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これからの未来、わかることとわからないこと④


 とうとうこのワークシフトシリーズもこれで最後。6月はこの本とひたすら向き合ってきた。情報量が多いからどこからかじればいいか悩んだけど、なんとかここまで来れた。早速第4部の中身を覗いていくことにしよう。

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 世界で起きているめまぐるしい変化によって、仕事に対する固定観念が少しずつ形を崩してきており、新しい選択肢や機会が増えてきている。あらゆる可能性を自分のものにするには、主体的な行動が不可欠になり、目の前に現れる多くの選択を自分の責任で行わなければならない。


第2部で話したような漠然とした暗い未来を進むか、前章のような主体的に築く明るい未来に歩みを進めるかを決めるのは自分しかいない。じゃあ明るい未来の道を疾走するには何が必要なのか。著者は従来の観念、知識、技能、行動パターンを「シフト」する必要があり、大きく3つが求められると考えている。


 第1のシフト 専門技能の連続的な習得とゼネラリストからの脱却


高度なテクノロジーのおかげで今では単純で大量生産型の作業はほぼ機械がその役割を担っている。そのため、専門分野の知識や技能を自分の武器にしないといけない。


「なんでも平均的にできる人」がどんどん生き残れなくなっていくのだ。このシフトについて、著者は2つの資質が重要だと見ている。



(Ⅰ)専門技能の連続的習得


未来の世界でニーズが高まりそうなジャンルや職種を選び、「高度な」専門知識と技能を身につける。ただし1つのジャンルに固執することなく、必要に応じて変えていき、その技能を次々と習得していく。


言うまでもないけど、専門的なことやったら何でも習得したらいいというわけではない。専門技能を強みにするには、「価値を生み出す」「希少性がある」「他人に真似されにくい」という3つの条件が必要である。



また、こういった専門技能の習得には当然膨大な労力と時間、時には試行錯誤を要するけど、なによりも「自分が好きな」仕事を選ぶほうが物事はうまく進むと著者は強調している。


「子供のためだから」という親のエゴによって親に与えられた道だけを進んで好きでもない仕事を長年やって、年を取ってから激しい後悔に苛まれている人は多い。


 専門技能にこだわりすぎることで陥ってしまう落とし穴にはくれぐれも注意する必要がある。それは「広い視点を知らない間に失う」こと。


昔は1つ専門技能があったら食いっぱぐれることはなかったけど、現代はそんな一筋縄ではいかない。繰り返すけど、必要に応じて複数の高度な知識と技能を融合させることが不可欠である。それを成し遂げるには大きく2つの方法があると著者は言う。



・特定の専門分野の域を超えた人的なネットワークを作り、そこであらゆる知識や技能を組み合わせる方法。これは第2のシフトになるが、後で説明する。



・自ら複数の専門技能を習得する方法。これが第1のシフトの要であるが、いわゆる「専門技能の連続的な習得」である。この方法を実践して成功した人の一例としてヘザー・マグレガーという人のキャリアを載せておく。



「株式ブローカー」→「企業経営者」→「コラムニスト」→「喜劇女優」



ここまで多様なジャンルのキャリアを歩んだ人は稀すぎないかって思うかもしれないけど、こういったキャリア形成を実現でき、現代や未来にはあらゆる可能性が溢れていることを示すにはもってこいの例だと思う。


(Ⅱ)セルフマーケティング


自分にはどんな能力があり、何が長けているのか、どんな強みがあるかを相手に納得させられる材料を確立する。グローバル社会で生き続けるにはこのような日々の努力を無視することはできない。


これからは複数の会社や顧客を相手に働く人が増え、それに伴って自分の存在を他人に印象づけさせ、際立たせることが大切になる。そのために有効な2つの方法を紹介する。


自分の刻印と署名を確立する。誰が見ても自分がこの仕事を成し遂げたとわかるような印のようなものをつけておく。


例えば工芸品では裏を見るとサインなのかマークのようなものが残されているのを見かけることがあるけど、これはまさにその作品を作った人が自分であることを示すために記されたもので、決して落書きや乱丁ではない。


ほかにも、映画やドラマの一番最後には制作に関わった全ての人の名前が出てくるが、これも自分が作品に携わったことの証明であり、自分の存在をはっきりと世に示している。


ギルド(同業者組合)やそれに類する組織に作り、属すること。医師や研究者のような専門家に倣って、特定の分野のコミュニティに加わることで大規模なプロジェクトに参加したり、情報や知識を共有したり、評判を周りに拡散させる。これによって、どこへ行っても専門技能の持ち主として認知してもらい、信憑性のある能力証明を確立できるのである。


 第2のシフト 孤独な競争から協力して起こすイノベーションへ


第1のシフトには矛盾するところがある。それは大勢の中に埋め尽くされないように独自性のある専門技能を習得する一方、大勢の人との緊密な関わりがこの先に求められることである。


急速なグローバル化によって、個の能力だけでは不十分になってきている。問題や課題の難易度や複雑さが増していることから、多くの人のノウハウや知識、能力を融合することが欠かせない。


では、未来に必要となる人的ネットワークとはどんなものなのか?著者によれば、主に3種類あるという。


ポッセ 

これは少人数の(多くても15人)グループから成り立っている。必要であればすぐにサポートや支援、助言などを与えてくれる人たちのことをいう。


どうしても外せない点は、ポッセを作るには、相互の全面的な信頼がなければならないこと。数回会っただけや人から聞いたことで知っているというような浅い人間関係ではなく、なんらかの活動を共にしたことによって「あなたの力になりたい」と思ってくれるような関係を築いていることが欠かせない。


また、濃厚なポッセを確立するには他人と協力し、ネット間の繋がりであったとしてもうまくコミュニケーションをとって、多様性の強みを生かすことも大切になる。


・ビッグアイデア・クラウド

これは自分のネットワークの外にいる人と繋がっている必要がある。友達との繋がりはポッセであるのに対して、友達の友達の繋がりがビッグアイデア・クラウドにあたる。要するに、自分とは違うタイプの人間との繋がりである。


また、このコミュニティーは人数が多ければ多いほど機能を果たしやすい。


とある研究によれば、ポッセのような密接な関係で成り立つグループよりも、ビッグアイデア・クラウドのようなゆるい関係で繋がっているグループの方が、多くの幅広い情報を入手できる可能性が高いという。


このコミュニティーの例としてはヤフー知恵袋がそれに該当するらしい。そしてこのようなオンライン上での不特定多数の力を利用して問題解決を目指す「クラウドソーシング」は現在でも多方面の分野で実践されている。


・自己再生のコミュニティーを築く

近年でも懸念されているのが、ネット間での繋がりが強すぎるが故に生身の人間と関わる機会が減り、孤独に苛まれるリスクが高まっていることである。「子供部屋おじさん・おばさん」という言葉はまさに現代の社会問題を象徴しているといえるんじゃないか。


自己再生のコミュニティーとして最強なのが、友情による結びつきであるという。これは先に挙げた2つよりも圧倒的に難しく、それなりの時間が必然的にかかる。自分に安らぎや活力を与えてくれる人の見極めやそういう人との出会いはそう簡単にできるものではないからだ。


古代ローマの偉人、キケロはこういった結びつきの重要性について次のように言っている:


「世界で最も強い満足感をもたらす経験とは、地球上のあらゆる題材について、自分自身に向かって語るのと同じくらい自由に話せる相手を持つことである」。


つまり、利害関係による結びつきでなく、心からの結びつきがある人を持つことが今後ますます重要になってくるのではないか。


 第3のシフト 大量消費から情熱を傾けられる経験へ


このシリーズではもううるさいくらいに言ってきたが、生存し続けるために、給料をもらい、たくさん消費するために仕事をするという概念が崩されてきている。本書ではこれを「古い約束事が崩れはじめた」と言っている。


たとえ会社に気に食わない人間がいたとしても、お金さえもらえれば、多少嫌な仕事でも続けないといけないという常識(とされていた)が若者を中心に遠ざけられている。


未来の時代にこそ、いや今こそ情熱を抱けるものを働き方の中に取り入れるべきだろう。


著者は、このシフトが重要になってくるのは社会の変化によって従来の伝統的な働き方の形態が崩れ、そのかわりにさらに大きな自由機会を手に入れられる可能性があるからである、と言っている。


しかし、そういったチャンスを勝ち得るには、自分とより向き合うことが不可避である。自分がどんな人間でありたいのかを考えることはもちろん、


自由と機会という恩恵を得るためには、どんな選択肢があるのか、またその選択肢にはどんなメリットとデメリットがあるかを一つずつ塾考しないといけない。


このシフトで求められることは、選択肢を明確にした上で選択を行い、選択の結果と代償を受け入れることであると著者は言う。


今後は「いくらお金を持っているか」「何を買った、所有しているか」というお金と消費ではなく、「何を経験したか」に価値が置かれる時代が訪れる可能性が高いと見ている。


自分で自分の未来を築かない限り、未来で生き残ることは非常に難しくなるのだ。


 以上が第4部の超大まかな概要である。


これから就活を控えている人や転職で悩んでいる人、働き方の選択肢をたくさん持ちたい人はぜひこの本を一読してみてはどうかな。





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