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想像と現実の、勝手に美しいジュエリー。

先週末、お願いしていた原型とサンプルがいくつか届いた。通常のデザイナーさんだと、きっとこの瞬間をワクワク楽しみにしながら、届いた荷物の封をいち早くあけるのだろうが、私はどうしてもワクワクしたことがない。はじめの頃からそうだったかは覚えていないが、いつからか、サンプルが届いても封を開けたくないし、気持ちも沈んでいる。その日に開けないことも珍しくない。

それは、今まで幾度となく繰り返されてきた落胆によるものだと思う「きっと、思った通りのモノではないのだろうな・・・」と、どこかで思っている。これまで、死ぬほど商品をつくってきたけれど、(軽く1000型以上はつくってきた。)ファーストサンプルをみて、心から「いいじゃん!」と思ったことは、ほぼ無い。自身の力の無さだと実感するが、私の頭の中にある想像ジュエリーは、もっとずっと美しいのだ。

しかし、しばらく時間が経つと「あぁ、こんなものかな?」「ん、悪くないのか?」・・・「いいじゃん。」と思えてくる、「アホなのか?自分。」妥協とも思えるが、そもそも職人さんは私が指示した通りに作ってきてくださっているのだから、当たり前のこと。勝手な想像で夢が膨らみ過ぎて、頼んだモノ以上にキラキラにピカピカに美化されているのだ。(もちろん中には本当に粗悪なものもありますよ。)

頭の中のジュエリーは、全体像はボンヤリなのだが、細部はめちゃくちゃ鮮明で具体的。角がピシッと立っていたり、曲線は植物の蔦のように軽やかだったりと、自分勝手にものすごく美しい。ジュエリーのサイズではなく巨大なイメージでみえているのだろう。

そして、実際のサンプル修正も加えながら、想像のモノと現実のモノとが磨り合わさって、同一のジュエリーになってゆく。最終的には「いいじゃん!」と思えるものを商品として、お出ししています。

それでも、今もサンプルや原型が届くと少し憂鬱で、封を開けるのが苦手だ。いつの日か、ワクワクして封をあけ、最初から「いいじゃん!」と感嘆の声をあげることを夢みている。

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