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【ショート台本】親子になれなかった鶏と卵【兄弟の会話劇】

<登場人物>
ユキト(男):長男。少し世間とズレている。ボケ。
ヒトシ(男):次男。兄よりはまともだと思っている。ボケよりのツッコミ

※性別を男で構成されているが、一人称や呼び名を変えることで性別を変えることが出来る。
例:ユキ兄→ユキ姉 ヒトシ→ヒトミ


リビングで食事をしているユキト。
そこにお風呂上がりのヒトシが来る。



ヒトシ:「あ、ユキ兄。」

ユキト:「よぉ、ヒトシが風呂入っている間に先に飯食ってた」

ヒトシ:「今日の晩御飯なに?」

ユキト:「親子になれなかったスクランブルエッグと鶏肉の生姜焼き。きゅうりを添えて」

ヒトシ:「え?親子になれなかった?」

ユキト:「母さん曰く親子丼にしようとしたけど気分が乗らなくてこうなったって」

ヒトシ:「卵と鶏肉が別だから親子になれなかったのか」


鶏肉だけを食べようとするヒトシ。
それを止めるユキト。



ユキト:「おい!ちゃんと鶏肉と卵を一緒に食べてやれよ!生き別れた親子がようやく再会できたんだぞ!」

ヒトシ:「は?」

ユキト:「だからぁー!『おかあさん!おとうさん!やっとあえたね』ってそういう感動の場面だぞ!一緒に食ってやれよ!」

ヒトシ:「いや、この卵どっちかというと東京で1人暮らししてる若者だろ」

ユキト:「え?まさかパリピ的な?」

ヒトシ:「スクランブルエッグなんて横文字使っているぐらいだからな。そうとう粋がってるヤツだって」

ユキト:「て、ことは『親父、おふくろ、ちょっとマジ金ねえからぁ、金送ってくれねえ?』的な?」

ヒトシ:「おまえのパリピのイメージ最低だな」

ユキト:「そうでなきゃ『パパぁ、今度ともだちとでずにー行くからお金なくてぇ、ちょっとお小遣い多めに欲しいな』的な?」

ヒトシ:「ギャルになっても最低だな。てか『パパぁ』って、違う意味に聞こえるから。あと金の話から離れろよ」

ユキト:「じゃあさ、どんな卵だったら子どもになるんだよ」

ヒトシ:「生卵とか?ゆで卵とか?」

ユキト:「生卵はバブちゃんだな」

ヒトシ:「調理されてないからなぁ」

ユキト:「なら、ゆで卵が小学生くらいかー」

ヒトシ:「いや知らんけど」

ユキト:「じゃあ半熟卵は?」

ヒトシ:「東京から地元に帰ってきた若者」

ユキト:「東京にいたときはエッグベネディクトとか名乗ってそうだなぁ」

ヒトシ:「東京で暮らしてますって周りには言ってるけど本当は千葉か埼玉に住んでいそうなヤツだな」

ユキト:「地元の熱海に帰って家業を継いでたら温泉卵だな」

ヒトシ:「実家が熱海なら千葉や埼玉で暮らさずに通えよ」

ユキト:「『東京で一人暮らしなんです』ってカッコつけたいじゃん」

ヒトシ:「東京じゃなくて千葉か埼玉だろうが」

ユキト:「ギリ青梅の可能性!」

ヒトシ:「青梅なら熱海から通ったほうがマシだろ」

ユキト:「『実家の熱海から通ってます』より『東京で一人暮らし』の方が肩書きがさあ」

ヒトシ:「変なとこでプライド高いなぁ。半熟卵の分際で」

ユキト:「そうなるとオムライスとかどうなるんだ?社会人?」

ヒトシ:「既婚者だな。ほら米と一緒になっているし」

ユキト:「あ!そうだ!すげー!」

ヒトシ:「ちなみにチキンライスだから鶏肉もいる」

ユキト:「!!まさか……米の親か!」

ヒトシ:「なんでだよ」

ユキト:「まじかぁ。まさか米の親と一緒に暮らすことになっているなんてきっと卵の親も驚くだろうなぁ」

ヒトシ:「米の親は鳥じゃねえだろ」

ユキト:「じゃあなんだよ」

ヒトシ:「卵の親が鳥だろ」

ユキト:「っっ!!そうか!自分の親か!」

ヒトシ:「気づいてないのかよ」

ユキト:「いやぁ、卵のやつ……両親と一緒に生活してくれる良い嫁さん見つけたんだなぁ」

ヒトシ:「そう考えるとオムライスもある意味親子丼なのか」

ユキト:「ヒトシ!おまえ天才だな!今度、友達にもこの話してみる!」

ヒトシ:「絶対にバカにされるだろうなぁ……」

ユキト:「なんか言ったか?」

ヒトシ:「なんでもねえ」


ユキトのスマホの音が鳴る。(バイブオンでも可)


ヒトシ:「ユキ兄、スマホなってる」

ユキト:「(スマホを見て)おっ!ナイスタイミング!さっそくこの話ししてくる!」

ヒトシ:「(ため息ついて)がんばれ」

ユキト:「ん?お、おぉ?!がんばる!」


スマホを手にし、リビングを後にするユキト。
ご飯を食べ続けるヒトシの後ろで自慢げにオムライスが親子丼であることを語るユキトの声が響く。

<終>

※エブリスタ掲載の同タイトル作品を台本用に大幅に加筆修正。
※有料公演での使用の場合はメールかDMにてご連絡をお願いします。
(無料の場合は任意です)


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