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耐える力

母は、私が物心がつく頃から
よく入退院を繰り返していた。

そんな母のそばで育った私は
ネガティブ・ケイパビリティが養われたと思う。

ネガティブ・ケイパビリティとは
「どうにも答えの出ない
どうにも対処しようのない事態に耐える能力」
という意味で

幼い頃の私にとって、体調が悪くなった母に
治療も看護も出来るわけではなく
ただ、ただ回復を待つことしか出来なかった。

それでも、医学の様々な進歩のおかげで
母はその都度、回復していた。

ところが、ずっと元気だった父は
ある日、末期の病と診断され
それから、たった3ヶ月で他界してしまった。 

その時も、どうにもならない事態であって
ネガティブ・ケイパビリティを発揮した気がする。

社会に対して成果を上げるためには
ポジティブさも必要だろうが
「生きていく」ということに関しては
ポジティブを意識するよりも
ネガティブな状態に対する
「耐える力」が必要な場面が多い。

私たちは、この3年間
ネガティブ・ケイパビリティを必要とされる
理不尽な日々を過ごしてきた。

そして、それは明確な期限がないまま
グラデーションのように
緩やかに変化していくことだろう。

だからこそ、ポジティブさを強要するのではなく
ネガティヴさも重要であることを忘れずにいたい。


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