見出し画像

僕は永遠にタバコが買えない|2021年6月2日

今日も僕はタバコの自販機の前で
たくさんの銘柄が並ぶのを、ただ
物欲しそうに見つめることしか出来なかった。

話は僕の誕生日 前日に遡る。
父は半端ないヘビースモーカーで、その臭いと健康被害を鑑みるに、僕は一生タバコなんぞ吸うまいと思っていた。
しかし誕生日を目前にハイになった僕は、人生経験の名のもとにあれほど避けていたタバコを吸うことにした。

初めて吸ったタバコは「わかば」。
初心者マークみたいな名前だと思って手を出したけど、全然初心者向けじゃないから気をつけて。
わかば自体は何も悪くないけど、その臭いと煙は正に皆が思い描くタバコそのもので、おろしたての服にタバコの匂いを染み込ませながら僕は「もう、いいかな…」とタバコを水にジュッとした。

そこから時間を早送りにして数ヶ月前。
その頃、僕は "喫煙者で白髪で顔が滅茶苦茶いい男"
を爆裂に推していた。そりゃもう夢に出るくらい推してた。

僕は身長も体重も顔も色気も一切推しに近付くことは出来ない、しかし、そう、持ち物だけなら近付けるということに気が付いた。つまり、タバコだ。

1度超えたハードルは何回だって飛び越えられる。
既に初喫煙を済ませていた僕に死角はなかった。

幸運なことに、僕の推しは 友人の作ったTRPG探索者かつ、マイフレンドも喫煙者。さっそく推しの生産者に煙草の銘柄を教えてもらい、僕はウキウキで近所のタバコ自販機に駆けて行った。

だけどその時の僕は失念していた。
"タバコの自販機にはtaspoなるカードが必要"だと言うことに。

どれだけお札をねじ込もうと、自販機は光すらしない。
なんで?と横を見ればカッスカスに掠れた時でtas…oの文字が。そうだ、これにはtaspoがいるのか。
でも無いものは無い。仕方なく哀れに帰ろうとしたその時

通りがかりのオジサンが「アンタ何をしてんだ?」と声をかけてきた。僕はそっとセブンスターを指さし「あれが欲しいんです。でもtaspoが…」と答える。

するとオジサン。懐からtaspoを取り出し、
にこりと笑ってからそれを自販機にかざした。
元気になる自販機、お金を飲み込みボタンが光る!

「ここのQRコードを読み取るとね、taspoが買えるんだよ」
彼はそう僕に伝えると、美しく去っていった。

こうして僕は優しきオジサンの助力の元、推しと同じ煙草を購入することが出来た。あんまりに嬉しくてその日は「やることリスト:たすぽ」とだけメモし帰宅。
ウキウキでセブンスターを推しと同じ持ち方で吸い、手元だけでも推しとシンクロした。最高だった。ニコチンよりも推しが1番脳に効く。ありがとう推し。Love。

そして今日。
やることリストを見直す癖のない僕は
またもtaspo無く自販機の前に立ちすくんでいた。

流石に毎回taspoの妖精を待つ訳にも行かないので
taspo作ろう!と自販機にあるQRコードを読み込んだが
出てきたのは「このサイトにアクセス出来ません」の文字。

何度読み込んでも正しいサイトに辿り着けず、こうして僕は今日もtaspoを得ることが出来ずに、ひとり悲しく自販機を見つめる冒頭へと戻るのであった。

立ちはだかるtaspoの壁。
いつか乗り越えられる日がくるのかな。

おわり


※喫煙者のフレンズから「コンビニで買えばtaspo要らないよ」と言われました。仰る通りです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?