加点法か減点法か?
久し振りによく晴れた土曜日、子供たちのリクエストに応えてパンケーキを焼いた。
普通サイズのパンケーキよりも、子どもの手の平サイズの方が切らなくて良いし、子供たちも喜ぶ。
サンフランシスコのユニオンスクエアのすぐ傍に、"Sears Fine Food"というダイナーがあって、朝早くからいつも行列している。
『ここのパンケーキを食べると、またサンフランシスコに戻って来られる』という、トレビの泉のようなジンクスもあって、女性は特にパンケーキのオーダー率が高い。
一皿に18枚。
付け合わせのベーコンや卵料理と合わせると結構な量だけれど、薄くて軽いので食べ切れてしまう。
1歳10ヶ月だった息子を連れて行ったときは、ほぼ全て息子がパンケーキを平らげた。
だからなのか、私はあれからサンフランシスコへ一度も戻れていない。
綺麗に焼けた私のパンケーキは、今日も子どもたちに10分もしないうちに食べ尽くされた。
「ママはいつも、おりょうりじょうず!」
「わたしもママみたいになるんだー。おかあさんになったら、きれいなふくをきて、おしごとして、おかしもつくるんだ」
娘は仕事をしている私が好きだと言う。
最近ご無沙汰だけれど、家で作れるスイーツは作っていて、何も余計なものが入っていないからか、子ども達は「ママの作るのが良い」と言ってくれる。
ケーキ、シュークリーム、チーズケーキ、アップルパイ、そして大きなプリン…取り敢えず何でも作るし、子供たちは売り物みたいだと褒めてくれる。
Instagramにお弁当の投稿をしなくなって、どれくらい経つだろう。
仕事を始めても暫くは投稿していたから、多分2学期に入ってから。
息子が幼稚園に入園してから、ずっと続けていたけれど。
InstagramのアカウントはFBと連動しているから、ママ友よりもFB上の知人たちが見てくれていて、沢山「いいね!」してくれていた。
仕事を始めても、何も変わらないよね!
いつもパーフェクトなママだよね!
そう言ってくれるママ友たちもいる。
だけど。
『“Sola“ちゃんは出来て当たり前』
の無意識のバイアスに、時々私は傷ついてきた。
少し前に入社してきたチームメンバーとランチをしながら、女性は特に『加点法』と『減点法』という見方をされているのではないか?という話をしていた。
彼女は綺麗系で、しっかりした雰囲気。
「私モテないんですよ」と、いつも嘆いている。
例えば第一印象で(ルックス含め)100点満点の90点だった人と、50点だった人がいたとして、90点だった方が何か苦手な事があったり印象と違っていて70点になり、50点の方が意外な良い点が見つかって70点になったとする。
2人は同じ70点だけれども、最初に50点だった方が心象的には有利で、男性はそちらを選ぶ事が多いのではないか?
彼女は「すっごく分かる!私20代までそれで辛かったです!」と深く頷いた。
そうなのだ。
それは私自身が通ってきた道。
ルックスも(自分で言うのもなんだけど)悪くない方、成績も上位でスポーツも得意、クラス委員もする優等生。
料理も、家事も、仕事も、英語も、なにもかも。
"出来て当たり前だよね"
の期待に応えたくて、点数を落としてがっかりされたくなくて。
でも本当は、泳ぐの苦手だし、身体硬いし、数学で赤点取ったこともあるし、縦列駐車が苦手で4回も教習延長になったし、仕事で大失敗して客先でひたすら謝ったこともあるし、失恋してご飯食べられなくなったりもしたし、出産の時は痛すぎて無理!帝王切開!って駄々捏ねたし、とにかく駄目なところは沢山あるのだ。
30代になってから少しずつ優等生の殻を脱ぎ始めて、フットワークも軽くなっていったけれど、根底で緩やかな呪縛は続いていたように思う。
Instagramに何かをアップして、さすがSolaちゃん!と言われても他人事みたいに『あ、そう』と完全に受け流せるようになったのは、40歳になった頃。
ひとが勝手に作り上げた"私像"が独り歩きして、イメージと違うね、と言われても、"これが私"だと言えるようになって、ようやく自分らしい生き方が出来るようになった。
いつでも"ナチュラル"なまま振る舞うし、出来ないことは出来ないと素直に言うし、失敗しても隠さない。
それで好きになって貰えないならば、別にそれで良い。
好きになって貰えるなら、きっとおばあちゃんになっても、関係性はそのままで付き合ってゆけるひとだと思う。
限りなく"素"のままいる事は、本当はとても難しいことだけれど、それでも私が"ナチュラル"なまま、心地良く時間を共有出来る人たちと一緒にいられる時間を持てるなら、この上ない幸せだ。
加点法も減点法も、無意識のバイアスも。
若いと特に、呪縛はなかなか解けないものだけれど、関係ないよ!と受け流せるようになったら、みんなもっと軽やかに楽しく生きられるのになぁ、と思う今日この頃。
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