超初心者ジャズ原稿 第1部

※スタッフ注
この文章は、SOMETHIN' Jazz Club owner Steveが2011年に執筆を始め、2017年からお店のサイト (https://www.somethinjazz.com/jp/) に掲載していたものです。

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1. はじめに

2000年7月7日に『マイルスカフェ』というジャズクラブをオープンしました (プリオープンは4月7日) 。
最初はジャムセッション主体のお店にする予定でしたが、セッションするミュージシャンが全く来ませんでした。
当時はジャズクラブでセッションすることは殆ど無く、せいぜい月に1回行われている程度でした。
止むを得ず、365日毎日ライブを行うジャズクラブに方針転換しましたが、私がトランペットを演奏するため、どうしてもセッションしたかったのです。
そこで、第一日曜日にジャムセッションを始めたら大当たりで、毎回満員になりました。
その後、日曜日も土曜日も月曜日も火曜日も金曜日もジャムセッションにしました。
セッションのレベルが凄く高いので、聴くだけの人も楽しむことができました。

ところが、セッションに参加したい人から「マイルスカフェは敷居が高いからなあ。」と言う声がありました。
そこで『初心者ジャズ』というジャズレッスンを始めたところ、毎回満員になったのです!
その後、初心者ジャズを増やしていきましたが、初心者ジャズのレベルも高くて参加できない人がいたので『超初心者ジャズ』を作りました。
これも非常に好評で毎回満員になりました。

しかし今度は、超初心者ジャズのレベルも高くて参加できない人も出てきたので、さらに『超超初心者ジャズ』を作り、おまけに『はじめてジャズ』も作りました。
はじめてジャズは、本当にはじめての人が参加するレベルのジャズレッスンです。
このシステムを始めて10年以上が経ちました。

レッスンの内容を文章に残すべきだと思い、この文章を書きました。
最初は先生のためのマニュアルとして書きましたが、生徒さんにも読んでもらった方が良さそうだと思いました。
ただ単にジャズを教えるだけではなく、人生を幸せにするための成功哲学も盛り込んでいます。
この超初心者ジャズ原稿は

「本当に幸せになってほしい。」
「豊かな人生を送ってほしい。」

というための内容です。

長くなりますが、自分でも涙が出そうなことも書いています。
皆様が幸せになっていただければと思います。

2. あいさつ

先生は生徒が入ってきたら「おはようございます。」と言って、笑顔で握手する。

2.1. 笑顔

一瞬にして人を引きつける力、それは笑顔です。
笑顔はコミュニケーションで一番重要です。

笑顔になると白い歯が見えますが、これがポイントです。
動物園の猿がお互いに「キーーー」と叫びながら歯をむき出しにする行為がルーツのようで、これは「あなたに好意があります。」という意味があるそうです。
テレビのCMや雑誌の写真で美しい女性の白い歯が見える笑顔があると、とても親近感が湧きますよね。

2.2. 握手

日本では握手をする習慣がありませんが、SOMETHIN' Jazz Clubはエレベータを降りると、そこはニューヨーク。「ハーイ、Steve!」と言って、握手をしましょう。
お店の設定がニューヨークなのです。

握手はスキンシップの効果があるとともに、握手した相手がパワーがある人か、ネガティブな人か、明るい人か、暗い人かなど、ある程度のことが分かります。

ちなみにSteveは「手が大きいですね!」とよく言われます。
これは文章では伝わらないので、お会いして握手をしましょうね。
今思えば、10年間もニューヨークにいる気分だったので、ニューヨークにお店を出したのもイマジネーションの力が働いたのだと思います。
創造力には不思議な力があります。

3. レッスン準備

3.1. ネームプレート

ネームプレートに「自分が呼んでもらいたい名前」と、夢や目標を書く。

3.1.1. 名前

ネームプレートに名前を書くことで、先生が生徒の名前を覚え易くなります。
忘れてもネームプレートの名前を見れば、名前を呼ぶことができます。
参加している他の人も名前を覚え易くなります。
気になる人の名前が分かり易くて良いと思います。

世の中で一番耳に心地良い言葉は何でしょうか?
「愛してます。」でしょうか?
「素敵ですね。」でしょうか?
答えは『自分の名前』です。
「さとる」、「さとるちゃん」、生まれてから毎日、毎日、数え切れないくらい呼ばれています。
ネームプレートに書く名前は『呼ばれたい名前』なのです。

3.1.2. 夢や目標を書く

これは人生において、非常に大切なことです。
毎日、毎日、特に何事もなく生活している人にとっては「夢や目標」と言われてもピンと来ないかもしれません。
楽器を演奏して、皆とジャズを合奏したいと思ってレッスンに参加する人は「何かやりたい!」という目標があります。

目標を書く場合、期限を決めることが一番重要。
「私は来年の誕生日までに初心者ジャズを卒業する。」というのが優等生の書き方です。
ここで「私は」と入れることも重要です。
「私は来年の誕生日までに初心者ジャズを卒業する。」という文章を何回も、何回も、声に出して読むのです。
そうすると、言葉が耳から入って潜在意識に蓄積されていきます。
潜在意識は繰り返しの反復に弱いのです。
「私は」と入れることにより、潜在意識は「誰が」ということをしっかり認識します。
潜在意識に入った情報は何日も掛けてそうなるように動き出し、その通りになるようにします。

潜在意識については、この後も説明していきます。

3.2. 支払い

受付でチャージとドリンクの支払いを済ませます。
レッスン料は前払いです。

1レッスン90分、2,200円です。
その内訳は、90分のレッスン料が1,100円です。
安いでしょ!
それに3ドリンクが1,100円です。
これも信じられないくらい安いでしょ!

以前はフリードリンクでした。
平和通りの入り口で、ちょっと太めの女性が毎日立っていて「60分3,000円で飲み放題!いかがですか~!?」と呼び込みをしていました。
そこでうちは「無制限1,000円で飲み放題!いかがですか~!?」とする予定でした (笑) 。
しかし、レッスンの内容は一人ひとりの演奏をよく聴いて最短距離で上達するために、あらゆることを出し惜しみせずに教えます。
2,200円頂いたら、3億円くらいの価値がある内容を教えます。
知らなければ一生そのまま演奏しているだろうことを考えると、もっと価値があると思います。

『与えて、与えて、与え切る。』
『GIVE AND GIVE AND GIVE』

これがモットーです。
一昔前は、ギブ・アンド・テイクと言うのが一般的でした。
与えたら貰う。
お金を出して、物やサービスを貰う。
それでおしまい。
ところが、成功哲学を勉強していくと『GIVE AND GIVE AND GIVE』、『与えて、与えて、与え切る。』ことを学びました。
そうすると、何倍にもなって返って来るのです!
成功している人たちは皆さんこれをやっています。

例えば、人の持っている物が欲しくなったとします。
その手段として考えられるのは

①欲しいということを伝える
「欲しいの?じゃあげる。」と言って、その場で貰えるかもしれない。
これはラッキー!
「言ってみるものですね~。」言葉を与えただけで貰ってしまった。
「ダーメ!あげない。」と断られる。
「そう。。。。」と、そのまま引き下がる。
これも自然の流れですね。
でも、これでは欲しいものが貰えない。
何も与えていないから貰えない。
そこで、あらゆる手段で貰うように行動する。
泣き落とし、脅し、ごますり、色気で迫るなどなど。
それが手に入るまで諦めない。
これも凄いです。
あらゆる行為を与えることで貰うことになるでしょう。

②交換条件を話し合う
物と引き替えに貰う。
お金と引き替えに貰う。

③黙って持って行く
何も与えないで貰ってしまう。
これって泥棒?
悪意が無くても、無断で人の物を持って行くというのは泥棒ですね。
これはとてもいけない。
何も与えないで貰おうとする。
面白くて分かり易い話があります。

パンチを食らわしてごらん、即座にパンチが帰ってくるよ。

4. レッスン開始。の前に

4.1. 自己紹介

全員が丸く並んで自己紹介をする。
名前と楽器、夢・目標を話す。

自己紹介は非常に楽しいです。
これから90分間、一緒のクラスで一緒に演奏するのですから、名前と楽器は知っておきたいですね。 
このとき感じるのが、SOMETHIN' Jazz Clubは出会いの場だということです。
ジャズを通してお友達を作るという出会いがあります。
同じクラスで毎週演奏するようになると話をする機会が増えますから、自然にお友達になります。
SOMETHIN' Jazz Clubで知り合って、仲良くなって、恋愛しているカップルは沢山居るようです。

2008年11月2日に、SOMETHIN' Jazz Clubで「あちき」と「ザマス」の結婚式がありました。
SOMETHIN' Jazz Clubで知り合ったので「結婚式は是非ここでやりたい。」とのことでした。
Steveは牧師をやって欲しいと頼まれたのでやりました、牧師を。
牧師の資格が無いので、人前結婚式と言う形をとりました。
その時に記念に貰った時計は毎日身に着けています。
ベルトは3代目だし、電池交換もしました。
「その時計良いですね!」と、しょっちゅう言われました。

4.1.1. テーマ

自己紹介の時に毎回違うテーマが与えられて、自分が思ってることを話します。 
テーマは基本的には夢・目標ですが、自分の好きなミュージシャンとか、好きな音楽なども多いです。
時々、好きな異性のタイプや好きな食べ物なども出てきます。
それで笑いとかが起こって緊張が解れます。
初心者の人の殆どが、もの凄く緊張して入ってきます。
それはそうですよね。
今までやったことの無いことをするのですから!

4.1.2. 参加回数をアンケート

参加してる回数をアンケートすると、初めて参加した人が安心するようです。
先生もそこに集まった生徒の慣れ具合が分かるので、レッスンを進め易くなります。

4.1.3. 参加理由をインタビュー

レッスンに参加することになったいきさつをアンケートするのも大切なことです。
インターネットで検索して、SOMETHIN' Jazz Clubを見つけて参加した。
友達に聞いて、インターネットで内容を確認して参加した。
この二つに分けられます。
レッスンを始めた当時は、インターネットで検索して参加した人が圧倒的に多かったです。
最近では、友達や楽器の先生がSOMETHIN' Jazz Clubを紹介してくれるパターンが多いです。

楽器を教える教室やミュージシャンは沢山居ますが、アンサンブルを教える教室は殆どありません。
それもはじめてから教えるところは、世界中にも殆ど無いようです。

4.2. 先生の自己紹介

これから教えてくれる先生の自己紹介もあります。
誰が教えてくれるかによって、説得力が変わるからです。
尊敬している人や一目置いている人のアドバイスは素直に身体に入ります。

後ほど説明しますが、教えるコツは

1. 言って聞かせる。
2. やってみせる。
3. やらせてみる。
4. 褒めてあげる。

これに尽きます。
褒める時は、その人の一番良いところを褒めます。

『良いところ、一点褒め』

です。
これは利きますよー。
「リズム感がとても良いです。」とか「フィーリングがとても良いです。」とか「ピアノのタッチが良いです。」などなど、沢山あります。
美人を褒める時は、決して「美人ですね。」とか「美しいですね。」とか言わないこと。
美人にとっては生まれた時から聞き慣れている言葉だから、反応しないのです。
他の男が絶対に褒めないようなところを見つけて褒める。
これは利きます!

4.3. モチベーションづけ

生徒に「何を目指して頑張るのか?」という目標を提示して、モチベーションをつける。

初心者ジャズを卒業するレベルになると、日本中のどこのセッションに行っても「上手いね!」と言われます。
また、その上のスーパージャムセッションに参加するレベルになったら、世界中のどのセッションでも一目置かれる演奏レベルになります。

または

一緒に参加している人とバンドを作って『HAPPY LIVE』に出演しましょう!

というのもモチベーションを上げるのに有効です。

5. レッスン開始

5.1. チーム決めと演奏の順番

参加人数にも依りますが、1クラス12人程度の場合、2バンドか3バンドを作って演奏します。

人の演奏を聴いたり、アドバイスを聞いたりすることは非常に大切です。
同じ楽器が3人以上居ると、お互いに影響し合って良い結果が得られます。
同じ楽器の人が居ないと沢山演奏できますが、影響を与えてくれる人が居ないという欠点があります。
音楽はできるだけ沢山の人に聴いて貰いたいものです。
多くの人に音楽を通じて、癒しや喜びや感動を与えたいものです。
できるだけ混んでいるレッスンやジャムセッションに参加することをお勧めします。

参加者が少ないと「ラッキー!いっぱいできる!」という生徒さんが時々いらっしゃいますが

「90分という時間の中で沢山演奏しても、上達には余り影響が無い。」というのがSteveの考えです。
予習や復習をみっちりやっている人が急速で上達します。
レッスンでは考え方を理解することに集中すると良いです。

レッスンの中でアドバイスした後に演奏して、劇的に演奏が良くなることがあります。
まるで奇蹟のようなことが起こります。
今まで良いと思っていた演奏を正しい演奏方法に変えるだけで、もの凄く良くなります。
思い込みというか、どこかで耳から入ったことが少し違っている場合が非常に多いです。

5.1.1. 思い込み

Steveは小学校2年生の時からプールで泳ぐのが好きで、夏休みは皆勤賞を貰えるくらいプールに行っていました。
誰に習う訳でもなく、見様見真似で泳いでいました。
7mを泳ぐのがやっとで、死に物狂いで泳いでいたのを思い出します。
その後も誰に習う訳でもなく泳いでいて、高校生の時に学年対抗の水泳大会に出場して、平泳ぎで優勝したのを覚えています。
中学生の時には体操競技で筋肉を鍛え、高校一年生の時には柔道部で筋肉を鍛えていたので泳ぎは速かったようです。
その後、サラリーマンの時に健康のためにプールに通うこともありましたが、ここでも習いませんでした。

2010年11月に1年間のニューヨーク生活から日本に戻ったのですが、体重が85キロを超えていました。
ニューヨークでの食事の量は日本の2倍あります。
お店が終わってから、深夜にそれを食べるのですから太りますよね。
帰国してから、これまた日本の食べ物が美味しいのなんのって!!
お腹が一杯でも美味しい物を見つけると食べていました。
85キロを超えると自動的に身体がアラームを出すのです。
もうやばいよ!
足の爪を切る時にお腹が邪魔で足に手が届かない。
届いても息ができないくらいにお腹を圧迫するので、苦しいのです。

そこで、一年発起して健康な身体を作るためにプールで泳ぐことに決め、池袋スポーツセンターに通いました。
2時間600円で、ジムとプールが利用できます。
初めは25mをクロールでノンブレスで死に物狂いで泳いでいました。
今考えると、これは無酸素運動なので脂肪は燃えない。。。。。
そこで、佐久間大地というインストラクターが居て、彼の教え方が良いと思ったので、レッスンを受けるようになりました。
毎週レッスンを受けて、見違えるように美しく速く泳げるようになりました。

その後、フィットネスクラブ「Tipness」に入会して毎日泳ぐようになっても、2週間に1度は大地コーチのレッスンを受けました。
個人メドレー100mに挑戦したくなってきました。
それにはバタフライと背泳ぎが必須になります。
背泳ぎとバタフライの基礎を習った次の日に、何となく背泳ぎもバタフライもできてしまいました。
バタフライなんて一生できないと思い込んでいました!

思い込みは不思議です。
65才になってバタフライができるようになるなんて、思いもよらなかった。
おまけに背泳ぎのスタートに使う「バサロキック」。
実はその名前も知らなかった。
上手な人がやっているのを見て「あれは難しいだろうな。鼻に水が入るよね。」と思い込んでいました。
人に聞いたら「『バサロキック』は難しいから相当訓練を積まなくちゃね。」と言われました。
でも、ちょっとやってみようかとやってみました。
おー!!できちゃった!!
バタフライもバサロキックもできちゃった。
これは嬉しかった。
できないと思い込んでいることは、まだ沢山あるような気がします。
でもやってみます。
できちゃうかもしれないから。

5.2. アドリブをとる順番

即興演奏をアドリブ、英語では「インプロビゼーション」と言います。
基本的に音楽を演奏する時は譜面があって、その通りに演奏します。
ジャズではまずテーマがあり、譜面の通りに演奏します (譜面の通りに弾かない時の方が多いですが)。
テーマが終わってから、一人ひとりアドリブをとっていきます。

一般的に、音の高い順番にアドリブをとります。
1. ボーカル
2. バイオリン
3. トランペット
4. アルトサックス
5. テナーサックス
6. トロンボーン
上記のフロントと呼ばれる、ステージの前に立って演奏する人達が終わったら、次はギターです。
ギターはフロントとリズムセクションの中間的な楽器です。
その後、ピアノ→ベース→ドラムと続きます。

同じ楽器の時はレディーファーストにしています。
これはSOMETHIN' Jazz Clubだけのルールです。

5.3. ブルースの重要性

ジャズに対して「ブルース」というジャンルがあります。

ブルースで演奏されるのは
・基本的に12小節
・コード進行がブルース進行
になっているものです。

それが進化してジャズの中で演奏されています。
基本的に12小節であることは変わりません。
コード進行が少し変わっています。

SOMETHIN' Jazz Clubでは、このブルースを徹底的に練習します。
コード進行の基本が含まれていること、コード進行が易しいので、リズム、スイング、グルーブなど、ジャズを演奏する基本を学ぶには非常に良いです。

はじめてジャズ、超超初心者ジャズでブルースを徹底的に練習することで「歌物 (コード進行のある曲の通称)」を演奏するための80%が出来上がるといっても過言ではありません。

5.4. 参加者のレベルに合った指導

SOMETHIN' Jazz Clubのレッスンは自由参加ですので、毎回参加メンバーが変わります。

そのクラスに参加している人の実力をチェックするために、1回目はお手並み拝見ということで、とにかく演奏してもらいます。

参加メンバーの実力が分かったら、2回目の演奏からアドバイスが始まります。
テンポ、スイング、グルーブなど、基本的なことを説明してから演奏してもらいます。

1回に1個のアドバイスが基本です。
人間は同時に2つのことができないのです。

あなたも経験があると思いますが、教えて貰ってそれをやってみる時に集中できるのは、1つのことだけですよね。
若い頃にゴルフをやっていたのですが、ゴルフのスイングは簡単な様で複雑です。
ゴルフのコーチはついつい熱が入って「ここでこういうテークバックをして、トップの位置はここで、そこからダウンスイングに入って・・・。」などなど、延々と教えてくれて「はい、やってごらんなさい。」。
たった1秒程度のスイングにこれだけのことをできる訳がありません。

SOMETHIN' Jazz Clubでは、先生がアドバイスが必要だなと思ったら曲の途中でストップを掛けます。
生徒さんには申し訳ないと思いますが、一旦止めます。
アドバイスのポイントはその場で指摘しないと、後からでは本人も先生も忘れてしまうからです。

5.5. 終わったら、うんと褒めて、軽くコメント

5.5.1. うんと褒める

日本人の美徳として、褒められたら謙遜すること、というのが長年の伝統です。
例えば

先生 : 「とてもスイングしていて良いアドリブでしたよ!」
生徒 : 「そんなことないですよ~。わたしなんかへたですから~・・・。」

あなたは、このやりとりを読んでどう思いますか?
何かおかしいですよね。
先生が生徒を褒めてるのに、生徒はそれを拒否している。

先生 : 「右手のレガートが良くなったね!」
生徒 : 「いや~、まだまだですよ~。」

これも何かおかしいですよね。

自己否定や自己卑下は音楽の上達には無用です。
Steveは人生にも無用と思います。

自分は駄目だとか、自分は才能が無いだとか、自分はセンスが無いだとか。
何故駄目なのか。
それは、自分が声に出したことは自分の耳を通して脳に保存されるからです。
毎日、毎日、否定的な言葉を話していると、否定的なデータの保存容量が膨大なものになります。
そして、潜在意識はそのようになるように全力で実行します。
そうすると、見事に否定的な人間になり、音楽も否定的で聴いてくれている人に「喜び」や「感動」を与えるものから程遠くなっていきます。
Steveが一番良いと思うやり取りは

先生 : 「とても良い演奏だったよ!」
生徒 : 「(
笑顔でひとこと) ありがとうございます!」

これです。
半年、1年、3年後には凄いことになっているでしょう。

5.5.2. 一点褒め

演奏には良いところも悪いところも沢山あります。
初心者も、ベテランも、プロも同じです。
今まで教えてきて、何度言っても、何回アドバイスしても良くならないことがよくありました。

話をしてみると、本人はそのことが悪いという認識が無いのです。
本人が悪いと思っていないことを、そこが悪いからこうしたら良くなるよと言っても良くなるはずがないのです。
欠点を直そうと思って努力するのは非常に大変です。
大変な割には直らないことが多いです。

そこで、良いところを褒めて伸ばすことにしました。
そうすると、良いところがさらに良くなっていくのです。
良いところがドンドン良くなることによって、悪いところもそれに引っ張られて、気が付かないうちに良くなっているのです。

これは「ヘアネット効果」と言われています。
ヘアネットを被って、天辺を引っ張ると全体的に上に上がるのが分かると思います。

5.6. ピアノ・ベース・ドラムの役割

ピアノ、ベース、ドラムをリズムセクションと言います。
■ ピアノ
主にコードを伝え、ソリストのバッキングをします。
■ ベース
ビートを出し、コードを伝える、非常に重要なパートです。
■ ドラム
ベースとリズムを完全に一致させてグルーブを出し、ソリストと会話 (コール・アンド・レスポンス) をします。

この3人が一体となってソリストを盛り上げたり、助けたりします。
ソリストはリズムセクションに感謝です。

5.7. 暗譜の重要性

譜面を見ながらの演奏は良くなく、暗譜が重要になります。
譜面を見ることのメリットとデメリットは以下のとおりです。

■ メリット
テーマのメロディとコードがうろ覚えの時、間違えたくない時、クラシックをやってきていて譜面が無いと演奏できない時に、譜面があると演奏し易い。
■ デメリット
譜面に集中してしまい、周りの音が聞こえなくなったり、コミュニケーションが取れなくなったりする。

テーマのメロディは譜面を見ないでも演奏できるように、繰り返し練習しておくことをお勧めします。
コード進行もあなたの記憶力なら直ぐに覚えられます!

5.8. アドリブの構成

ピアノソロの時、ピアノの右手は低い音から段々に高い音に進んでいくと、アドリブの構成が豊かになります。
他の楽器にも同じことが言えます。

アドリブの構成は、段々とエネルギーが高くなるようにしていきます。
中音域から始めて高音域に進めて行く。
静かに始めて、大きな音にしていく。
4分音符から始めて、8分音符や16分音符にしていく。
特にドラマーは、ダイナミクスを極端に意識して演奏するとバンド全体のサウンドが良くなります。
静かに叩いたり、普通に叩いたり、激しく叩いたり、変幻自在にダイナミクスをコントロールすると良いです。

5.9. ピアノ・ベース・ドラムを演奏することの重要性

Steveはトランペットだけを演奏してきました。
SOMETHIN' Jazz Clubでレッスンを始めてから、ドラムが居ない時があったのでドラムを叩いていました。
そのうち何となく叩けるようになりました。
そうすると、ドラマーから見たトランペットが分かったり、ベースとのタイミングが分かったりしました。

同じ様に、ベースが居ないことがありました。
ベースの基礎を永井雅美先生に習って演奏するようになりました。
そうすると、ベースがバンド全体をコントロールすることができると分かりました。
フロントやピアニストがベースを聞いていないこともよく分かりました。

SOMETHIN' Jazz Clubでは、ひらちゃんというギタリストがエレベを弾いたり、さとみちゃんというピアニストがドラムを叩いたり、ベーシストの優樹マネージャーがドラムを叩いたり、ピアノを弾いたり、ギターを弾いたりしています。

5.10. 改善点があったら、演奏を止め、アドバイスをし、やってもらい、良くなったら褒める

Steveがレッスンを進めて行くうちに「ここをこうしたら良くなるに違いない!」と閃くことがよくあります。
そのときは「ちょっと止めるね。」と言って演奏を中断してもらいます。
閃くは3秒で消えてしまいますから。

Steve : 「誠ちゃんの今のフレーズをもう一度弾いてみて下さい。」
誠ちゃん : 「え~~と、このフレーズですか?」
Steve : 「そうそうそれ。」
フレーズの演奏があって
Steve : 「そのフレーズをこんな感じで演奏すると良くなるよ。」
Steveが口でフレーズを歌って聴かせる。
Steve : 「では、皆で口でフレーズを歌ってみましょう。」
全員でフレーズを歌う。
何回も、何回も。
Steveは、一人ひとりできているかをチェックして指導する。
全員ができたところで、楽器で同じフレーズを演奏してみる。
同じ様に、Steveが一人ひとりできているかをチェックして指導する。
全員ができたら
Steve : 「はい、成果発表!一人ひとり演奏してみましょう。」
一人ひとりフレーズを演奏する。
Steve : 「皆とても良いです。素晴らしい。」
止まったところから、演奏を再開する。

こんなパターンが続きます。
奇蹟が起こったように、素晴らしく良くなることがよくあります。

5.11. 初演・原点・原曲を知る

例えば、『枯葉』という曲を演奏する時に譜面を見て、メロディーを弾いてみて、コード進行にしたがってアドリブをとるとします。
彼は全くCDを聴いていないのです。
あなたは、彼の演奏が何かおかしい、味が無いと思うことでしょう。
原曲はフランスのシャンソンなのです。
フランス語で聴いてみると、その良さが分かるでしょう。

キャノンボール・アダレーのリーダーアルバム『SOMETHIN' ELSE』に収録されている『枯葉』を聴けば、なるほど素晴らしい演奏だと分かるでしょう。
今はYouTubeがあるので、検索して即座に曲が聴ける良い時代です。

5.12. 間を置いてから演奏する

フレーズを演奏する前に、ちょっと間を置いてから演奏した方がフレーズに説得力が出ます。

これは超初心者ジャズくらいのレベルで意識すれば良いのですが、最初からこのことを意識する習慣を付けると良いと思います。

5.13. 無意識で演奏するのがベスト

理想的な演奏は「無意識で行う演奏」です。

あなたは楽器を練習する時に、同じことを何度も何度も繰り返しますよね。
最初はつっかえ、つっかえ、間違いだらけでしょう。
何回も何回も同じことをやって、段々とつっかえないようになる、間違えないようにできる。
これができたら、また何回も何回も繰り返し、さらに磨きを掛けるでしょう?
そうすると、あなたの潜在意識の中に練習したことが強い記憶となって蓄積されるのです。
こういうことを広げていくのが練習なのです。

そして、ある日突然にあちこちの記憶からフレーズが湧き出して演奏できるようになるのです。
最初は指からでまかせでも、全く問題ないです。
一晩で凄く上手く演奏できるようになったとしたら、嬉しいけど、本当にそうだったら大変なことになりますよね。
花が成長するように、3ヶ月や6ヶ月といった長いスパンを意識しておくと良いです。

ただし、あなたがイマジネーションを働かせて、イメージトレーニングでそれが明確にできると確信した時には、それができます。
奇蹟のようなことが起こります。

5.14. 愛が一番大切なこと

生きていて、愛ほど心を動かす素晴らしいことは無いと思います。
「あなたを愛しています。」
「愛してるよ。」
表現は色々あります。
その時と場合によって、相手によって、違ってくるでしょう。

ジャズを演奏することによって何を伝えるか。
それは愛なのです。
技術的に優れているとか、初心者で上手く演奏できないとかは関係ないのです。
心を込めて「愛してるよ。」と表現するだけなのです。

愛している人に愛を伝える、一緒に演奏している人に愛を伝える、演奏を聴いてくれている人に愛を伝える。
録音してCDにして、沢山の人に愛を伝える。
表現や手段は様々ですが「愛を伝えること」が一番大切なのです。

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※スタッフ注
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