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地方自治体にCIOは必要か?

 CIO(Chief Information Officer)やその補佐官は、デジタル化に重要な役割を担うと言われて久しいですが、果たしてそうでしょうか?IT化やオンライン化を進めるだけであれば、そうかもしれません。ところが、デジタル社会を語る上でオンライン化というのは一部でしかない上、どの自治体においてもデジタル化は黎明期であり、情報システムの設計・維持・管理に長けている人材では、行政のデジタル化を賄うことはできません。
 「IT化やオンライン化」と「デジタル化」の混同は、行政職員の皆様にも広く浸透してしまっているのが現状です。この混同により、これまでのように「処理と分配」に集中されてきた業務の効率化を絶対正義としてしまう空気に行政機関は支配されがちです。
 一方でデジタル化の恩恵は、市民の皆様に、なるべく負荷の少ない方法でサービスを提供するため、業務の形態がプラットフォーマーへと変化することにより、格段に向上したサービスが生まれることにあります。

 自治体組織における現在のCIOの位置付けは、管理者としての側面が強く、政策立案の権限を与えられているケースは多くありません。それでは、自治体のデジタル化には、どのような人材と権限が必要なのでしょうか?

 新たな社会に適応し、市民目線で使い勝手の良い自治体を作るには、様々な要素が必要となります。
 ①社会全体のアーキテクチャを設計する資質
 ②設計思考から生まれた政策の合意を形成する資質
  (首長、産業、金融、そして市民との合意を形成する)
 ③それらを具現化するための技術的知見と人的ネットワーク

 つまり、情報システムを管理するためのCIOではなく、デジタル政策を立案するためのアーキテクトとしてのCDO(Chief Digitalization Officer)であることが必要となります。一方で、このような資質を兼ね備えた人材は、外部に目を向けてもほとんどいないというのが現状ですので、補佐官を内外から登用し、PMO(Project Management Office)化することにより、PM(Project Manager)であるCDOをサポートする体制を整えます。

 また、自治体DXはオンライン化が目的ではなく、行政改革と一体ですので、従来のCIOが担ってきた情報システム管理に対する権限に加え、デジタル化に逆行した業務プロセスに対して勧告する権限を持たせる必要があるでしょう。その権限の幅が、首長のデジタル化に対する意志の強さと図ることができます。自治体によっては、それぞれの理解度により抵抗が生まれる場合には、せめて首長に諮問できるようにしておいた方が良いでしょう。
 そして、何より大切なのが、これらの勧告や諮問の内容を市民に公開してあげることです。デジタル社会の絶対正義は意思決定プロセスの透明化ですので、誰がどのような理由で賛成・反対したかを市民に示しておくことは極めて重要です。

 行政職員の本分とは、市民への奉仕であります。政府が示すデジタル化の方向性を正しく理解し、変革への認識を持つことが、自治体が来たるべきデジタル社会の到来への対応を可能とする鍵となることでしょう。

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