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夏の振り袖の嫌な思い出、の話。

私は9月下旬生まれなのですが、21歳を迎える直前に「成人記念の写真」を撮りにと写真館へ連れて行かれました。8月か9月だったと思います。
結果的に、それが私の和装嫌いを決定づけてしまったのですが……。

和装は「私」の全てを否定した

まず振り袖を選んだのですが、身長150センチ未満の私には合う物がとても少なかった憶えがあります。
日本人女性の平均身長は私より10センチ以上も高い。そのくらいの体格の人に合わせたサイズには選択肢がとても多そうでした。
運良く大好きな青を見つけ、次はヘアメイク。

ショートヘアだった髪をがばっと上げられ、スプレーで固められ、付け毛を装着されました。相談も無しに。

和装にはロングのアップヘアじゃなきゃいけないって言う法律でもあるのかよ!

かなりの近眼なのに眼鏡も外されていたため、前に鏡が置いてあっても自分の顔がどうなっているかさっぱりわからない。されるがままのフルメイクを施されて着付け。

いやあ、苦しかった。正直なところ、それしか憶えていません。
襦袢を着る。紐でぐるぐる。
和服を着る。おはしょりを調整して紐でぐるぐる。
板のような物を装着される。ぐるぐる。
上から帯できつく締め付けられる。ぐるぐる。
きつくきつく結ばれる。完成。

やはり眼鏡は取り上げられたまま、ぼやけた視界の中で撮影。
季節外れの桜だか梅だかの枝(レプリカ)を持たされ、もうちょっと背筋伸ばして、目線は下に、などのカメラマンの声に従って動くだけ。

やっと和装(と付け毛)から解放され、眼鏡をかけてパソコンで写真を見せて貰った私が感じた事。

「これ、私じゃねえだろ」

ノートパソコンのモニターに映っていたのは、誰だかわからない、故に誰がモデルでも構わないであろう無個性な女の子の姿でした。

和服はもう着ないと誓った

綺麗な台紙に飾られた写真を貰っても、これが私の写真だとは全く思えませんでした。二十歳の「私ではない私」を誰にも見て欲しくなかった。

それ以前から、あまりにも堅苦しくて決まりだらけの和装文化に違和感を持っていた私は、この時に「もう死ぬまで和服は着ない」と決心したのです。
そもそも沖縄の気候に合う服装でもありませんでしたし。

その後私は大学に入ったのですが、卒業式間近にレンタル袴の展示会を行なっていた業者さんに「琉装をしたいのですが……」と相談しました。
「お店の方にありますよ。でも数が少ないので、早めの予約をおすすめします」
夏(7月頃)だった事もあり、無事に店舗で予約出来て卒業式には琉装が出来ました。他の大学の卒業式との日程調整が大変そうでしたが、やはり需要はあったのですね。

自分らしいと思えない和装は、もうしたくない。
皆が着るから私も和服、なんて無理だ。
二十歳記念の振り袖の教訓は、要するにそう言う事になりました。


※ヘッダー画像は「みんなのフォトギャラリー」からお借り致しました。ありがとうございました。

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