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読書に勤しむ秋


はじめに


読書の秋2020!ということで、下記コンテストにちなんで、課題図書を読む、および、その感想文を書こうと思いましたが、単純に「一冊を読んで、感想を述べる」という枠に収まらなくなってしまいました。

あらかじめその旨をお伝えしておきますが、それでも最後まで目を通していただけたら幸甚の至りでございます。


コンテストの詳細はこちら↓


必ずしも、このコンテストの趣旨にかなうものではないでしょうが、どうにかひとまとまりのものとなるように、今の時点で自分自身が思うことを並べていこうと思います。

あくまで、一冊の本を読むことで、触発されるところは多いし、また、いろいろな広がりをもたらすものだということを、言葉を尽くして展開していく次第です。


課題図書


『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」」』山口周/光文社(光文社新書)(2017年)


本書は、近年、世界のエリートが「美意識」を鍛えている傾向を取り上げながら、なぜその「美意識」を鍛えることが重要なのかを展開しています。

「美意識」とはこうであると、なかなか容易に定義しづらいものとは思いますが、ここで言う「美意識」とは、単純に芸術・文化の鑑識眼のようなことだけでなく、哲学、文学、法律などを含んで、何をもって良しとするかの判断基準のことを表すように思います。


また、次にあるように、アート(直感、感性)の領域を多く取りながら、しかも、サイエンス(論理、理性)をも含んでどのように判断していくのか、経営における絶妙なバランス感覚のようなことを言うのかもしれません。


本書における主たるテーマは「経営におけるアートとサイエンスのバランス」(p.15)


高名な経営学者のヘンリー・ミンツバーグの言うには、"経営というものは「アート」「サイエンス」「クラフト」の混ざり合ったもの"とあります。(p.52)

アートを「直感、感性」、サイエンスを「論理、理性」として特徴づけ、さらに、アートの特徴のひとつとして「熱いロマン」、同様にしてサイエンスを「冷たいソロバン」と表している箇所(p.61)を見ると、ちょうど対比の関係になっていることがわかります。

これに、「クラフト:実践、実績」を加えるとして、どれも等しく重要であるが、アカウンタビリティ(説明責任)の格差があることを考えたり、それぞれの重要性を鑑みたりすると、先にアートを持ってきて、それをサイエンスとクラフトで脇を固めるのが良いとひとつの例を挙げています。

それぞれの特徴から、サイエンスとクラフトは拮抗した勝負をするけれど、アートは、いわばブルドーザーとショベルカーのところに、掃除用のモップで参加するようなもので、少し異なる種類のものだけに、どうしても劣勢に立ってしまいます。

そうやって、今は、どちらかというとアートは"ないがしろ"にされている、または、そういう傾向が強いのかもしれません。

ただ、その重要性は容易に測れないほどに、実際には"かなり"重要なものであるために、むしろアートを重視する方が、ビジネスにおいても成功していくのではないか、それが本書を貫いているテーマです。


また、これに関連して、「真・善・美」とは、物事を判断するのに何をモノサシとするのか、それを端的に表しているものと言えそうです。

具体的には、「何が(真偽の)真であるか」、「何が(善悪の)善であるか」、「何が(美醜の)美であるか」を判断する場合、

【これまで】は、「論理」、「法律」、「市場調査」といった「客観的な外部のモノサシ」に頼っていたのに対し、

【これから】は、「直感」、「倫理・道徳」、「審美感性」といった「主観的な内部のモノサシ」に委ねるのが良いではないかというものです。


個人的に良いなと思ったのは、"どう「美意識」を鍛えるか?"という流れから"哲学に親しむ"の箇所で、

その時代に支配的だったモノの見方や考え方に対して、批判的に疑いの目を差し向ける。誤解を恐れずに言えば、これはつまりロックンロールだということです。「哲学」と「ロック」というと、何か真逆のモノとして対置されるイメージがありますが、「知的反逆」という点において、両者は地下で同じマグマを共有している。(p.236)

とあるのが、我が意を得たりという気持ちになり、痛快に思いました\m/


こうして、いかにアートの感覚を養っていくのか、いくつかの具体的な提案をしながら本書はしめくくられています。

ここでは、内容をつぶさに並べ立てるより、実際に手に取って読むのが良いと思うので、大まかな内容を取り上げておくに留めておきます。



個人的には、"アート"というものは、ひとつの問題提起であるととらえていて、たとえば、「正しいか、正しくないか」を見て判断するのがサイエンスだとしたら、アートは、「その正しいかどうかを問うていること自体、どうなの?」と呼びかけるものであるように思います。

正誤を問うこと自体を問いただすような姿勢で、自分たちが置かれているとか、直面している枠組みをも懐疑的に眺めることで、別の、新たな視点が生まれることもあることでしょう。

アートとサイエンスとでは、どちらが優位にあるとかどうとかを比べるものではなく、脳みそもあって心臓もあるような、どちらもそれぞれに大切なものであるように思います。


そして、「あとがき」の最後にあるように、自分自身で良し悪しを判断できるモノサシを持つことが、何より大切だと思います。

読者の皆様におかれましては、本書が、世の中で通説とされる「生産性」「効率性」といった外部のモノサシではなく、「真・善・美」を内在的に判断する美意識という内部のモノサシに照らして、自らの有り様を考えていただくきっかけになれば、著者にとってこれほどの幸福はありません。(p.257)



自分自身の読んだ順番としては、最近出たものからさかのぼるようになっていますが、下記2冊もあわせて読んでいると、日本を覆っている問題や抱えている課題が、いかに複雑かつ構造的になっているかがわかります。

大切なのは、現状がどうであるのかをしっかり把握することで、そこから、大きく改変しないも良し、あるいは、大いに打破するも良し、それは個々の判断で取り組んでいくということではないでしょうか?

一旦は絡み合った糸を解く、それでもって、新たにどのような結び目をつくっていくのかは、今後また活発に議論を交わしていけたら良いように思います。


『劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか』山口周/光文社(2018年)


『世界観をつくる 「感性×知性」の仕事術』水野学・山口周/朝日新聞出版(2020年)



アートの祭り


今回の内容に関連して、米米CLUBのボーカル&司会、カールスモーキー石井こと石井竜也さんの言葉で、個人的にずっと大切にしている考え方があります。


「別に、今の教育がどう、みたいなことを言うつもりはぜんぜんないんですよ。ただ、数字の上での成績とか、そういうつまらないところをひけらかすやつにはなって欲しくない、と思いますね。自分の内面で勝負して欲しい。そういうところのほうが勝負になるよ、とも言いたいし。日本だってチャンスが転がってないわけじゃないから、自分の感性を磨いておいたほうがいいよっていう感じかな。自己主張とかわがままをやりたいんであれば、ね。」(p.166)


『アートの祭り』カールスモーキー石井/幻冬舎(1994年)


いわば、しっかり勉強してテストで良い点を取るとか、良い成績を収めて高い偏差値を得るのも良いけれど、そういうことだけにとらわれないで、音楽や芸術にも目を向けなさいよというメッセージとして、個人的に深く、深く受け止めていています。


この『アートの祭り』の内容は、石井さんの幼少期からざっと振り返り、主に「君がいるだけで」の大ヒットした1992年から、デビュー8周年記念の日本武道館8DAYSを行った1993年あたりにかけて、当時どういうことを思ったり、感じたりしたのかがまとめられています。

時代的には、バブル景気がはじけてしばらく後のことで、近年で言うところのリーマンショック(2008年)や東日本大震災(2011年)の影響が引き続きあり、そして、新型コロナウィルス禍にみまわれた2020年の今年のように、社会のあり方が大きく変わって、自分たち自身も変わらざるを得ないという状況を共通して感じ取ることができます。


確かに、どのような時代においても、今までのやり方では立ち行かないとか、どうにも通用しなくなっているような、そういう時にこそ、想像力をより豊かに働かせるようなことが大切なのかもしれません。

今回取り上げた『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』とともに、今一度、自分自身を見つめ直してみようと思います。


おわりに


果たして、ひとりひとり、できることの精一杯を尽くして、どれくらいのことができるのでしょう?

たとえ、アリの一匹であっても、それが大勢集まればゾウの足元を崩すこともできるように思います。

この社会が、この世界が、少しでも良くなるように、今後も、アリの一匹として歩んでいきたいものです。


『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」」』山口周/光文社(2017年)


今回取り上げた内容に照らし合わせてみれば、絵画や芸術に目を向けてみる、音楽や演劇に興味を持ってみる、落語や歌舞伎に関心を抱いてみるなど、身近なところからできることはあろうということです。

とにもかくにも、あなた自身の好奇心をありありと発揮するようなことは何なのか、それを知るようにしてみるのが良いように思います。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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#読書の秋2020 #コンテスト #世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか