見出し画像

反社の奴隷!?「闇堕ち弁護士」が生まれる事情|闇金ウシジマくんの真鍋先生の最新作『九条の大罪』(2)

「九条の大罪」第2巻が発売されましたねー。

今回は「家族の距離」編ということで、九条先生の家庭事情(絶縁中の鞍馬家)が紹介されるともに、父親と同期の二人の師匠、流木(ながらぎ)弁護士・山城(やましろ)弁護士が登場します。

前回は、九条先生は悪そうに見えて、実は「正統派の刑事弁護人」だと説明したのですが、今回の山城弁護士は、本物の「黒い弁護士」という設定です。認知症の老人に、全額寄付の遺言書を書かせて、一家の遺産を全部掻っ攫っていく片棒を担いだりしてますもんね。

第2巻は、そんな山城弁護士と九条先生が対決を始めるわけで。。。。ということで、今回は「こんな弁護士って本当にいるの?<パート2>」的な話です。

1:弁護士が知識を悪用するとホントにヤバい

きっと今どき弁護士っていうのは「一人残らず、正義の味方・・・」と信じている人は、もういないんだろうなぁと思うのですが、その点は(残念なことに)ご想像の通りですね。

いわゆる「闇堕ち」して、反社会的な活動の片棒を担ぐことになっている弁護士は少なからずいます。

しかも弁護士は、法律の専門家。厄介なことに「人の財産や権利を動かすこと」についての専門家です。その気になれば、法律に無知な関係者を言いくるめて、他人の財産さえどうとでもできてしまう知恵を持っています。

そのことは、この第2巻の中で、主人公のもう一人の師匠、流木弁護士が「法律は悪用すれば極めて非道徳になる」「依頼者を騙すのは簡単」と語る通りなんですね。

とはいえ「当初司法試験を受けるときから、ダーティーな世界に向かっている弁護士」というのは、そうそうたくさんはいないわけで・・・・

「どうしてそんな弁護士がでてくるのか」という話をまずしたいと思います。

2:「非弁提携」が闇落ちの入り口

弁護士業界に入ってすぐ言われることに「非弁提携(ひべんていけい)に気をつけろ」ということがあります。非弁提携というのは「弁護士でないもの(非弁護士)」との提携のこと。

業界では「事件屋」なんて言い方もしますが「先生においしい事件を紹介してあげるんで、いろいろと協力してくれませんか」と弁護士の力を悪用しようと近づいてくる輩が昔からいるんですね。

狙われるのは、比較的独立して間がない世間知らずの若手弁護士。もっと言えば、彼らのターゲットは、「金や仕事に困っている弁護士」です。

最初は、普通の事件の紹介をして恩を売るところから始めて、弁護士のガードが下がってきたところで、ヤバい事件に関与させて、何か下手を打ったところで弱みを握って、徐々に言いなりにしてしまうのです。

弁護士には、大学までずっとエリートコースを歩んできた、世間知らずの優等生の方もいて、やや脇の甘い方もいますから、そんな方が百戦錬磨の事件屋に弱みを握られると、あっという間に取り込まれてしまう、なんてこともあるのです。

借金の形に弁護士印を預かられて、自分の知らないところで、弁護士名義の書類がバンバン作られてしまうなんて事例もあるくらい。

3:山城弁護士「ウシジマくん」に嵌められる

今回の山城弁護士も、経緯からすると、そんなパターンのようなんですよねー。

有名な弁護士になったところまでは良かったが、投資に失敗して多額の負債を抱え、その肩代わりを反社会的勢力にしてもらったことで、弱みを握られてしまった様子。もう一歩踏み込むと、その投資を紹介したのはお客さんのようですし、その時点からすでに嵌められてしまっていたのかもしれません。

ちなみにこれって「ウシジマくん」にもそんな話、ありませんでしたっけ?投資話を持って行って、大きな損をさせて、さらにそこに貸しつけて、相手の弱みを握っていくっていうシナリオですね。真鍋先生が設定を書いていると思うと、なんかリアリティがすごいですね。

弁護士って、他人のトラブルの解決は得意なのですが、まさか自分がターゲットにされるとは思っていない人が多くて、詐欺事件の被害者になることって、結構あるんですよね。しかも、自分の失敗を認めることがプライド的に嫌だったり、公表すれば仕事の評判に響く様に考えてしまったりして、警察や周囲に相談・連絡したりするのも苦手。一人で抱え込んで大怪我をしてしまう人が多かったりします。

山城弁護士も、家族と距離感があって、自宅にも居場所がなく、ホテル暮らしの設定。自分の苦しい胸の内を、相談できる心開ける相手も周囲にいなそうで。。。。

なんというか、ほんとリアルな設定ですよ、コレ。私もなんとなく目に浮かんでくる弁護士が何人かいたりして。孤独なプロフェッショナルって結構います。

こうなると、金を稼いで贅沢したり女性を囲ったりして、一時凌ぎでも、苦しみを紛らわせずにはいられない。今後の事件の首謀者となる菅原社長のような、金払いのいいクライアントも抱えているけど、実際は、弁護士の知識をいいように利用されて、片棒を担がされていることはわかっているから、クライアントとの間に信頼関係があるわけでもない。

法律知識という武器は持っているけども、どこか孤独で寂しさや虚しさを抱えている、実に人間らしいキャラクターとして、山城弁護士は描写されていますよね。だから何だか憎めないんだよなぁ。。。

4:九条先生の「魅力」も徐々に描かれる

これに対峙する九条先生の側も離婚していて、誕生日でも自分の娘と会わせてもらえず、実家からも勘当されていて、何も持たないテント暮らしの日々だったりします。とはいえ、ビルの屋上で青空を見上げてのキャンプ的な生活も心地良さそうに描かれていますよね。

烏丸弁護士や壬生さんなど関係者との関係でも、ほどよい緊張感のある対等な協力関係を築いている様子で。

断られ続けて困り果てている顧客(家守さん)の立場に思いを寄せ、ためらいを覚え、悩みをぼやいたり、周囲に相談しつつも、やがては元々のボス弁である山城弁護士との対決に向かう。

こんな風に着飾ることのない、等身大の姿で過ごす弁護士は、かなり珍しいですね。しかも、度胸があって人情派、クライアントのためにできることはなんでもする構えの九条先生の魅力がこの第2巻では徐々に描かれてきています。

銀座のクラブに足繁く通い、顧客ファーストの方針も捨ててしまった。やってきた九条弁護士をなんとか言いくるめようとするも通じないと分かれば、ヤクザまがいの恫喝をする。そんな山城弁護士にも、対照的な淡々とした姿勢で望みます。

流木弁護士のセリフの通り、九条先生は「山城弁護士を止めにかかっている」部分もあるんでしょうね。恩もある育ての親が、自滅の道を辿っているのは、見るに見過ごせないというところなんでしょうね。そういえば弁護士業界、まだこういう師弟関係は何気に残ってたりしますね。

5:強者と弱者が「紙一重」の世界

そしてこの第2巻でも、九条先生の「弱い立場の人への共感」が方々に現れていまよすね。第1巻の終わりで始末されてしまった金本くんの、引き取り手のない犬も引き取ったり、加害者側であるその親父さんの心細さにも、さりげなく心を寄せてみたり。

そこには、強者と弱者が、ちょっとしたことで入れ替わる、紙一重の世界が描かれています。そんな現代のリアルを知るからこそ、九条先生の眼差しは、誰に対しても優しいのでしょうね。ちなみにこれは、作者の真鍋先生の現代を見る眼差しともいえますね。

さてこの後は、ダーティーな事件に加担してしている後ろ暗さと不安ゆえに、鉄壁の法律武装をこしらえた山城陣営に対し、フラットな信頼関係でつながる九条陣営が、入手した動画で揺さぶりをかける展開の様子。

法廷で争われる法的な構成や証拠の優劣ばかりが勝負どころじゃないという、これもまた、裁判の現実をうまく映しとる形で描かれています。ここからの展開もまた、楽しみですね。第3巻は8月末だそうです^^

動画バージョンはこちらです。


価格以上の価値があったという人はサポートいただけると嬉しいです!いただいたサポートは子供達のお菓子かオモチャにまわさせていただきます^^