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モジュラーシンセ自作に使う道具

複数名から「モジュラーシンセDIYに使う道具を紹介してほしい」
と問い合わせがあったので、備忘録も兼ねて簡単にまとめる。

なお、ここで紹介する自作とは、DIYキットを組み立てる事ではない。
自分でモジュールを設計し、ゼロからモジュールを組み立てることをさす。

作業の様子は下の動画参照

製作ツール

精密ニッパー(オススメ!)

https://www.monotaro.com/g/00529094/

ツノダ MC-125。電子部品のリード切断、ワイヤーの切断に使用。
一回の工作で何百回も使うので、700円くらいの良い物を選んでいる。
刃先は摩耗するので、1年に1回は交換している。

ワイヤーストリッパー

ワイヤーの被覆を剥くのに使用。モジュラーシンセは流す電流が少ないので、ワイヤー線径も細くて良い。ワイヤーストリッパーは30~22AWGの細い線径用。
10年位前だったか、学生の頃に秋葉原で購入した。

ピンセット

aliexprrssで購入した安物。金属製、先端は鋭利で小型の電子部品も掴みやすい。
電子部品をハンダ付けする際、部品は熱を持ち手で持つことができない。そんなときにピンセットを使っている。
表面実装部品(SMD)をハンダ付けする際にも、部品の位置合わせで使う。

中型ニッパー

精密ニッパーを使うと歯こぼれする硬い部品切断に使用。100円。

デザインナイフ

フロントパネル用の粘着シートを切るのに使用。amazonで300円、替刃付き。
カッターより切れ味が良い。基板を切断すると歯こぼれする。

デジタルノギス

日本製、1500円くらいした。中国製は安いのだが信用できない。
部品の寸法を測定するのに使用。電池は1年で消耗する。

ルーペ(オススメ!)

メーカーはideapro。倍率16倍、LEDライト付き、2000円。
私はまだ老眼ではないので、ハンダ付け作業中はルーペは使わない。面実装部品のハンダの出来栄えを確認するのに使う。
ルーペはハンダ付け品質を確認するための必須アイテム。オススメ!
セラミックコンデンサの容量や、ICの型番を読む際にも便利。

美しいはんだ付け状態については、日本溶接協会が基準を発行している。
必ずしも基準を守る必要はないが、一度目を通してみると参考になる
http://www.jwes.or.jp/mt/shi_ki/ms/pdf/hinsitu.pdf

安全メガネ(オススメ!)

製作中は常に使用している。電子部品のリードを切るときにリードの切れ端が飛んできたり、ハンダ付け中に熱されたフラックスやハンダが飛んでくる事があり、目の安全を確保する必要がある。
逆に、安全さえ確保できれば部品に目を近づける事ができるので、作業効率は上がる。

ハンダ

SMIC(千住金属工業)のスパークルハンダ。共晶ハンダ、鉛含有している。型番は忘れた。
初心者には鉛含有ハンダがオススメ、融点が低くてハンダ付けしやすい。

鉛は毒性があるので、ハンダ作業場で飲食してはいけない。
私は特殊な訓練(鉛作業主任者教育)を受けているので、酒を飲みながらはんだ作業をしている。真似してはいけない。

フラックスペン(オススメ!)

aliexprrssで買った、200円くらい。ハンダ付け前にフラックスを部品に塗布することで、ハンダ付けしやすくする。
フラックスは、リードや基板の酸化物を除去し、ハンダの濡れ性を改善する。おすすめ。
フラックスを塗布しすぎると、基板がベタベタする。機能上は問題ないが(*1)、気になる人はアセトンやIPAで拭き取ると良い。
アセトン、又はIPAは除光液で代用できる。

*1 高温多湿の環境で長時間使用するとフラックスが原因でショート故障を引き起こす事はあるが、ホビーユースなら問題ない

ハンダ吸い取り線

ハンダ付けを失敗した際に、ハンダを吸い取るために使用。aliexprrssで買った安物。
そもそもハンダの修正は可能な限り避けるのが吉。基板を熱し続けると、基板から銅箔パターンが剥離して、いずれかは基板が壊れてしまう。

ハンダこて

https://www.goot.jp/products/detail/tq_95
型番はTQ-95、ボタンがついていて一時的に温度を上げることができる。価格はamazonで2100円。
ハンダこての加熱方法は、ニクロムとセラミックの2種類があるが、セラミックがオススメ。価格も1000円しか変わらない。
温度調整機能は必須ではない。熱容量の大きい大型の電子部品のハンダ付けの際には高温が必要になるが、モジュラーシンセの様な50mA程度しか使わない工作には、高温は必要ないと思っている。

HAKKO FX-600は高品質、多機能でコストパフォーマンスが良い。しかし、欠点がある。ハンダこては、高温で放置すると劣化する。劣化するとはんだ作業が難しくなる。
FX-600は長時間高温に設定できることがメリットであるが、それは同時にデメリットでもある。

ハンダごて台(オススメ!)

hakko 633。コテ先のハンダはクリーニングワイヤーで取り除く。
コテ先の掃除は、スポンジよりもワイヤーがオススメ。スポンジは水の準備が必要で面倒臭いし、コテ台の掃除も頻繁にしなくてはいけない。

プラスドライバー

モジュール内のねじを締めるのに使用。モジュールをケースに組み付け際のねじは、私は手回しネジを使っているためドライバーは不要。

絶縁テープ・養生テープ

剥き出しでショートの危険性がある端子や、空いてるバスボード(万が一ねじが落ちたらショートの危険がある)の絶縁に使用している。
電子部品の仮止めにも使える。

クランプ

難しい角度ではんだ付けをする際に、土台に基板を固定するために使う。50円位。

瞬間接着剤

LEDやOLEDをパネルに固定する際に使用。見た目を気にしないし、どうせ安物の部品なので接着剤で固定してしまう。固定範囲が広い場合はホットメルトを使用している。

設計ツール

小型オシロスコープ(オススメ!)

DSO NANO V3。中古品を5000円で購入。
小型、充電式、プローブ端子が3.5mmモノラルジャックなので、パッチケーブルを挿すだけで波形を測定できる。オススメ。

小型テスター(オススメ!)

SANWA PM-3、3000円で買える。電流は測定できない。
電圧や抵抗、オープンショートの検出で気軽に使用できる。大型のテスターは電流も測定できるが、取り回しが大変なので使っていない。

ブレッドボード

回路設計用。私は大掛かりな回路のモジュールを作らないので、このサイズのブレッドボードがあれば十分。

オシロスコープ

SDS1022、2ch 20MHz 100Ms/s。結婚直前に「買うなら今しかない」と20000円くらいで買った。
開発には最低2ch以上のオシロスコープが必要だと思う、現象の因果を特定するために。
パソコンに接続するタイプのオシロスコープは操作性が悪いので使っていない。モジュラーシンセと同じで、ツマミがあったほうが作業しやすい。

安定化電源

STP3005H、7000円位で買った。
OUTPUTボタンが無いので非常に使いにくい。しかし非常に安い。
最近は中国製の安い安定化電源が種類豊富なので、自分が使いやすいと思ったものを買えばいいと思う。
日本製の安定化電源は値段が高くて、ホビーユースには向かない。

消費電流が視認できるのが良い。ブレッドボードに組んだ回路が間違っていてショートしていた場合、安定化電源の電流表示で問題あることを見つけることが出来る。
大電流が流れる時はファンがうるさく回るので、耳で聞いて異常が起きていることを察知できるのは、危険を回避するために重要。

パソコン

Surface Pro 4。2016年に購入し7年間も使っている。そろそろ買い換えたい。
Core i3なので、動作は遅い。基板CADの動作は遅い。Arduino IDEのコンパイルは遅い。3D CADは動作が遅すぎて作業したくない。

タッチペンが使えるのが良い。回路図を書くのにCADを立ち上げるのも面倒なので、私は回路図を手書きしている。
はんだ作業時はキーボードを外してタブレットとして使う。作業スペースを広くとれるし、図面を見ながら作業ができる。


カッターマット

ユニバーサル基板をカッターで切断するときに使用する。また、半田付け作業も、木の机を焦がさないために、カッターマットの上で行っている。

充電式ランタン(オススメ!)

aliexpressで300円位で買った。USB充電式なので、コンセント不要。
1回の充電で3時間は使える。
はんだ付け作業は、明るさが重要。暗い場所では精密な作業は出来ない。
壁にひっかけて、デスクライト代わりに使っている。机の上からデスクライトを無くせて、作業スペースも広くとれる。

ホワイトボード

忘れたくないものは常に見える場所に書いておきたい。スマートフォンにメモするより、ホワイトボードに書いたほうが楽だ。
簡単な設計情報もメモしている。


要らないと思う道具

費用対効果が低い、メリットもあるがデメリットも多く使いにくいと思っている工具たち。
(工作の目的によっては有用な工具。あくまで私個人の作業環境の話)

電動はんだ吸引機

https://www.monotaro.com/g/00213149/

リワークに重宝するが、ホビーユースではオーバースペック。
大きくて邪魔、重い、うるさい、消耗品が多い。
ハンダ吸い取り線で代用できる。

ヒートクリップ

熱に弱い半導体等に熱が伝わらないようにするクリップ。
部品の熱容量が上がり、はんだ付けが難しくなるデメリットがある。
ごく一部の半導体を除き、10秒程度の加熱では半導体は壊れることはない。
私の経験上、最も熱に弱い部位は基板の銅箔だ。半導体より先に基板の銅箔が剥がれて死ぬことが多い。ヒートクリップでは基板の銅箔を守る事はできない。

リードベンダー

指で曲げればよいです。

ピンそろった

指で曲げればよいです。

フラックスクリーナー

より安価な除光液で代用できる。
IPA(イソプロピルアルコール)を主な材料とした除光液だと、なお良し。

オーディオ用銀入りはんだ

一般的に、鉛フリーはんだには銀が含まれている。なので、わざわざ「銀入り」をアピールする意味は無いのだが、イメージで食ってるオーディオ業界では「銀入り」である事を誇示したがる。
銀入りであること自体は特別なことではないのだ。

銀入り=鉛フリーであることが多い。鉛フリーはんだは融点が高く、はんだ付けが難しい。

道具に対する心構え

たくさんの道具、高価な良い道具があれば、作業効率が上がるのは確かだ。
しかし、何か新しい事を始める時に必要なのは、道具をそろえる事ではなく、手を動かすことだ。

道具が無いこと、揃ってない事を理由に、チャレンジしないことはもったいない。
まず手を動かして、道具が不足してると感じたら、道具を買えばよい。
モジュラーシンセと同じ。ケースがモジュールで埋まる前から、演奏を始めてもよいのだ。

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