JetLancer レビュー

ドッグファイトのゲームとは、それだけで面白くなりうる。

飛行機というのは一般的なSTGみたいに入力した方向にそのまま移動させることができず、常に前進する機体を旋回させて動くことになる。目標は進行方向に弾を撃って敵を落とすことだ。動くための操作は多くの作品と同様方向入力のままながら慣れが必要になっており、さらに狙うための操作はそれに統合されている。
つまり、ドッグファイトゲームとはシンプルでありつつクセのある操作を使いこなす、上達するという普遍的な楽しさをその題材に含有しているのだ。

本日発売された「Jet Lancer」もまたドッグファイトゲームで、ど派手さとスピーディーさ、そして横視点のレトロっぽい見た目が特徴である。

https://twitter.com/bbxccx/status/1259939622773125120?s=20

プレイ動画がまず面白そうだし、これを目にしたゲーマーも口をそろえて「おもしろそう」と書き込むので、おそらく本作のプレイ感覚には唯一無二のものがあるのだろう。おれも数時間遊んで楽しんだので、本稿はそのレビューとする。


一般的に言って「最高」のもの

最初に書いておくべきは本作のグラフィックとサウンドで、これがめっちゃイケてる。超カッコいい。
多くの弾や敵機が入り乱れるさまはプレイ動画のとおり派手に表現されているし、推進や爆発のサウンドも手ごたえ抜群だ。
高速なアクションゲームである本作だが、素晴らしいことに視認性もいい。背景は青、自機は赤、敵機は黒、など最低限の配色を保っていて、ほかにも特定状況下でいくつかのアイコンを表示させることなどもある。



特にミサイル接近時の演出は印象的だ。上にDANGERマーク、自機の真下に実用的なドッヂロールボタンが表示される。ミサイルとの距離によって警告サウンドやマークがすこし変化したり、かわしきるとDANGERマークが緑色になってから消えるなど芸が細かい。各種インジケーターの位置や大きさ、カッコよさにも注目。

ほかにもロードアウトやミッション選択画面でのUIも非常に見やすく、かすかなHD振動も心地よかったりと余念がない。


薄められる面白さ

機体を乗りこなし、機銃やビームで次々と敵を撃ち落としていく。スピード感や演出なども相まって本作では明らかに面白くスタイリッシュなドッグファイトが味わえる。それも基本的なことは手軽にできてしまう。

本作において、手軽さは明らかに良さだ。冒頭に書いた「操縦しづらさ」みたいなのは抑えられているほうだと思う。適度なクセを推進、旋回、急加速でさばいていくだけで爽快で、それが最大の魅力ともいえる。はっきり言って、かなりおすすめできるゲームである。
さらに本作は慣れれば慣れるほど上達できるゲームでもあり、やろうと思えば一気に反転してミサイルをぶちこみつつドッヂロール、といった芸当も可能だ。
しかし、そういった熟達をゲーム側が推奨することはないと感じる。カッコいい動きで「友軍機を守れ」はクリアできなかったし、3分で60000点も取れなかった。むしろ本作が求める熟達とは奥深さと呼べるものではない。筆者が習得すべき技能はどちらかといえば「飛び回りながらAボタンを押し、ZRボタンを押し、Bボタンを押し、ZLボタンを押しすぎず、Lボタンを押すことを忘れない」ことだった。

上に貼った画像をよく見てもらうとわかると思うのだが、ゲージ類が結構多い。中でも気を使わないといけないのがアフターバーナーのオーバーヒートゲージ。方向転換にも役立つ急加速でついつい使いすぎてしまうのだが、ここをよく見ていないと一定時間制御不能になってしまう。
そしてスペシャルウェポン、チャージウェポンのクールタイム。Lボタンの短押し、長押しで使い分けることができこいつらはけっこう”回転率”がいい。

さらにドッヂロール。Bボタンを押すとその場でくるくるしていかなるダメージも受けないというもので、かなり受付時間が長い。適当に押してるだけでだいたい避けれる。
(これにより、ほとんどの敵弾には「Bボタンを忘れず押させる」以外の機能がない。言い換えると、機体をうまく操縦する必要は半減しているような気がする。)

筆者はこれらの操作を余すことなく使いきれず、どれか一つを忘れてはタイムロスしていた。本作で鬼門となるスコアアタックのミッション失敗時など、それくらいしか悪いところが思いつかないのだ。すべて使いこなせたときでも、この注意を払うべきものの多さと展開の速さに脳は大忙しだ。

結局のところ、本作における上達というのはちゃんと全部に気を配っていろんなボタンをおせるかな!?という無駄な複雑さに成り下がってしまっていたのだ。
ゲームを進めるほど要求されるスキルは上がる。それにつれてドッヂロールや各種クールタイムのことに注意を向けることが求められ、冒頭に書いたようなドッグファイト・シューティングの原理的ゲーム性は相対的に小さくなっていく。


ドッグファイトの面白さとは

以上が本当に良くないことなのか、と言われたら答えに窮してしまうかもしれない。
例えば何種類も武器をぶっぱなすところだとか、計器を見ながら戦う必要があるところはテン上げポイントだろう。ドッヂロールも時折スローがかかるなどとても見ごたえがあるし、前述したようなアニメ作品のような戦い方を狙うならば不可欠なものだと思う。

そもそも本作はグラフィックや演出に大きく力を入れているはずで、そのままを手軽に体験できるという作品のはず。本作がハイスピードさと派手さを詰め込んだスタイリッシュ・アクションであることには変わりないし、そう見てみるとこれらの内容も必然のように見えてくる。そして、そういった複雑な操縦やカッコよさこそがドッグファイトのゲームに求めるもので、おもしろいところという認識もありだろう。
こういうところちょっとMyFriendPedroっぽさを感じるな。あとKATANA ZEROとか。。


要るのか怪しい要素

メインとなるシューティングゲームパートのほかにもいくつかの要素が挿入されるのだが、それにも雑味を感じてしまった。

まずミッションセレクトは簡易的な3Dフィールド(ださい)を移動して行うのだが、これの存在する理由はなんだろう。何かのオマージュだろうか?


カメラ回しができないが、ミニマップも完備のうえストレスフリーですいすい動ける。それはそれとして、ミッションは一覧を開いて一気に選ぶこともできるのでそれを使うのがいい。

また、ちょっとしたストーリーも各所で展開される。数人が軽口をちょっと叩き合って終わりという程度なのだが、ミッション中にリトライ時でもスキップ実質不可の掛け合いが発生するのはかなり不便だった。ADVっぽい会話イベントもたいした内容はなく、即爽快感を味わえるゲームなだけに早く飛び回りたくてうずうずしてしまう。
いずれの要素もテンポをそぐ割には世界観を拡張できているとは言いづらい。


まとめ

心憎い演出の数々、圧倒的な爽快感、そして何より高速なドッグファイトをてっとり早く体験したい人にはうってつけの一作だと思う。
だが要求されるワーキングメモリの容量が無駄に多いなど、機体捌きの面白さを心の底から味わいづらい。


https://apps.apple.com/jp/app/i-f-o/id1186578744


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