#7 色々言われるかもだけど

2021/10/08 18:06
 今日、ラトビア政府の新しいコロナ抑制政策が発表された。内容は、主にワクチン未接種者はショッピング(スーパー除く)、仕事に学校、娯楽など全てにおいて制限される、というものであった。適用されるのは10月11日(月)からだという。日本では感染者数が急減していて、国民の6割以上がワクチン接種済みだという話を家族から聞いたけれど、ラトビアは今日現在過去最多の感染者数を記録している。過去14日間の人口10万人あたりの感染者数が784.1名、そのうち約20%がワクチン接種済みなのだそうだ。またワクチン接種を拒否する声も大きく、ラトビア政府は躍起になって接種を推進している(というかワクチン未接種者の生活範囲を大々的に制限している)。

 自分は9月27日にやっとのことで日本のワクチン接種証明書をNHSに提出し、発行にはapproximately 30daysかかるとのことなので(他の日本人留学生に聞いたところ、彼女は25日かかったそうだ)、希望的観測でいくと最短で10月22日、あと2週間後くらいには受け取れることになる。そうすればもう、今までのようにレジで毎度毎度緊張しながらイートイン可能かどうかを尋ねる必要もなくなるのだ(これまでが異常だったのだ、これまでが)。ちなみに今回の日記はとあるCAFFEINE(日本でいうドトール)にて執筆していて、これから2週間のNetflixきk…寮籠り期間を頑張るぞという意味も込めて、2週間後には終わっていそうな秋メニュー「Pumpkin Spice Latte」を存分に味わっているところだ。

 そもそも、ラトビア政府がこれまでどういった客に店内飲食を許可していたのかというと、「ワクチン接種済でEUデジタル証明書保持者」「コロナ回復者」「72時間以内に発行されたcovid陰性証明書を提示できる者」のいずれかに当てはまる客であった。え?じゃあお前今までも無理じゃん、まさか72時間ごとにPCRテスト受けてたの?そうではない。実は、9月の上旬に一度PCRテストを受け、陰性証明書をPDFで受け取ったのち、PDFをWordに変換して日付を逐一書き換えていたのである。よくそんなことが思いつくな!ていうかそれ使えるのかよ!使える。筆者はこのニセ陰性証明書で先月国境を越え、リトアニアに旅行までしてきたのだ。むしろ、原本の陰性証明書は自分の年齢が100歳間違えて発行されていた(1902年生まれの119歳)ので、受け取ったままのPDFを提示したら逆に店員さんに「なんで119歳なんだよ」と思われたかもしれない。原本、、、

 陰性証明書を偽造するなんて良くない。私もそう思う。じゃあどうしてワクチン接種済みなのに自分だけ陰性証明書が必要なんだ?問題はそこ。他のヨーロッパ諸国に留学している知人たちは、日本のワクチン接種証明書が有効なのでこうした問題は抱えていない(ヨーロッパの全ての国の事情を把握しているわけではないが)。でもラトビアだと何故か使えないから、一ヶ月待ってEUデジタル証明書を発行しないといけない。発行されるまでの間、友人たちの誘いに全く答えられずに悶々としている。そういった環境を少しでも打破したかったのだ。それでも「EUデジタル証明書がないと駄目です」「何かしらスキャンできるQRコードがないと」と断られて自分だけ入店許可が得られないことも多々あり、そうした時に「じゃあ別のテラス席があるところにしようよ、全然別の場所でいいよ」とテラス席は寒いのにわざわざ自分に合わせてくれたり、この政策や規制に対してEUやラトビア政府に本気で一緒に文句を言ってくれた周りの子達には、申し訳ない思いと感謝の気持ちでいっぱいだ。他国からの留学生の子も、現地のラトビア人&ロシア人の子達もみんな本当にありがとう。嬉しかった(その子達に自分が陰性証明書の日付を書き換えて使っていることを打ち明けると、みんな大爆笑して、そうこなくっちゃ、日本人頭いいねと盛り上がってくれた。とほほ)。

 そもそもこの日付書き替え術を生み出してくれたのは、同じ大学に通う日本人留学生の知り合いの子で、その子はたまたま授業が全て対面で行われるのだが(対面かオンラインかは授業による)、校内に入れる人がEUデジタル証明書保持者または回復者または陰性(72時間以内)に限られていて、そのルールに従っていてはリアルがちで72時間ごとにPCR検査(30ユーロ)を受けて陰性証明書を受け取らなければならなかったからである。そんなことできるか!と陰性証明書を弄っていたところ、普通にWordにしたら書き換え可能であることを発見したのだそう(マジで教えてくれてありがとう)。生き残る力とはこのこと、という感じだ。なぜこの話をnoteに今書いているのかというと、冒頭で書いた、明日から適用される新しいコロナ抑制政策によると、もう陰性証明書は学校にも仕事にもショッピングにも一切使用できなくなるからだ。

 とはいえ、これまでも対応は本当に店によってまちまちで、最初からEUデジタル証明書しか受け付けていないところもあれば、必死に説明すれば(もしくは使えて当たり前かのように振る舞えば)陰性証明書も使えるところ、そして確認すらしないところもあった。店によるというか、店員による、という感じで、同じ店でも入れたり入れなかったりした。従って、明日から陰性証明書が使えなくなるとはいえ、ゆるそうな個人経営の店や若そうなアルバイトの人を狙っていけばワンチャン通じるかもしれない。そのために陰性証明書は更新し続けるし、これまでも日本のワクチン接種証明書で店内飲食できた、というケースも同じ日本人の留学生の子から聞いた。ただ、日本のワクチン接種証明書を差し出した時の勝率は低く、また「これ使えますか?」と弱腰でいくと「QRコードないので」と拒否される可能性が非常に高いので、順番としてはまず陰性証明書を「これで」みたいなノリで出す。あ、EUのじゃないのか、、みたいな反応されたら色々説明してみる。いける場合は、殆どこれでいける。いけない場合は、日本のを差し出したり色々する。ただ粘ると怪しまれるから、強引な客になる前に諦める。これが、この一ヶ月で身に付けて、明日以降もう使えない感覚と技だ。でも、今後、生活のいろんな場面で役に立ちそうな気もする。どう話せば、(言葉のうまく伝わらない)相手に納得してもらい、「いいよ」と言ってもらえるか、みたいな術。この一ヶ月、外出先で何度も体当たりで交渉してきた経験は、今自分が思っている以上に役に立つんじゃないか、と、なんとなく信じている。頑固で嫌なヤツにはなりたくないけどね

 ところで、コロナ以降の生活についてなのだけど、日本にいた頃は、友人との食事も滅多に行かずに学校・バイト・インターン・サークル・勉強のライフサイクルをひたすらこなしていた。つまり、結構真面目に自粛していたのだ(これが凄く心の健康に悪かったのだけど)。公共の場でマスクをつけていない人がいたら「嫌なのはわかるけどみんなのために付けてくれ」と思っていたくらい。でもこっちでは、街中でマスクをしている人なんて滅多に見かけない。というか、ただでさえアジア人というだけで凄く見られるのに、さらにマスクをして歩いていたら本当に悪目立ちするので、マスクはあまりしなくなった。生活もこちらの人の良し悪しの基準に合わせているから、日本じゃやらなかったようなことを沢山していると思う。

 何故そうするかというと、一度彼らの立場に立たないと、彼らにとって何が正しくて何が間違ってるのか、何が守りたいもので何が我慢できることなのか、彼らにとって感染症とは、彼らにとってコロナ禍におけるアジアの立場とは、彼らにとってポストコロナとは何なのか、ということを一生理解できないと思ったからだ。今もまだまだ観察途中だけど、自分の身を使ってそれをなるべく理解し、違いを双方の人々に教えていきたい。正直理解できるのか不安だけれど、ここ一ヶ月と少しで、なんとなくまずわかったことがある。それは、ヨーロッパの大学生たちは、「今を楽しむ、ということを抑制されたくない」、いやもっと簡単に言えば、「我慢とかしてる暇ない」という価値観で生きているということだ。

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