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1300円で作るリングモジュレーター&wavefolder?-モジュラーシンセ自作

AD633 アナログ乗算ICを使って、モジュラーシンセサイザー のリングモジュレーター&wavefolderを自作したので、その備忘録。

背景

自作モジュラーシンセの31作品目。
ICのカタログを眺めていたら、AD633という面白そうなICを見つけた。アナログ乗算ICで、波形を掛け算できるらしい。
これを使えば簡単にリングモジュレーターが作れると思ったが、webを調べてみると、既に多くのDIYerがAD633を使ったリングモジュレータを作っていた。

ならば、自分オリジナルの要素を思い、回路にひと手間を加えて、wavefolderの機能も追加しようという企画。

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制作物のスペック

ユーロラック規格 3U 6HPサイズ
電源:25mA 以下( at +12V ) / 25mA以下 ( at -12V )
±12V両電源が必要。

Audio IN: -5V~+5Vの入力を想定
Modulation IN: -5V~+5Vの入力を想定
CV IN: 0~+5Vの入力を想定

リングモジュレーター

Audio INに入力された音声信号を、Modulation INに入力された信号で変調する。
Offsetツマミで、Modulationの電圧をオフセットできる。
Audio INとModulation INを掛け算した電圧が、OUTより出力される。

非整数倍の倍音をもつ波形になるので、金属的な音を出すことができる。
言い換えれば、超高速LFOである。
VCAとの違いは、VCAはユニポーラであることに対し、リングモジュレーターはバイポーラであること。つまり、マイナスの掛け算ができる。

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wavefolder?

"?"を付けた理由は、世の中にあるwavefolderとは異なる方法で波形をfoldしているから。数学的には正しくfold出来てはいないが、音を聞いたときに多くの倍音が付加できたので、これで良しとしている。

Thresholdツマミで、fold(折り畳み)が始まる電圧レベルを制御できる。
Rateツマミでは、foldの掛かり具合を調整する。Rateツマミが中間の時は、foldされない。また、右回しと、左回しで、foldする方向を変えることができる。
Offsetツマミで、foldの掛かり具合を調整できる。
CV INでは、外部からのCV電圧でThresholdの値を制御できる。

リングモジュレータとwavefolderは同時に使用可能。
下の青いサイン波を、黄色い波形に変形できる。多くの倍音を加えることができる。

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製作費

総額1300円
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AD633 IC 1000円
TL074オペアンプ 50円
パネル 100円

AD633は高額なICだが、汎用性が高い。ミキサーやVCA、VCFにも転用可能なので、ポテンシャルがあると感じた。

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ハードウェア

全ての変調は、foldも含めてAD633が行う。
AD633の使い方は非常にシンプルで、X1入力とY1入力の掛け算がWから出力される。

X1はオーディオ信号、Y1にはmodulation信号が入力される。
回路図の上部は、foldの元になるmodulation信号を作り出すための回路。オーディオの周波数と同期したパルス波を生成する。
オーディオ信号は、正負それぞれのコンパレータ、ダイオードによるOR回路、トランジスタによる論理反転(HIGH→LOW / LOW→HIGH)、RATEによるミキサーを通り、Y1のmodulation入力に至る。

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CVでは正側のコンパレータの閾値を制御して、foldの掛かり具合を変調する。ダイオードは電流が逆流することを防ぐ保護回路として働く。

Thresholdの可変抵抗は2連ボリューム(dual potentiometer)を使用して、正負両方の閾値が同時に変化するようにしている。
12V側には半固定抵抗が設置してあるが、これは正と負の閾値の相関性を微調整するためのものだ。

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