向陽ヶ丘の空の下から #1 独り想う
このエッセイは、北海道室蘭市「共生舎」5周年を記念し、教室づくりに活かしているこれまでの経験を書き連ねたものです。
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太陽に向かう丘
網走市向陽ヶ丘。
私が生まれた昭和60年当時は、オホーツク海を見渡せる小高い丘の上に、ちょっとした住宅街があるような感じの地域だった。
誰が名をつけたのか。今思えば、実によくできた街区名だと思う。
朝,街場へ繰り出すには、丘の上の入り口である、当時の中央小学校前(注:現在は向陽ヶ丘を登った最初の信号機のところ)まで、オホーツク海に向かって坂を降りることになる。
オホーツク海は、網走の東側に位置するため、このことは朝日に向かって進むことを意味する。
夕方、家に帰るには、反対に、当時の中央小学校前から、オホーツク海を背にして、丘を登り続けることになる。
すなわち、西日に向かって進むことを意味する。
住んでいた頃は、何とも思わなかったのだが、初夏に霧の多い室蘭に移り住み、まもなくで10年になろうとしている今、晴れた日が今でも恋しく思うのは、きっとこの、「太陽に向かう丘」の影響ではないかと思う。
まあ、室蘭をはじめ、太平洋側特有の霧も、今となっては、すっかりなじみのあるものになったのだが。
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