「疑似政権交代」信任の総選挙、そして派閥再編なるか
見出し画像

「疑似政権交代」信任の総選挙、そして派閥再編なるか

新日本パブリック・アフェアーズ



1. 自民党、劣勢観測から一転しての絶対安定多数確保


 各党の独自調査や大手メディアの事前調査、あるいは一部選挙事務所から漏れ聞いた肌感覚によれば、選挙戦中自民党にはかなりの逆風が吹いており、「自民単独過半数割れ」との予測もありました。

 しかし、上記のような劣勢観測を受けて、地方組織など政党としての地力に勝る自民党は危機レベルを一気に高め、最終盤で猛烈な運動を展開したようです。地方基盤などガバナンスの弱い立憲民主党と比較すれば相対的な組織力の差で逃げ切り、最終的には事前の予測を覆す結果に終わったと言えましょう。

これにより自民党は選挙前の276から議席を減らしはしたものの、単独で国会を安定的に運営するためのいわゆる絶対安定多数である261議席を確保しました(与党が安定した国会運営をするために必要な一定の議席数。全ての衆院常任委員会で委員長ポストを独占し、全委員会で過半数の委員を与党が確保する状態を指す。人数は今後追加公認等により変化する可能性あり)。

2. 現役与党幹事長落選の衝撃と信任された「疑似政権交代」

まさかの現職与党幹事長の落選という前代未聞の事態をはじめ、石原伸晃さん、野田毅さん(いずれも党税調のインナーですね)など大物・ベテラン議員の落選も相次ぎ、世代交代を印象づける側面もありましたが、今回の総選挙を通じて、信任されたもの、或いは信任されなかったものは何なのでしょうか。それは、自民党党内における清和政策研究会(細田派)系から宏池会(岸田派)系への「疑似政権交代」が、実績ではなく期待を込めて信任されたということではないでしょうか。

それを象徴するのがまさに甘利幹事長(当時、山崎派→甘利グループ→麻生派)の小選挙区落選でしょう。甘利さんはかつて、2012年の第二次安倍政権ではグローバル資本主義を促進すべく、TPP担当大臣として環太平洋経済連携協定(TPP)締結に向けた交渉にあたり、2017年からはルール形成戦略議員連盟会長として経済安全保障の司令塔となり辣腕を振るってきました。


3. 「党内政権交代」とは -自民党主要派閥の沿革と特徴-

党内政権交代という点を理解するために、自民党の派閥の系譜を振り返ります。

(1)清和政策研究会(現細田派、まもなく安倍派か)

✅岸信介(1896- 1987)元首相が幹事長を務めた旧日本民主党の流れを汲むことから「反・吉田茂」路線で、親米を基調としながらも自主憲法論・憲法改正論を唱え、再軍備に積極的であるなど比較的タカ派色が強く、冷戦期にはその反共主義志向の反映として、韓国や台湾とも関係が深い。
✅2000年に清和会から森喜朗が福田赳夫(1905 – 1995)以来22年ぶりに首相となる。続いて小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、そして再び安倍が2012年12月から2020年9月まで首相の座に座り第一次政権と併せると首相在任歴代最長記録を更新、清和会は不動の総裁派閥として主流派へと伸し上がった。
✅その背景にあるのが、米国との経済・外交・安保の一体化政策である。
✅また、経済政策においても小泉・竹中構造改革路線によって、新自由主義=市場原理=グローバリズムが進展し、それが安倍政権のTPP推進に繋がっていくのである。
✅清和会の名前の由来は、「 政 清 人 和 (せいせいじんわ) 」、「 政(まつりごと)清ければ、人おのずから和す 」という中国の晋の歴史書が出典元。

(2)宏池会(現岸田派)


✅60年安保闘争を受けて「寛容と忍耐・所得倍増」をキャッチフレーズに経済成長最優先政策に踏み切った池田勇人(吉田茂の直系の弟子)によって創立されて以来、大平正芳・鈴木善幸・宮澤喜一・岸田文雄と5人の内閣総理大臣・自民党総裁を輩出、野党時代にも河野洋平、谷垣禎一と2人の自民党総裁が出ており、自他共に認める名門派閥である。「軽武装、経済重視」の基本理念を継承してきたことで「保守本流」のリベラル・ハト派。
✅宏池会の名称は、後漢の学者・馬融の書にある「高崗の榭(うてな)に臥(ふ)し、以って宏池に臨む」という一文が由来。「宏池会」の名前の由来となった 後漢の儒学の碩学(せきがく)の言葉は、「自得するところあれば動じることもない」と説く。

(3)平成研究会(旧経世会、旧竹下派)


✅ 旧自由党吉田茂(1878 – 1967)派を起源に持ち、周山会(佐藤派)・木曜クラブ(田中派)の流れを汲む。派閥の特色としては、田中角栄が首相在任中に日中国交正常化(1972年)を成し遂げたこともあり、台湾(中華民国)とは距離を置く親中派が多かった。また、道路や郵政などの公共事業による集金、集票力のある地域密着型の族議員が圧倒的に多かった。日本の独立やアジア諸国との融和を目指し、米国との相性は悪い。
✅派閥名は民生や経済を意味し中国の古典にある「経世済民」から取られた。

4. 復権か、「名門派閥」宏池会


 岸田政権誕生の意味は、2000年の森喜朗政権誕生から、小泉純一郎、安倍と20年続いてきた清和会主導の親米路線、そして限界を露呈するグローバル資本主義からの転換を為すために、宮澤喜一首相以来30年ぶりに宏池会政権が復活したということになります。実際、岸田政権内では、宏池会、旧経世会への原点回帰・再結集により、党内派閥力学のリバランスを図ろうとする動きが始まっています。新たな幹事長に旧経世会から茂木外務大臣が起用されたのも、まさに30年ぶりに宏池会総裁・経世会幹事長によって清和会を抑え込む枠組みに向かいつつある証でしょう。


 なお、野党ではありますが、前回の8議席から今回11議席まで伸ばした国民民主党も、代表の玉木雄一郎さんが宏池会から出た首相のひとりである大平正芳(玉木と同じ香川県出身)さんの縁戚ということもあり、「自分たちの党こそが古き良き宏池会的な役割を果たしていかなければ」と考えています。今回連立入りこそ実現しませんでしたが、宏池会「予備軍」としての存在として注視が必要だと考えます。


  今後岸田新政権が安倍政治からの脱却を図り宏池会の本格政権となるのか、選挙後も党内において激しい攻防が繰り広げられており、「お公家さん集団」と揶揄されることもある宏池会の「鼎の軽重」が問われています。


#パブリックアフェアーズ #ガバメントリレーションズ #ロビイング #ルールメイキング #渉外 #政策アドボカシー #自民党 #疑似政権交代 #岸田政権 #宏池会 #清和会 #経世会 #派閥 #岸田文雄 
#publicaffairs #governmentrelations #lobbying #japan #pa #gr #publicpolicyadvocacy #LDP

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
新日本パブリック・アフェアーズ
05年創業、パブリックアフェアーズの老舗・新日本パブリック・アフェアーズは、①政策プランニング支援、②サステナブル・パブリックアフェアーズ支援、③政策アドボカシー支援のサービスをご提供します。 https://www.snpa.co.jp/