいぐるみを購入。読書に没頭する子どもたちがたくさんいてうれしくなりました。この子達にはたくさんのいいノイズを受け入れる余裕があるんだな。

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