『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う』おすすめだよって話

何年か前に神戸の本屋さんで平積みされていて手に取った本。読むと背筋が伸びるような気持ちになるので何度も開いている。

『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う』尾形真理子著

年下に片思いする文系女子、不倫に悩む美容マニア、元彼の披露宴スピーチを頼まれる化粧品会社勤務のOL……。恋愛下手な彼女達が訪れるのは、路地裏のセレクトショップ。不思議な魅力のオーナーと一緒に自分を変える運命の一着を探すうちに、誰もが強がりや諦めを捨て素直な気持ちと向き合っていく。繊細な大人達の心模様を丁寧に綴った恋物語。(裏表紙より)

もーーー登場する主人公みんな好きなんだけど、特に読むたびに影響を受けるのは一話目と四話目の主人公なのでその話をする。この短編集の良いところのひとつに各話のタイトルが頭を抱えるほど素敵っていうのがあるからまずは紹介するわ。

『あなたといたい、と ひとりで平気、を いったりきたり。』(一話目)

『ドレスコードは、花嫁未満の、わき役以上で。』(四話目)

良いでしょう。読んだ後にタイトル見直すと、また良くなるのよ。

○○○

一話目は、私がこの本を購入したいと思ったきっかけの話。主人公は自分の白くもちもちした手がコンプレックスな女性。その手を褒めてくれた彼とかなり長く付き合っていて、最近ちょっとすれ違い気味……。

私も自分の手にコンプレックスがあったのと、試着室で自分にとって新しいタイプの服を着たときの気持ちが「めっちゃわかる!!」という描写だった。購入してからこの話を読んだあとは、自分も素敵なスカートを買えたような、ウキウキした気分になる(これは今でも)。

他の話もそうなんだけど、格主人公の考え方や性格が短編なのにめっちゃ丁寧に伝わってくるから、じぶんと全く違うタイプの人の話でも「その気持ちはわかるわ」とか「その行動力はすごいわ」とか思ってしまう。女子会してるみたい。

で、私にとって「外見も服装も全然違うタイプだけど大好きです!」という主人公が登場するのが四話目。背が高くてクールな見た目で仕事もできる、だけど実は昔の恋愛がずっと引っかかっている。私は背が低くてこんなに仕事もできないし、最後に彼女が購入したものも私には絶対似合わないけど、だからこそ憧れるというか、めっちゃ好きなんすよ。

この主人公の失恋した時の描写がめっちゃ胸にくる。甘味を大量に持っていって話を聞いて抱きしめてやりたい。でもこの人はたぶんそういう時にあんまり弱音吐いてくれなさそう。わからんけど。

○○○

私がこの本が好きだなぁと思うのが、恋愛が成就して終わりという「相手ありきの結末」が無いところ。もしかして駄目なんじゃないの?とか、いや絶対傷つくよ。っていう余韻を残しながら、でも絶対さっきまでよりは良い感じになってるよね!というハッピーな気持ちになった。服やアクセサリーは身につけるだけで何もかもが変わるマジックアイテムじゃないけど、でも間違いなくそれによって世界はちょっと上向きになる。どの話も最後の文を読んだ後に、嬉しそうな主人公の後ろ姿が頭に浮かぶ(こういう時に女の子ってめちゃくちゃ楽しい!って思う)。

あと、読んだ後に高確率で服や靴を買いに行きたくなるので、週末前に読むと買い物が捗ります。私は一話目を読んだあとに、話に出てきたものと似たようなスカートを探しまくった記憶があります。あとハイヒールも。



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