経験値と価値のクロス分析~料理人視点~

一人前になるまで10年

これが僕が料理の世界に入った時に先輩料理人から言われた言葉で、いまでも印象に深く残っています。

その言葉を愚直に受け止め、修行を続けること10数年経ったある時、ふと思いました。

「一人前ってなに?」

なんとなく先輩料理人の言うことが感覚的に伝わってきていたので、深く考えてなかったことがいまさら気になり、どうせなら明確にしたいと色々答え探しをして行き着いた回答が、

マルコム・グラドウェルの「1万時間の法則」でした。

曰く世界トップレベルになるにはどの分野であれ一万時間コミットしなければならないと。

そこで自身を振り返ると、

(365(日)ー70(休日))×12(労働時間)×10(年数)=35400(時間)

ここに複数のジョブ(お菓子やら冷菜やら焼き場)が存在するので、確かに先輩のいうとおり、10年はかかりそうだと腑に落ちました。

しかし、疑問というのは不思議なもので、一人前になったらどうするの?半人前じゃなにもできないの?と次々に湧いてきます。

実際に世の中の色々な分野を見てみると、

修行(と呼ばれるもの)を完遂した人はいない(か人それぞれ)

とわかってきました。

修行(雇われ料理人)中は経験を積むことだと僕は捉えていて、ある専門分野を反復して習熟することだと思っています。フレンチならフランス料理の技術、和食なら日本料理の技術。これは企業の「課」で行う特定業務に近いですね。

これが経験の値=経験値になるわけです。積めば積むほどレベルアップするんですね。もっとも経験値には終わりが無く、料理の世界以外にも当代随一と呼ばれる方たちが「まだまだ自分はひよっこ」と揶揄するくらいその深さには限界がありません。

じゃあ、どこまで続けたら良いの?となるわけですが、

ここに「価値」という視点を加えると少しずつやるべきことが見えてくるんじゃないでしょうか。

価値には色々あるとは思いますが、料理の世界でいうと自身の出来ることと他者の目的を合致させる、簡単にいうと

自分のお店や事業にお客さんを呼んで楽しんでもらうこと

なのかなと思います。

そこが噛み合えば、お互いハッピーだし、充足感も生まれます。

そうなるためにはやはり、

誰(顧客)のどの価値(欲しいもの)をどうやって満たすのか

を考えないといけないです。

例えば、ワインが好きでフランス料理に精通している人は、その分野に興味のありそうな人のトレンドや価値観を知る必要がありますし、日本料理が出来る人なら日本国内のみならず世界の和食トレンドを知る必要があるかもしれません。

とにかく、自分自身がまず考え、答えを求め続けることが必要なわけです。

また経験値と価値、その両方の習熟度や練度が高ければ高いほど、市場において存在感を発揮できる可能性を秘めているのではないか?

と思います。



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