武川さん(と眞島さん)に愛を込めて

 今日は武川さんのことを語る時間。同じく過去ログが残っていたので(読むと面白いので)ここに残します。

 もともとおっさんずラブを見ようと思ったきっかけは、眞島さんが出ているからだ。眞島さんを知ったのは『となりの家族は青く見える』で、その時にクローゼットなゲイ役をやっていて、渉という役柄がドンピシャだったので一気に好きになった。なんて色気のある役者さんなんだろうと。
 それが今度は武川政宗である。色気はそのままに狂気と屈折した愛を孕んだ闇属性。わりかしスタンダードなタイプではある。スタイリッシュな容姿、溢れる色気、ハイスペック、神経質そうな性格、メガネ、底はかとなく漂う変態気質(※褒めてます)。自分のデータベースを検索してもなかなかヒットしないタイプのキャラで、渉が初心者向けなら武川さんは上級者向けという感じだった。武川攻略にはなかなかのスキルが必要だと。
 フタを開けてみるとやっぱり一癖も二癖もあるキャラで、公式本を読むまでは厳しい家庭で躾もきちんとしていて、兄と比べられて育ったからちょっと人格が歪んでいる、などという裏設定まで考えていた。公式の設定では弟が居ることになっていてその予想は見事に外れた。
 天空不動産のHPのPRを読んでいたら、牧は几帳面な性格とあった。武川さんも神経質なくらい几帳面な性格だと思うので、やはりそこが衝突の原因か?春田がひとりっ子で甘え上手、牧は長子で面倒見が良くこの二人の相性はばっちりだと思う(やっぱり春田くらいガサツな方がいいんだよ、牧)。武川さんもかなり世話好きなんじゃないかな。近くに立ち寄ったと嘘を吐いて(たぶん嘘)牧にみかんゼリーを山ほど買って来るんだから。
 それと春田の脳年齢の結果を見ていたら、記憶力1 判断力2 観察力2 となっていた。なにこのオモシロ設定。武川さんがこれをやったら(何段階評価なのかわからないけど)記憶力7 判断力8 観察力10 とかになってそう。まぁとにかく二人(というか牧)を良く見てるし、とっさの判断力と行動力がハンパないし、何より敏い。
 武川さんは神経質で潔癖なところがあり、自分のテリトリーを荒らされるのは嫌う人のよう。仕事が出来て頭もいいので、価値観が近い人じゃないと無理。ことごとく春田の反対を行っている。でもサラダが入ってることを勝ち誇ってたので、案外子どもっぽいところもある感じ。
 牧との相性は悪くはなかったと思うが、牧は内向的で頑固なところがあるので、武川さんと冷戦状態になり易い。(武川さんにお似合いな人設定はSSでさんざん書いたので割愛)
 初見から牧が好きなんだろうな~とは思っていたが、春田と牧が人目も憚らず職場でイチャイチャするもんだから、牧に歪んだ愛が迸っていてハラハラする笑。一歩間違うとヤンデレになってしまう。彼の嫉妬は分かり難いので相当、経験値のある正の空気を纏った人でないと懐柔できない。
 さらに言うと、牧がOB訪問で武川さんと会っている時に天空不動産のテーブルの上に、春田家のダイニングテーブルの上に置いてあったような造花が置いてある。同じガラスの花瓶で同じようなポプリが入れてある。牧と武川さんが会っている時に置いてあるのは黄色いバラ。黄色いバラの花言葉は、『ジェラシー・薄らぐ愛・恋に飽きた・別れよう』。同じセットの使い回しで色違いにしただけなんだろうけど、いろいろ勘ぐってしまった。
 初見でリアクションに温度差があるとか、眞島さんかわえええぇぇぇー!一番美味しいじゃないですか。なんだよぅーもうゴロンゴロンしちゃう。絶対2を作って、田中さんや林さんのリアクションが大きくて、眞島さんとの温度差が出て欲しいです笑(武川さんメインにして欲しいという意味)。

 ここからはリアルタイムテキスト。自分は劇場版に不満はない方だが、それでもやっぱり武川さんがどうしてああなった?!という気持ちは多分にある。連ドラから猟奇的なヤンデレキャラではあったが、決して色モノではなかった。全ては牧を想う愛が暴走したに過ぎず、キワモノと色モノでは全く意味合いが変わって来る。これには眞島さんも困惑したに違いない。

 連ドラの最大の魅力は、それぞれに誰かを想い、その想いが何かしらの形で昇華されていたことだ。だから誰もがそれぞれの形で収まり、本当に綺麗に終わったなぁという感じだった。例え武川さんの恋が実らなくても、牧を想う気持ちは大切にされていたし、部長と春田の恋と同じく、武川さんと牧の恋も決して無駄ではなかったと思えるラストだった。

 それが劇場版では部長にもう一度恋をしてもらうために、無理やり記憶喪失という設定にして、それだけならまだしもその部長に想いをよせる(ん?んん?)というチンチクリンな方向へと武川さんの想いを歪め、ただの変人へと成り下げてしまった。まったくもってとんだ茶番である。これには正直なところがっかりした。なんなら自分のSSをテンプレにして、ヤクザモノの映画を作ってくれと言いたいところだ。その方が何百倍も面白い(自分だけが笑)。※このSSでは武川さんと牧の関係性が6割くらい占めています。春田は4割笑。そのくらい武川さんと牧の関係性を深く掘り下げて書いた。

 今にして思えばすでに綻びが出ていたのかもしれない。

 少なくとも武川さんは牧が春田と一緒に住んでいると知って動揺するくらい牧のことを忘れられないでいて、自分の立場やなりふりもかまわず牧のために土下座してしまうほど愛が深く、そう簡単に部長へ心変わりするような人ではないはずだ。その傷心を癒す存在が現れても、頑なな心はなかなか解けない人だと自分は思っている(だからうちの高村は旧友設定で気心が知れている仲にしている)。

 まして上司、しかも春田に想いを寄せていた部長に、恋情を抱くなどあり得ない(敬愛や親愛といったものならまだわからなくはないが)。牧との恋がものの見事に抜け落ちていることにも驚いた。彼の中で昇華される場面があるのなら納得もするが、牧との恋は無駄ではなかったという描写が一切なかったのが本当に残念でならない。

 自分はSSの中ですべて拾い上げている。そうしなければ武川さんは次のステップに進めないと思っていたし、牧との恋が無になってしまうからだ。眞島さんが言うように二人は互いに素晴らしいパートナーだったろうから、たとえその形が変わったとしても、牧との関係性も大切に描いて欲しかった。武川さんがあまりにも雑な扱い過ぎる。

 どうしてひとつの物語を深く掘り下げることが出来なかったのだろう。複数の人間が多面的な価値観を寄せ集め、ひとつのものに仕上げて行くにしても、絶対にブレてはいけないものはあったはずだ。コメディなどという逃げ道を設けず、そこは真摯に向き合って欲しかった。