ダンスがみたい!新人シリーズ15

1月5日、日暮里のd-倉庫にて。
9日間、毎回異なるチームや個人が作品を演じる内の1日。
目当てはジャグラーの小辻太一だったが、大塚郁実『It isn't a story about war.』が良かったのでこちらから振り返る。

印象的だったのは前半のシーンだ。
6人が体育座りで連なっている。最前と3番目がゆっくりと後ろへ頭をもたげる。緩慢な動きや薄いベージュのタイツがクレイアニメを思わせる。もたげた頭は後ろの2人の間に入り、するりと後転すると並びが入れ替わる。
意志あるダンサーというよりも、一揃いのおもちゃのようだ。無機質感が心地よい。
他の全てのシーンにおいても、様々な動きをしたあとに元の形へ戻る。ダンサーが自由に動いているシーンでも、繰り返しが人間性を引き去っている。
後半になると動きは激しくなる。1人の女性が繰り返し顔を叩かれている。これが前兆であったのだろうか、最後には全員が全員を抑え合い暴れ合う。
床には絨毯が敷かれているので争いも音は柔らかく、行為の激しさに比して印象は前半の穏やかさを残している。『It isn't a story about war.』というのはもしかすると、この争いの争いに見えなさを指すのかもしれない。

小辻太一『動かせられる』は練られたところとそうでないところの落差が大きく感じられた。
タイトルの通り、ボールに動かされているところの練度は素晴らしい。ジャグリングだけではなく身体の鍛錬もしているようで、しなやかに動きかつボールを操ることに成功している。
1ボールを投げて取らずに避け続けたり、2ボールで1つを取りながら1つを避けるところにはかなりの可能性を感じた。1ボールではボールを投げていながら見せているのは身体であり、2ボールではその主導権において完全な均衡が存在するかにも見えた。
しかしそれだけに、その後3ボールになって通常のジャグリングが続いたのは勿体無く感じられた。
また全体において冗長さがあった。
最初に1分ほど歩くだけのシーンがある。行動としてはあるものだが、今回小辻はTシャツにチノパンと私服と言っていい衣装を着ており、またなぜか少し右重心になっている以外はほとんどくせのない歩き方、立ち振る舞いをしている。とすると我々はそこに何を期待していいものかわからない。ボールを持っていることで予想されるのは行為であってスタイルではない。スタイルがなければそこで作り出される世界もなく、観客がそこへ入り込むこともできない。その後も淡々と投げていったために、全体を通してアイデアの羅列感が否めなかった。
ただそのアイデアのそれぞれは前述のように光るものであったので、そこに一本筋が通せれば、もしくはこれを活かしうる人間に出会えれば、また変わってくるのだろう。

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