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芸術の秋に考える、個性って何だろう?

皆さんいかがお過ごしでしょうか?

秋という季節は、食欲、読書、スポーツ等々色々な言葉で形容される季節ですが、私にとっては芸術の秋ということで、先日上野で開催中のロンドンナショナル・ギャラリー展に行ってまいりました!

数々の名作が展示されてましたが、中でも、クロード・モネの「睡蓮の池」という作品が個人的にはとても印象に残りました。

モネ:睡蓮の池

モネは、日本美術の熱烈な愛好者であり、浮世絵に描かれていた風景に影響をうけて、太鼓橋などの浮世絵のモチーフが散りばめられた日本式庭園を再現した庭を造ったことでも有名です。

先日高階秀爾さんの著作、「日本人にとって美しさとは何か」を読んだ際にモネの日本美術に対する愛着について以下のように書かれていました。

影によって存在を、部分によって全体を暗示するその美学は、私の意にかなった。

日本美術における切り捨ての美学

日本美術と西洋美術はしばしば比較されて論じられますが、中でも不要なモチーフを切り捨てるのが日本の表現様式の特徴といわれています。

尾形光琳:紅白梅図屏風

こちらは尾形光琳作「紅白梅図屏風」です。
作品全体が金地の背景によって覆われており、対象となるモチーフの背景である、大地や空、周囲の草木などが排除されており、簡潔な画面構成になっています。

日本人は、金地の背景に象徴されるような華やかな装飾性を好みながらも、細部まで飾り立てるのではなく、不要なものを切り捨てることで簡潔さをも求める美意識を持っていることがうかがえます。

一方西洋絵画においては写実性が重んじられ、モチーフの背景を緻密に描きこむことが求められました。

ラインデルトホッベマ:ミッデルハルニスの並木道

こちらは、ホッベマ作「ミッデルハルニスの並木道」です。
自然に見いだされる情景を緻密に描くことで、風景全体が見る者の前に立ち現れるような印象を与えており、日本の表現様式との対称性が感じられると思います。

日常生活においても「忖度」といった言葉に象徴されるように、日本人は明示的な表現を避けて、相手に察してもらおうとする文化があると思いますが、こうした部分は冒頭で紹介したモネの言葉や日本の表現様式とのつながりを感じる部分ではないでしょうか。

個性って何だろう

モネは印象派の画家として有名ですが、印象派は西洋の画家たちが日本美術の影響をうけて起こした芸術運動といわれています。

日本人は自分の個性を認識するのが苦手な民族であると個人的には感じております。私自身、自分がどんな人間かを表現しろと言われたらとりあえず三日くらい考え込んでしまうタイプの人間です(笑)
日本美術が西洋の人々と出会うことによって、日本美術の個性が浮き彫りになり新しいものが生み出された事実を鑑みると、個性というのは、他者との関わり合いの中で初めて認識されるものであり、自分にとっての当たり前が、誰かにとっての個性だということに気付かされます

肌寒い日も多くなってきましたので、皆様体調にはくれぐれもお気を付けください。最後までお読みいただきありがとうございました!






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