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自民党総裁選2020・候補者のネット活用分析から見えてきたもの

●はじめに

9月17日、総裁選を経て菅新総裁が誕生しました。投票結果は、石破茂候補 68票、菅義偉候補 377票、岸田文雄候補 89票(届出順)

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今回の総裁選意おける投票権は、国会議員と都道府県連の代表者各3人のみで限られた方しか選挙権を持たない総裁選です。(日本は、議院内閣制のため総理大臣を選ぶ自民党総裁選においては、一般の国民は自民党員でなければ投票権を持っていません。)ただ、政治のパフォーマンスであっても、選挙期間中は国民に向けて各候補者による情報発信が展開されていました。

今回は、3候補はどのようにネットを活用し、どのようなコンテンツが国民の反響をよんだのでしょうか、そして、今後の政治家の情報発信のあり方をデータを元に新たな考察をしていければと思います。


●今回の調査についての概要

調査期間:9月7日ー14日

調査内容:①各候補者のSNS(Twitter、Facebook、YouTube)の基本的なアカウントデータ集計と活用特徴 

②ポスト内容のより細かいコンテンツ調査(投稿時間、テキスト内容、投稿カテゴリ、ユーザー反応件数、添付ファイル、文字数、行数 、段落数) 

③選挙期間における各新聞記事の件数とネットの検索ヒット数(ネット件数については妥当性が保てないため今回省きます)を採取しました。

スクリーンショット 2020-09-17 19.22.28

これらの採取データ中心に、大きく分けて以下の流れで進めていきます。


①各候補者のネット活用の振り返りとコンテンツ分析

②データで振り返る総裁選2020ー3候補者のネット分析ー

③今回の調査結果のまとめと考察


それでは1候補ずつ期間中の情報発信のあり方について詳しく見ていきます。



※この記事は特定の政党、候補者を指示する記事ではありません。




①各候補者のネット活用の振り返りとコンテンツ分析

●菅義偉候補

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1、使用した発信ツール

◎SNSのアカウントを通常アカウントと分けて活用。主に選対スタッフが運営するTwitter、Facebook、YouTubeを中心とした発信しています。(総裁選WEBサイトからも紐づけていました。)

◎事務所アカウントは、出演時間のアナウンスのみTwitter、Facebook、Instagramを更新していました。


2、他の候補にない発信の特徴とは

◎SNSのアカウントを通常アカウントと分けて活用。事務所用のアカウントと選挙用のアカウントを分けて発信することで、目的にそった活用をしていました。

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◎発信力が高い国会議員と連携・周囲のツイートに恵まれたこと

今井絵理子議員の作成した動画はニュースにも取り上げられました。この動画は、Instagramのリールを使用したものです。リールを使用した動画は、国会議員の投稿では初めてかもしれません。

その中でも特に

◎”SWEET男子”並ぶ”SWEET議員?!”な可愛らしさの一面を周りにいる議員が発信していました。最も反響が高かった菅候補のアカウントから発信している投稿と比較しても、遥かに超えた反響があります。

視聴者からもこういった画像やコメントが溢れていました。

検討するに叩き上げで生きてきた官房長官としてのギャップとのバランスがユーザーには写っていたのではないでしょうか。SNSのコンテンツに関しては手堅い手作り感があり、とても親近感が湧く内容となっています。


3、主な発信コンテンツはーどのようなコンテンツが国民の共感を読んだのかー

●最も反響が高かった3投稿・Twitter編(※菅候補個人アカウントの場合

反響があったコンテンツの特徴としては、菅候補個人アカウントの場合だと出演のお知らせのみの投稿なのですが、中でも特に周りに知らせたくなるような重要度が高い情報がシェアされています。


●最も反響が高かったコンテンツ3投稿・Twitter編(※菅候補選挙アカウントの場合)

菅候補は主にこちらの選挙用のアカウントを解説し使用しておりましたので、こちらのアカウントを深堀していきます。菅候補選挙アカウントの場合は、ユーザーが関心がある具体的政策に群れている投稿が最も反響が大きくなっていました。もしかすると、上記二点の政策(不妊治療の保険適用、携帯料金引き下げ)は、菅候補が掲げる政策の中でも特にユーザーに刺さったニーズの高い政策なのかもしれません。

①投稿時間:9/8 3:53 午後

■投稿内容:「自民党総裁選。菅義偉議員が、所見表明演説会で述べた、
「出産を希望する世帯を広く支援するため不妊治療への保険適用を実現する」が、ネット上で期待の声を中心に大きな話題となっています。不妊治療は、高額な治療費を理由に途中で治療を諦める人が多くいます。」

■添付ファイル:ニュースの記事をシェアによる候補者上半身写真

■画像サイズ:幅:800 高さ:499
■文字数(スペース込み) :122
■文字数(スペース無視) :122
■行数 :8
■段落数 :4



②投稿時間:9/10 7:15 午前

■投稿内容:「昨晩の「news zero」で、菅義偉議員が「不妊治療の保険適用」について、早くて1~2年かかると述べた後、その間は助成拡充を図りたいと述べました。これは保険適用には中医協での審議などが必要なためで、その間、不妊治療に臨む方の負担が大幅に軽減されるよう助成拡大をしたいというものです。」
■添付ファイル:なし
■文字数(スペース込み) :143
■文字数(スペース無視) :141
■行数 :4
■段落数 :2


③投稿時間:9/13 2:53 午後

■投稿内容:フジ「日曜報道THE PRIME」で、菅義偉議員は、
携帯電話料金が世界でも高い水準だと指摘。料金値下げが実現しない場合は、携帯電話会社の電波利用料の見直しを行う考えを示しました。
菅議員は料金4割値下げを提案してきました。『菅氏、電波利用料の引き上げに言及』(時事)https://jiji.com/jc/article?k=2020091300167&g=pol

■添付ファイル:画像1枚(出演されている際の様子)

■画像サイズ:幅:945 高さ:920

■文字数(スペース込み) :132 URLなし
■文字数(スペース無視) :131
■行数 :6
■段落数 :2




●最も反響が高かったコンテンツ3投稿・Facebook編(※菅候補個人アカウントの場合)

①投稿時間:2020-09-07 21:54

■投稿内容:「こんばんは。菅義偉の総裁選特設サイトが立ち上がりました。いよいよ明日から総裁選が始まります。多くの皆様にご覧いただきたく、シェアをお願いします。頑張ってまいります!菅義偉事務所」

■添付ファイル:画像1枚(ポスター候補者本人画像)
■画像サイズ:幅:1000 高さ:521
■文字数(スペース込み) :88
■文字数(スペース無視) :88
■行数 :6
■段落数 :1


②投稿時間:2020-09-08 10:49

■投稿内容:「おはようございます。菅義偉が自民党総裁選挙へ正式に立候補いたしました。本日下記テレビ番組に出演いたします。
〇令和2年9月8日(火)午後1:00~2:00
〇番組名:NHK 所見発表演説会 ※生放送
〇令和2年9月8日(火) 午後3:00~4:00
〇番組名:NHK 共同記者会見 ※生放送
〇令和2年9月8日(火) 午後9:54~10:30
〇番組名:テレビ朝日 報道ステーション ※生放送
〇令和2年9月8日(火) 午後11:00~11:30
〇番組名:TBS NEWS23
以上お知らせします。
ぜひ、ご覧ください。皆様のご支援、ご協力宜しくお願いいたします。
菅義偉事務所」

■添付ファイル:画像1枚(ポスター人物候補者)
■文字数(スペース込み) :279
■文字数(スペース無視) :269
■行数 :15
■段落数 :1

③投稿時間:2020-09-14 08:05

■投稿内容:「おはようございます。本日総裁選投開票日です。
以下テレビ番組で中継されます。
〇令和2年9月14日(月)午後2:00~
〇番組名:NHK 両院議員総会
以上お知らせします。ぜひ、ご覧ください。菅義偉事務所」

■添付ファイル:なし
■文字数(スペース込み) :98
■文字数(スペース無視) :97
■行数 :8
■段落数 :1

●最も反響が高かったコンテンツ3投稿・Facebook(※菅候補選挙アカウントの場合)


①投稿時間:2020-09-09 10:18

■投稿内容:「米国トランプ大統領と菅義偉議員の写真です。
昨日の自民党総裁選演説会で菅義偉議員は、
「外交および安全保障の分野については、わが国を取り巻く環境が一層厳しくなる中、機能する日米同盟を基軸とした政策を展開してまいります。
国益を守り抜く。
戦後外交の総決算を目指し、特に拉致問題の解決に向けた取り組みに全力を傾けてまいります。」
「弾道ミサイルなどの安全保障上の脅威、自然災害、海外に在留する日本国民へのテロの危険、これらのさまざまな緊急事態や危機に対し、迅速かつ的確に対処してまいります。」
と強く決意と政策を述べました。
外交・安全保障において我が国と国民をしっかりと守り、発展につなげる政策を実行してまいります!
#菅義偉  #総裁選」

■添付ファイル:画像1枚(他国の首相との写真)

■画像サイズ:幅:960 高さ:954

■文字数(スペース込み) :310
■文字数(スペース無視) :309
■行数 :9
■段落数 :3

■ハッシュタグ:2


②投稿時間:2020-09-10 16:53

■投稿内容:「菅義偉議員は、官房長官の公務を優先しながら自民党総裁選の活動をしており、分刻みというか秒刻みとも言うべきスケジュールとなっています。短時間でもほっと一息つけるのが甘いお菓子です。
14日の総裁選投票日に向け、全力で頑張ります!
皆様のご支援を何卒宜しくお願い申し上げます!!#菅義偉 #総裁選」
■添付ファイル:1枚(候補者が甘いものを食べている写真)

■画像サイズ:幅:960 高さ:720

■文字数(スペース込み) :144
■文字数(スペース無視) :143
■行数 :6
■段落数 :1
■ハッシュタグ:2

③投稿時間:2020-09-14 08:05

■投稿内容:「いよいよ明日から自民党総裁選が始まります。
菅義偉総裁誕生に向け、
我々「菅義偉を応援する会」は精一杯、必死に活動してまいります。
何卒、菅義偉議員へのご支援を宜しくお願い申し上げます!!」

■添付ファイル:1枚(候補者の政策パンフレット)

■画像サイズ:幅:680 高さ:481

■文字数(スペース込み) :91
■文字数(スペース無視) :91
■行数 :4
■段落数 :1

●最も反響が低かった3投稿・Twitterの場合

共通点として、URLのみのお知らせコンテンツであり写真や動画がないことが特徴です。候補者の顔写真がない文字のみや政党のロゴだと反響が下がり拡散する心理につながらない可能性が高いことがわかります。


●最も反響が低かったトップ3投稿・Facebook



●岸田文雄候補

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1、使用した発信ツール

◎総裁選WEBサイトを中心に、Twitter、Facebook、Youtube、LINEを使用し個人の事務所のアカウントとして発信しています。

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2、他の候補にない発信の特徴は

◎カラフルさよりシンプルさを重視=真面目さが際立つ


◎候補者の中で唯一街頭演説を行う

◎候補者の中で唯一LINEを活用

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◎応援メッセージ動画に出演している人たちの幅が広い

本来の選挙の応援メッセージ動画は、国会議員が主旨ですが、今回は、国会議員だけでなく、岸田候補の家族、地元の支援者など幅広い方が出演。

◎キャッチコピーの他に自らのニックネームを考案しハッシュタグ化


3、主な発信コンテンツはーどのようなコンテンツが反応があったのかー

●最も反響が高かったコンテンツ3投稿・Twitter編

①投稿時間:2020-09-13 13:31

投稿内容:「連日、各方面から応援メッセージを頂き感謝しています。今日は、妻と3人の息子たちからも応援メッセージが届きました。家族の存在は何よりの心の支えです。ありがとう、最後まで頑張るよ!#岸田文雄 #キッシー #自民党総裁選2020 #分断から協調へ【応援動画一覧】
https://youtube.com/playlist?list=PLJYoa0wZ2jEkHBxKmY9XPROygywFXMODF

■添付ファイル:YOUTUBEの動画URLとPR動画

■動画内容:候補者の家族からの応援メッセージ

■文字数(スペース込み) :91

■文字数(スペース無視) :91
■行数 :4
■段落数 :1

■ハッシュタグ:4


②投稿時間:9/14 7:12 午前

■投稿内容:「自民党総裁選2020投開票日を清々しい気持ちで迎えました。これまで多くの皆様から応援頂き、誠に有り難うございました。選挙期間、本当に励みになりました。これから両院議員総会に臨み、渾身の力を込めて最後の訴えをいたします!
#岸田文雄  #キッシー #自民党総裁選2020 #分断から協調」

■添付ファイル:画像1枚(候補者斜め右向き下から撮影したアップ画像)
■画像サイズ:幅:1078 高さ:1522
■文字数(スペース込み) :140
■文字数(スペース無視) :137
■行数 :6
■段落数 :3
■ハッシュタグ:4


③投稿時間:9/13 10:30 午前

■投稿内容:「大坂なおみ選手、全米オープン優勝おめでとうございます!
多様性の大切さを世界に提起しながら戦い抜き最高の結果を出されたことに敬意を表します。私も大いに勇気づけられました!」

■添付ファイル:ニュース記事シェアによる反映画像

■画像サイズ:幅:1024 高さ:717

■文字数(スペース込み) :84
■文字数(スペース無視) :84
■行数 :4
■段落数 :1


●最も反響が高かったコンテンツ3投稿・Facebook編

①投稿時間:2020-09-13 13:31

■投稿内容:文字なし

■添付ファイル:画像1枚(Facebookのプロフィール写真変更による投稿)

■画像サイズ:幅:843 高さ:843


②投稿時間:2020-09-10 12:39

■投稿内容:「米どころ宮城県栗原市にうかがいました。
日本の原風景である田んぼの真ん中で、くるま座になり、おにぎりを頂きながら、いま政治に求められていることを率直に語り合いました。
農業は、経済活動であると共に、地域の自然・文化や防災を支えるかけがえのない営みです。
これら農業の多機能をバランス良く活かす発展が大切です。
コロナ禍の今こそ、多面的な視座に立つ政治のリーダーシップが重要と再認識しました。
#岸田文雄  #キッシー #自民党総裁選2020 #分断から協調へ」

■添付ファイル:画像1枚(候補者が座っておにぎりを食べている様子)

■画像サイズ:幅:1080 高さ:1080
■文字数(スペース込み) :223
■文字数(スペース無視) :220
■行数 :6
■段落数 :1

■ハッシュタグ:4


③投稿時間:2020-09-14 07:46

投稿内容:「自民党総裁選2020投開票日を清々しい気持ちで迎えました。
これまで多くの皆様から応援頂き、誠に有り難うございました。選挙期間、本当に励みになりました。
これから両院議員総会に臨み、渾身の力を込めて最後の訴えをいたします!
#岸田文雄  #キッシー #自民党総裁選2020 #分断から協調」

■添付ファイル:画像1枚(候補者斜め右向き下から撮影したアップ画像)
■画像サイズ:幅:1078 高さ:1522
■文字数(スペース込み) :140
■文字数(スペース無視) :137
■行数 :4
■段落数 :1
■ハッシュタグ:4

●最も反響が低かった3投稿・Twitter編

共通点として、全てメイン投稿にリプライする形のサブ投稿です。トップ5まで一応調査すると、一つをのぞき全てメインに繋がっている“約束”の投稿でした。Twitterの機能上、投稿がメイン投稿の続きとして投稿となるため表示が後方になってしまうことから目につきにくくリアクションに繋がりにくかったと考えられます。またリアクションをおこなうまえに先に動画を見始めるケースも考えられます。

●最も反響が低かった3投稿・Facebook編

共通点として、URLのみで写真や動画がないこと、もう二つはライブ配信投稿であり、ユーザーは配信をみることに夢中になっていることもあり、リアクションする心理には働かなかったのかもしれません。



●石破茂候補

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1、使用した発信ツールは

◎総裁選WEBサイトを中心に、Twitter、Facebook、Youtubeを使用し個人の事務所アカウントで発信しています。

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2、他の候補にない発信の特徴は

◎カラフルなインフォグラフィックが特徴的で視聴者に配慮した画像

(こちらの画像は開票日前日にまとめて投稿されています。ネット戦略なのかとも捉えられますが、国民の納得と共感を呼ぶのであれば立候補を表明し、注目がグッと集まっている早い段階でこちらのインフォグラフィックを投稿してもよかったのかなと個人的には感じます)

ネット選挙専門のスタッフが投稿していると思わせる鮮やかさと一眼見た分かりやすさがとても特徴的です。

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◎自身のイラストを最大限に活用することで親近感と共感につなげる

◎出演情報も全てインフォグラフィックを使用

◎政策に関する質疑応答はYouTubeにて質問ごとにまとめて投稿

◎候補者の中で唯一セグメント方式に動画メッセージを投稿する:地方愛に対するアピールを全面的に行う

◎政治活動以外の合間に見せる素顔も投稿している=しっかり報告


3、主な発信コンテンツはーどのようなコンテンツが反応があったのかー

●最も反響が高かったコンテンツ3投稿・Twitter編

最も反響が高かったものは、こちらの移動中のコンテンツでした。

「先日、東北にお伺いした時、撮っていただいた写真です。この年になってもまだ、知らないことがこんなにあるのかと思うところであります。日本全国、1,724つの自治体ごとに色んな魅力がある。色んな課題がある。そして知恵がある。移動中はできるだけ、そんなお知恵を学ぶ時間に、充てておるのです。」

①投稿時間:9/12 5:36 午後

投稿内容:「先日、東北にお伺いした時、撮っていただいた写真です。この年になってもまだ、知らないことがこんなにあるのかと思うところであります。日本全国、1,724つの自治体ごとに色んな魅力がある。色んな課題がある。そして知恵がある。移動中はできるだけ、そんなお知恵を学ぶ時間に、充てておるのです。」

■添付ファイル:画像1枚(選挙活動のふとした合間・左向き上半身・候補者作業中の写真)
■画像サイズ:幅:1616 高さ:1080

■文字数(スペース込み) :141
■文字数(スペース無視) :141
■行数 :1
■段落数 :1


②投稿時間:9/12 5:36 午後

■投稿内容:「同志の皆様のお力を受け自民党総裁選挙に立候補をさせていただきました。 政治の使命はただ一つ、勇気と真心を持って真実を語ることです。困難な中にあって新しい日本をつくるため、国民の皆様に納得と共感をいただける政治を実現しなければなりません。勝利に向けて全身全霊を尽くしてまいります。」

■添付ファイル:画像1枚(立候補表明した際のスピーチ・候補者上半身右上むき写真)
■画像サイズ:幅:2048 高さ:1365

■文字数(スペース込み) :139
■文字数(スペース無視) :138
■行数 :2
■段落数 :1

③投稿時間:9/8 11:50 午後

■投稿内容:「本日、総裁選挙の所信表明演説を行いました。国民を信じない政治家が、国民に信じられるはずがない。私は、国民政党として、自由民主党は、日本国のために、次の時代のために、全身全霊で臨んで参りたい決意を申し述べました。」

■添付ファイル:動画2分19秒(所信表明演説の動画)

■文字数(スペース込み) :105
■文字数(スペース無視) :105
■行数 :1
■段落数 :1

上記の他には以下の2つのコンテンツもとても高い反響ありました。


●最も反響が高かったコンテンツ3投稿・Facebook編

石破候補は選挙期間以外は、ブログにてメッセージを発信していることが多いが、こうしたふとした瞬間の写真は日頃から期待する見たいユーザーも多いのではないでしょうか。

①投稿時間:2020-09-12 17:37

■投稿内容:「先日、東北にお伺いした時、撮っていただいた写真です。この年になってもまだ、知らないことがこんなにあるのかと思うところであります。日本全国、1,724つの自治体ごとに色んな魅力がある。色んな課題がある。そして知恵がある。移動中はできるだけ、そんなお知恵を学ぶ時間に、充てておるのです。」

■添付ファイル:画像1枚(選挙活動のふとした合間・左向き上半身・候補者作業中の写真)
■画像サイズ:幅:1616 高さ:1080

■文字数(スペース込み) :141
■文字数(スペース無視) :141
■行数 :1
■段落数 :1

②投稿時間:2020-09-08 12:06

■投稿内容:「同志の皆様のお力を受け自民党総裁選挙に立候補をさせていただきました。 政治の使命はただ一つ、勇気と真心を持って真実を語ることです。困難な中にあって新しい日本をつくるため、国民の皆様に納得と共感をいただける政治を実現しなければなりません。勝利に向けて全身全霊を尽くしてまいります。」

■添付ファイル:画像1枚(立候補表明した際のスピーチ・候補者上半身右上むき写真)
■画像サイズ:幅:2048 高さ:1365

■文字数(スペース込み) :139
■文字数(スペース無視) :138
■行数 :1
■段落数 :1

③投稿時間:2020-09-10 11:06

■投稿内容:「昨日、ふじみ野の幼稚園に伺いました。園児のみなさんが生きるのは人生100年時代です。様々な生き方、ライフスタイルが生まれる時代、すべての人が幸せを実感できるような子ども、子育て政策が必要です。そんな思いを新たにしました。」

■添付ファイル:画像2枚(候補者前向き笑顔と園児が好きなキャラ・園児のみなさんバックに手を振る候補者後ろ姿)
■画像サイズ:幅:1706 高さ:960、幅:1710 高さ:959

■文字数(スペース込み) :110
■文字数(スペース無視) :110
■行数 :1
■段落数 :1

●最も反響が低かった3投稿・Twitter編

以下3つとなりました。

共通点としてあげるならば、全てメイン投稿にリプライする形のサブ投稿です。トップ5まで一応調査すると、全て“続きです”の投稿でした。Twitterの機能上、投稿がメイン投稿の続きとして投稿となるため表示が後方になってしまうことから目につきにくくリアクションに繋がりにくかったと考えられます。またリアクションをおこなうまえに先に動画を見始めるケースも考えられます。

●最も反響が低かった3投稿・Facebook編

以下3つとなりました。

一番上のコンテンツのリアクションの低さに関しては、写真の印象ではないかと考えられます。他のメディア出演情報の写真は、マスクはしておらず顔は正面むきはっきりと写っておりインパクトが高いものが多いのに対して、この写真は、顔が右をむいてかつマスクをしているため人物としての印象が薄くなりやすい可能性があります。下段2つに関しては、投稿時間も関係がある可能性が高いです。 2020-09-13 11:06、2020-09-13 11:09と連続投稿されており、Facebookの機能上連続投稿はタイムラインが流れやすく目に止まりにくかった可能性が考えられます。


②データで振り返る総裁選2020−3候補者のアカウントにおけるネット分析−

各候補者のネット活用を振り返ったところで、実際のデータを展開していきます。(菅候補の場合は、事務所のアカウントと選挙用のアカウントと併用した結果を含んでいます。)

●Twitter

全体のfollower増加総数で見ると菅候補の個人アカウントが最も伸びていました。

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以下は、各候補者のTwitterのPost数です。選挙期間中の前半においては3候補とも同じペースのTweet数でしたが、後半から岸田候補の連続投稿が集中して見られ期間中においては岸田候補が最も多い69Tweetでした。菅候補47Tweet、石破候補42Tweet(途中で13投稿削除されている)です。

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次に期間中におけるコメント獲得総数の推移です。石破候補と菅候補が競り合っていましたが、若干菅候補が3180コメント獲得し最も多い数値になりました。石破候補2980コメント、岸田候補2130コメントです。

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そして1投稿あたりの平均コメント数としては、菅候補が期間中最も高い数値でした。菅候補は9月14日が最も高い3108、石破候補は9月14日が最も高い2980、岸田候補は9月14日が最も高い2130です。

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次に期間中における被RT獲得総数です。石破候補と菅候補が競り合っていましたが、最終獲得総数は石破候補11133RT、菅候補11029RT、岸田候補7503RTの結果となっています。

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そして1投稿あたりの平均被RT数としては、石破候補は9月9日が最も高い415、菅候補は9月14日が最も高い235、岸田候補は9月14日が最も高い114です。


likeにおける推移については、菅候補と石破候補が競り合っている数字でしたが、若干石破候補がリアクションが多い結果となりました。期間中のlike獲得総数は、石破候補55379like、菅候補51556like、岸田候補31801likeです。岸田候補に関しては期間中のポスト数は最も高かったもの、シェアやリアクションは比例しない結果となりました。

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最後に1投稿あたりにおけるlike数です。石破候補と菅候補が競り合っていましたが、最終的には石破候補は9月9日が最も高い1887、菅候補は9月14日が最も高い1097、岸田候補は9月14日が最も高い461との結果になっています。

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Twitter反響の推移について動画でもみるとわかりやすいです。内訳はComments・Retweets・Likesの総数です。

また補足データとして、ハッシュタグの使用数値は以下です。

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また各候補のリプライ活動に関しては、石破氏が最も多い数値となっていますが、どの候補においてもユーザーとの積極的なコミュニケーションはありませんでした。考えるに自民党カフェスタなど、実際に動画配信を通じてユーザーから寄せられた質問に答えることなど、間接的にコミュニケーションをとる手法を取り入れていたからでしょう。

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●Facebookの場合

(※石破候補はFacebookにおいてコメント機能を設定していないためリアクションとシェアのみの分析です。)

以下は、各候補者のFacebookにおけるPost数です。期間中においては菅候補が最も多い51Postでした。石破候補31Post(途中で2投稿削除されている)、岸田候補21Postです。

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次に期間中におけるリアクション獲得総数です。石破候補と菅候補が競り合っていましたが、菅候補が21419リアクションを獲得し最も多い数値になりました。石破候補13756リアクション、岸田候補7257リアクションです。

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そして1投稿あたりの平均リアクション数としては、石破候補が期間中最も高い数値でした。(石破候補はFacebookにおいてコメント機能を設定していないためリアクションが格段と高くなった可能性が高いです。)菅候補は9月14日が最も高い420、石破候補は9月10日が最も高い485、岸田候補は9月9日が最も高い460です。

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次に期間中におけるコメント獲得総数です。(※石破候補はFacebookにおいてコメント機能を設定していないためカウントなし)菅候補が503コメントを獲得し最も多い数値になりました。岸田候補336コメントです。

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そして1投稿あたりの平均コメント数としては、岸田候補が期間中最も高い数値でした。岸田候補は9月9日が最も高い22、菅田候補は9月14日が最も高い10となっています。(内訳としては、岸田候補はポスト数が少ないため1投稿あたりの平均をとると数が大きくなるため)

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次に期間中におけるshare獲得総数です。最終share総数は、菅候補1485share、石破候補422share、岸田候補269shareの結果となっています。

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そして1投稿あたりの平均share数としては、石破候補は9月9日が最も高い23、菅候補は9月10日が最も高い30、岸田候補は9月9日が最も高い20です。

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Facebookについても反響の推移については動画でもみるとわかりやすいです。内訳はComments・Retweets・Likesの総数です。



●3候補における各データの比較分析のまとめ

次に各候補者のアカウントデータを全体的にまとめていきます。(※菅候補の場合は、事務所のアカウントと選挙用のアカウントと併用した結果を含んでいます。)

●Facebook

以下は3候補者における全postを反響順に並べたものです。(縦は反応数、横は順位です。)

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Facebookにおいて最も反響を得ていたのは菅候補、石破候補、岸田候補の順でした。(※石破候補はFacebookにおいてコメント機能を設定していないためリアクションとシェアのみの分析です。)期間中のシェア件数合計は、菅候補1485件、石破候補422件、岸田候補269件で菅候補が拡散されていました。期間中のリアクション数合計は、菅候補21419件、石破候補13756件、岸田候補7257件。コメント数は、菅候補503件、岸田候補336件です。

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またフェイスブック特有である以下のリアクション別にも計量しました。(※左から、Like,Love,Care,Haha,Wow,Sad,Angry)

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期間中における3候補による合計112ポスト数において一番多くLOVEのリアクションを貰ったのは菅候補です。3候補ともLIKE,LOVE,CAREのリアクションが過半数を占めていたため全体的にポジティブな印象です。そして、リアクションの内訳を調査していくと、Angryのリアクションを行うアカウントは毎回同じアカウントだったのも特徴的です。FacebookはTwitterに比べて匿名性が低いこともあり、ボジティブなリアクションが多く、ネガティブなイメージはつきにくい可能性があります。

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●Twitter

以下は3候補者における全Tweetを反響順に並べたものです。(縦は反応数、横は順位です。)

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Twitterにおいて最も反響を得ていたのは石破候補、菅候補、岸田候補の順でした。期間中の被RT件数合計は、菅候補11029件、石破候補11133件、岸田候補7503件でした。期間中のコメント数合計は、菅候補3108件、石破候補2980件、岸田候補2130件でした。like総数は、石破候補55379件、菅候補51556件、岸田候補31801件です。Twitterにおいては、石破候補が最もユーザーの反響を得ています。

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Twitterにおいては、石破候補が最もユーザーの反響を得た理由としては、日常的にTwitterを活用していることでネット地盤を構築していた可能性が高いです。また、石破候補のポスト内容、動画内容は、他候補者と違いデザイン性、メッセージ性、世界観に長けていることからも、ネット戦略担当が運用しているものと考えられます。

●Twitter vs Facebook vs YouTube におけるユーザー反響比較図

今回の3候補のネット活用において、SNS別のユーザー反響比率です。(菅候補の場合は、事務所のアカウントと選挙用のアカウントと併用した結果を含んでいます。)

TwitterとFacebook上で反響があったのは菅候補、石破候補、岸田候補の順です。Twitter上では、若干菅氏が高かったものの、期間中のポスト数が最も少ないにも関わらず、RTとlikeが最も高かった石破氏の方はネット地盤を築いている可能性が高いです。割合でみると、YouTubeで上で反響があったのは岸田候補となります。(実際期間中のviewは、菅候補2717view、岸田候補19649view、石破候補20068viewです)

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コンテンツの内容に関して見ると、ネットユーザーは、候補者における新たな一面にリアクションが高い=新たな普段のイメージとのギャップを待っていると考えられます。それは、別の人にも知らせたくなる心理的コンテンツに当てはまるのでしょう。この結果を活かすならば、例えば日頃から政治活動(真面目な要素や投稿を毎日1回)は必ず行い、選挙期間になると日頃の政治活動のギャップが伝わる魅力(人柄重視)の投稿していくなどが有効かもしれません。

また菅新総裁誕生直後の反響コメントはサポーティングデータとして以下に3000件のみ抽出しました。


●各社新聞記事掲載数グラフ

最後に期間中の新聞記事件数の比較です。期間中の5社による掲載数は、菅候補合計287件、岸田候補217件、石破候補249件の結果でした。各社の掲載数は以下です。総裁選・菅候補、岸田候補に関連する記事を最も取り上げたのは、毎日、朝日新聞でした。(掲載数は両者異なります。)石破候補を最も取り上げたのは読売新聞社でした。(※地方紙全国紙も全て含みます)

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③調査結果と考察

・Twitterでは菅候補が最も支持が高く、岸田候補が最も少ない。ただネット地盤を築いているかについてだと、石破氏が一定のコミュニティやネット地盤を構築している可能性が高い。また時には、戦略的投稿削除も必要。

・Facebookでは菅候補が最も支持が高く、岸田候補が最も少ない。匿名性が低いFacebookにおいては、ポジティブなリアクションを表明しやすいがネガティブなリアクションは表明しにくい可能性が高い。

・YouTubeでは岸田候補が最も支持が高く、菅候補が少ない。YouTubeでは、投稿数を増やせば増やすほど広くviewを獲得できるが、一つのコンテンツの再生回数は低くなる。

・コンテンツに関して、Twitterではユーザーが最の反応が高かったのは、候補者のギャップを感じる画像コンテンツと、動画である。候補者の政治活動では普段イメージがないものをかけ合わせギャップを狙うと反応につながる。

・Twitterにおいて反響が低くなる共通点としては、メイン投稿にリプライする形のサブ投稿は避ける。

・Facebookにおいて反響が低くなる共通点としては、URLのみだけや候補者の顔がはっきりと写っていないインパクトが薄い写真投稿は避ける。逆を言えばシェアを強く望む情報ほどインパクトが強い写真と投稿する。

・SNS問わず投稿数に関しては、候補者の顔がはっきりと写っている上半身アップの写真が最も効果的だった。コンテンツは、ユーザーが関心がある具体的政策のワードが含まれている投稿がシェアされやすい。

・政治家の発信においては、プロの仕業を感じさせる発信より、手堅い手作り感を演出することで広報にお金をかけている印象を避け、幅広い層から反感をかいにくい効果がある。(ネガティブコメントをネット上に増やさないなどの炎上対策もかねて)


●最後に:総裁選SNS分析から見えてきたもの

今回採取したデータは、あくまでネット世論の一部に分類されることから、大衆世論には全て当てはまらない認識で分析しています。こうしたコンテンツの中身を紐解いていくと、IT企業やスタートアップのような場所だと、鮮やかなグラフィックや動画は相性がいいのかもしれませんが、政治家の発信としては、ユーザーにとっての政治家に対する先入観(真面目さや誠実さなど、個々が抱く政治家像)を持っていると、返って印象を悪くさせてしまうこともあることを学びました。またSNSと投票結果が直接的に相関がないと仮定をしても、マスメディアを意識した政治的パフォーマンスは多々見られました。マスメディアはいまだに大きな力を持っている一方で、ネットの台頭により炎上に加担する存在ともなっています。

今回の総裁選で強く感じたことは、選挙におけるSNS活用の目的が変わりつつあることです。省略された総裁選においても、パフォーマンスの一つとして各陣営からネット上でのPR発信が行われ、自民党の総裁選特設HPには候補者のタイムラインとしてTwitterが紐付けされてトップを飾っていました。また記者会見でも、3候補に対して政治におけるネット活用について質問された際に、”総裁選でも発信していく、また終了後もネットは活用していかなければならない”と述べられました。こうした政治家のSNS活用が自然と目に見える形で位置づけを目にしたときに、”あるから使うのではなく、使わなければならないから使う”という意識づけが政治の中で生まれつつあるのではないかと捉えています。

今までの選挙におけるSNS活用は、ネットは浮動票であり、空中戦の位置づけでしかなく、メリットがあるなら活用するものでした。(今も効果においてはそうでしょう)そして、ネットは選挙に本当に役立つのかと、効果を重視した議論がされてきました。

しかし、コロナ渦で街頭演説ができないことや急速に進むオンライン化に伴い、選挙におけるSNS活用は、効果を評価するものではなく、日常から国民の共感を生み出し、政治家としての説明責任を果たすべき活用ツールだと、発信側である政党や政治家の捉え方、意識が変わりつつあると考えています。

選挙の期間だけSNSを更新することを重要視した時代に比べて、政治家は日常的にオンライン化を進めることにより、”どこで誰が何を決定しているのかを明らかにする”ことに期待されています。
本当の意味で政治のネット活用の波がくるのは、ネット投票が解禁した時でしょう。しかし、今後はネットを活用することによって国民の支持を得られたかどうかではなく、活用しない=国民に説明しないことの方がマイナスのイメージをもたれる可能性があるのではないでしょうか。ネットは国民の気持ちをより表出化させて、それを政策に反映させていくことができるからです。

日本はネット選挙解禁次から国民無視のコミュニケーションだと言われてきました。理由として政治家はコミュニケーションというと発信に重点をおくことが多いことからです。しかし、実際にコミュニケーションとは受信から始まるものです。発信するためには受信から始めなければいけません。受信とは何かというと、選挙の場合は国民の潜在意識やニーズがどこにあるのかを把握することです。ただこれは政治家側の意識が変わらないとどうしようもないのです。

もし政治の本質が、行政という国の権力と国民との間、有権者との間の繋ぎ役と過程するならば、政治とはコミュニケーションの塊です。どんなに立派な政策だとしても、それを国民に理解してもらい指示される過程を経て与党としての信任を得ることが非常に重要なのです。その信任を得る作業としてもコミュニケーションを重視した広報発信戦略は、今後も欠かせないものでしょう。

ネットと選挙や政治とSNSの研究分野においては、長らく議論されてきた空中戦のような選挙理論の研究の続きには、新たな日常の政治家の情報発信の基盤構築が注目されています。
政治におけるSNSの活用は、まだまだ課題も問題もあります。今後も政治とネットの分析については、研究者としてきちんとフィールドをもち理論を構築する必要があると考えます。そのためには、現場と理論の対話を今以上に深めていく必要があると思います。そして、これらの分析が、また一歩、政治とデジタル化が歩み寄る機会となることを期待しています。

最後に、ソーシャルメディアに投稿する際に必要なのは「他者を尊重する」というたった一つの理念からだと筆者は捉えています。オンライン時代での地盤づくりにおいて、次期衆院選で当選された方が日常的にもネットをどのように使っていくのか、注目していきたいところです。

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Twitter:Supporting Tweet data








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