あなたと同じ目線の高さで、あなたと同じ風景を見ていたい

 過去SSからの一部抜粋。投稿日は2018年9月2日となっています。劇場版のラスト、ファーストネームを呼び合うシーンは、観ているこっちが恥かしくなるような微笑ましいシーンですが、自分の中でもファーストネームで呼び合うというシチュは特別なものでした。個人的な趣味で牧には呼び捨てではなく「創一さん」と呼ばせていますが、別に「創一」でも全然アリよりのアリです笑。牧が春田に逢いに上海へ行って、その上海土産をちずと鉄平兄に渡しに行くという設定です。まだ、マイマイがわんだほうで働いていないのでちずになっていますが、マイマイでも全く違和感のない内容となっております。牧のこんな姿がseason2で見てみたい!(願望)。一時帰国してみんなに冷やかされればいいよ!※全年齢対象。

 

 ◇ ◇ ◇


 春田さんがふわりと笑う。少し照れているようだ。

 「俺、やっと春田さんと対等な場所に立てた気がします」

 「うん、俺も」

 今なら素直な気持ちが伝えられるかもしれない。

 「俺、今までの恋愛でも、少しづつ積み重なった鬱積とか、疑心暗鬼とかが爆発して、相手を責め立てたり、勝手に自己完結して終わりにして来てたんです」

 「うん」

 「俺、自信がなくて。好きなのは俺だけなのかなって思ったり、男同士だから世間体とか、将来のこととか考えて…でも春田さんが俺を追いかけて来てくれて凄い嬉しかった」

 「うん。俺も牧が受け止めてくれて、抱きしめてくれて、スゲー嬉しかった。牧と別れてから話しかけても避けられるし、牧にもう認めてもらえないんじゃないかって思ってたから。だから嬉しかった」

 「春田さん、片翼の天使の話覚えてますか?」

 「片方にしか羽がない天使の話だろ?」

 「そうです。俺も春田さんもお互いに足りない部分があるから、これからも助け合っていきません?で、そこは良くないとか、こうしようとか、不満や不安に思ったことは遠慮なく言って下さい。俺もちゃんと口に出して言うようにします」

 「そんなの当たり前だろー?」

 「ふふ、ありがとうございます」

 「ねぇ、牧」

 「はい?」

 「牧がさぁ、敬語で話すのはクセだから別にいいんだけど、そろそろ下の名前で呼び合わない?」

 「え?照れますね」

 「俺、牧ぃって呼ぶのも好きなんだけどさ、凌太ってのもいいなぁって。俺のこと創一って呼んでみ?あ、俺の下の名前、ハルタじゃーねーぞ?」

 「はは、わかってますよ。……創一さん」

 (うわっこれ、結構恥かしいな)

 「はは、凌太、照れてるぅーかわいい」

 春田さんに顔を覗き込まれてキスされた。

 「凌太ってそういうトコあるよな」

 「どういうトコですか?」

 「内緒」

 「なんだ?春田ー!教えろー!」

 「ひゃひゃひゃ!凌太!腹減ったー!どっか飯食いに行こっ!」

 上手く誤魔化された気もするが、そう深く追求するものでもないのであっさりと引いた。

 「じゃあ行きますか!」

 そう言うと、ふたりで夜の上海へと繰り出した。


 ◇ ◇ ◇


 上海から帰国後、わんだほうへと飲みに行った。ちずさんと鉄平さんに上海土産を渡しに行くためだ。

 「上海、どうだったぁ?久しぶりに春田と会えて楽しかった?」

 「ええ、楽しかったですよ、そりゃぁ」

 思わず顔が緩んでしまう。
 
 一緒に買い物に出かけたり、部屋でまったりと過ごしたり、どこにでも居る普通の恋人同士のように甘い時を過ごした。

 ~~~♪

 「あ、ちょっとすみません」

 スマホの着信音が鳴り、画面を見ると『創一さん』とあった。

 「はい、もしもし。あ、大丈夫です。今、わんだほうに来てるんですよ。え?ちずさんと鉄平さんに上海土産を渡しに来ただけですよ」

 毎日のように電話やLINEで話しているけれど、創一さんの声を聞くとやっぱり安心する。少しなんでもない会話をして「おやすみなさい」と告げて電話を切った。

 「すみません、創一さんからでした」

 「あっ」

 「あっ」

 『ああぁー!』

 ちずさんと鉄平さんが一瞬、何かに驚いたような声を上げて、同時に納得したように『ああぁー!』とシンクロした。

 「え?なんですか?何かおかしかったですか?」

 「春田のこと、創一さんって呼んでんだ?」

 ちずさんにそう言われて初めて気づく。

 「あ、いや、その…」

 職場では気を付けるようにしているが、ついクセでそう呼んでしまった。

 「なるほどねぇ~」

 「うふふ、なるほどね~」

 「なん、なんなんですか!兄妹して!」

 恥かしさに顔から火が出る思いだ。

 「あ!やべ!降りてきた!」

 ジャーン~~~♪

 「春田ではなくぅ~創一と呼びぃ~~~♪」

 「もう!鉄平さん!やめて下さいよっ!」

 「あははは~」

 「ちずさんまで!」

 このやりとりは鉄平さんから舞香さんに伝わり、あっという間に天空不動産のメンバーの知ることとなった。