本書を捨てよ町へ出よう! そう言える時代が来ますように
マツコ・デラックスが焼酎のTVCMで
「この多様性の時代によ…(中略)…好きに飲ませてよ~」と言っているのを見るにつけ、「多様性の時代」とわざわざ断らなければならない社会の偏狭ぶりに鼻白む想いがする。
その多様性の正反対にある最たるものが、学校と会社だ。
しかし、ほとんどの人がそこに属しているのも事実。
そんな時代をサヴァイブする助けになるのが本書「もう内向型は組織で働かなくてもいい」である。
「私は外向型だから不要だわ」と思う方も中にはいるかもしれない。
しかし、多様性とは各々が個性を互いに理解し尊重しあうことで作られるものだ。自分が当てはまらないからと一顧だにしないのはいかがなものか。
少なくとも私自身は本書を読んでずい分と考えを改めることになった。
そもそも本書を手にした理由は、自分が内向型的傾向があるから参考にしようという軽い気持ちからだった。
ところがどっこい第1章の「内向型に対する勘違い」で、むしろ自分がその勘違いの持ち主であり、なおかつ内向型的どころか内向型そのものなのだとわかった。これは衝撃、いや笑劇である。
しかし、そうなると、それ以降の読み方も変わってくる。
私:内向型→よっしゃあ、個人事業者目指せばいいのね。どれどれ
そう鼻息荒く読み進めたら、第2章で思いっきり肩透かしをくらった。
タイトルに「組織で働かなくてもいい」とあるから、短絡的に外向型/内向型、組織所属/独立、という二分論/ハードランディングな内容を期待してしまったのだが、著者の堤ゆかりさんはそれを予測したようにきわめて現実的な漸進的/ソフトランディングをすすめるのである。
さらに第3章以降は、働き方を本業専心から本業副業へ、さらにはパラレルワークへと移行するパースペクティヴの改革を提案する。
軽く読んでいたが、ジワジワとこれこそコロナ禍以後の世界を生きるための術かもしれないと思うにいたった。
組織に縛られ、くよくよ人間関係に悩むことなど昔話になって、自分の個性に合った複数のインカムを持つことが普通になる……、そうなれば本書は用無しだ。
だが、それこそ著者の堤ゆかりさんが望んでいる世の中なんではなかろうか。
僕はそう思えてならない。